第205話 村は冒険者達に救われた
リュー「大丈夫とは?」
スーザン「バイマークから連絡がありました、冒険者達が救援に向かっているそうです。領主からこの一帯の魔獣駆除の依頼があったそうです。ギリギリのタイミングですが、間に合ったと思います、きっと……、多分?」
一人冒険者ギルド出張所であるスーザンは、当然、連絡用に通信用の魔道具を持っているのである。それを使って緊急事態を知らせていたらしい。
その時、数人の冒険者が到着した。冒険者達が来たのはバイマークの方角ではない、リュー達の後ろから、つまり村のほうからである。と言う事は……
どうやら冒険者達の救援は間に合ったようである。女達とは別ルート、街道を通ると遠回りになるので森の中をショートカットして村に急行したようだ。既に村を襲っていた魔物は殲滅を完了、避難した女達を保護にしに来てくれたという事であった。
リューとしてはそのままバイマークへ行きたかったのだが、村と男たちを心配した女達は、一旦村に戻るという。護衛依頼を引き受けた手前、リューとヴェラも付き合って戻らざるを得ないのであった。
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村についてみると、村の周辺を冒険者達がパトロールして魔物の駆除作業を行っていた。もちろん、村の中にももう魔物はおらず、多少の死傷者は出たようだが、村の男達も大半が生き残っていた。
村に戻ると、ギルドマスターのネリナが目ざとくリューの姿を見つけた。
ネリナ「あら、リューも居たの?」
リュー「ネリナまで来ていたのか」
ネリナ「人手が足りなくて老体に鞭を打つ事になったわ。リューが居るんだったら来る必要なかったわね。というか、あなたが居ながら、なんでこんな
リュー「いや、手を出すなと、頑なに、断られたんでな、ここの村の村長に」
その時、丁度村長がやってきた。
村長「あんさんがバイマークの冒険者のマスターさんでっか? 村を助けてくれたんはありがたいんやけど、金は払えまへんで? あんさんらが勝手に押しかけて勝手に魔物倒したんや、村が頼んだわけやないさかいな」
リュー「と、こんな感じだ」
ネリナ「なるほど、スーザンの報告通りね……」
ネリナ(気を取り直して)「はじめまして、村長さん。私がギルドマスターのネリナです。報酬は領主から頂けますから大丈夫ですよ」
村長「なんや、領主に請求するんか? アカン、この村のために金使ったって事になったら、税金あげられてまうんやろ? そりゃないやろ」
ネリナ「大丈夫ですよ、領主からの指示は、この村ではなくこの周辺地域一帯の魔獣の掃討ですから。心配せずとも、この村の名前は出しませんよ」
本当は、この村を救うために駆けつけてきたのであるが、領主のところにも偏屈な村長の情報は届いており、配慮した結果 “地域” の掃討という形の指示にしてくれたのであったが……。
村長「そか、じゃぁタダやな、タダならええねん。タダはええね、おおきに! ほな」
だがすぐに踵を返して村長は戻ってきてリューに言った。
村長「自分(リューのこと)も、依頼料はなしやで。わいはバイマークまで送り届けるいう約束やったんやから。戻ってきたんなら依頼は失敗やからな」
あまりに酷い言い分にさすがにネリナがひとこと言おうとしたが、一瞬早く別の方向から声が掛かった。
『待ちなさいよ!』
村長を呼び止めたのは村の女達である。
村の女「こうなったのも全部あんたのせいでしょ!」「もうあんたを村長にはしておけないわ」
村長「何言うとんねん、わいを村長に選んだんわお前らやろ! 村民の投票の結果やぞ」
村の女達「騙されたのよ!」「どんな素晴らしい理想を語ったって、実現不可能なら夢物語なら意味ないのよ!」
村長「ならもう一回投票するか? 村の男達はわいの味方やけどな?」
女達「ムカツク!」「村の女性全員敵に回す事になるわよ!」
村の男「いや、悪いが……俺達ももうあんたには投票しないぜ?」
村長と女の達とのやり取りを聞いた通りがかりの村の男が思わず言ったのだった。
通りがった他の男達も口々に言う。
『俺達が馬鹿だった。無駄を削減して金が余れば、柵を強化したり、村をもっと広げたりできると思ったんだ…』 『埋蔵金(無駄使いの金)はあるというあんたの言葉を信じてしまった』 『男衆のこずかいも増えるって言ったのについ乗せられてしまった…』
村の女達「騙されたんだから仕方ないわよ」「間違いは正せばいいわ」
村長「馬鹿な! 選挙で正式に選ばれた村長やで、わいは! そう簡単に降ろされてたまるか! 次の選挙まではわいが村長や!」
村の男「まず、村長解任のための決を取る。悪いが、おそらくあんたは
村長「くそ、なんやねん、わいは村のために一所懸命やっとっただけやぞ……」
……色々とあるようだが、村の事は村の中でよく話し合って決めてくれればいい事で、リューには関心もない。
幸いにもネリナが村に来ているので、リューは依頼完了の報告をして終わりにしたかったのだが、ネリナにはバイマークに一緒に戻って欲しいと頼まれてしまった。
まだ起きてはいないが、何か問題が起きそうな気配で、おそらく対処できるのはリューだけだと言うのである。
その問題とは……
ネリナ「実はね、勇者がバイマークの街に来てるのよ……」
リュー「アイツか……」
思わずヴェラと顔を見合わせてしまうリュー。
ネリナ「あら、知ってるの? それなら話が早いわね、当代の勇者は、ちょっと、いやかなり? 性格に問題がある人物なのよ……」
さもあらんと頷くリューとヴェラであった……
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次回予告
勇者対応クエスト?
乞うご期待!
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