第185話 ダンジョン攻略完了?!

リュー 「…魔石がないようだが?」

 

剣で倒したシューゲイザーの死体を調べたリューが訊く。

 

ヴェラ 「シューゲイザーは異界の生物だって噂もありますね、魔物とは違うのかも知れません」

 

異界? まさか、リューのように別の平行世界から連れてこられた生き物なのか? だとしたら魔物扱いして殺してしまうのは可愛そうだっただろうか?

 

そんな事を考えているうちにこの階層のボス部屋に到達した。ボスモンスターは……

 

宙に浮かぶ巨大な目玉の怪物であった。

 

先程のシューゲイザー達の親玉なのだろうか?

  

鑑定によるとゲイザーという名で、“異世界生物”となっていた。ゲイザーは、巨大な瞳から衝撃波やら熱波や凍波やら色々放ってきた。しかも、見た瞬間には攻撃が来るので避けるのが難しい。もちろんリューの敵ではなかったが、ちょっとだけ時空魔法を使わざるを得なかった程度には手強かった。(そしてやはり体内に魔石はなかった。)

 

第十一階層。

 

出現モンスターは今まで出てきたモンスターがランダムに。


そして、ボスモンスターはドラゴンスケルトン(竜のスケルトン)であった。

 

ドラゴンはいきなり大音量で吠えた。竜の咆哮ドラゴンロアーである。その影響でヴェラとチェリーは硬直してしまったが、リューには効かない。

 

それを見たドラゴンスケルトンは動きを止め、リューをしばし見つめていた。

 

そして、おもむろに数歩後退り、頭を地に付け伏せの姿勢になった。

 

前にもあった現象である。ドラゴンは、竜人であるリューに従う習性があるようなのである。それはスケルトンになっても変わらないようであった。

 

外見上は人間とまったく変わらないはずのリューが、なぜ竜人であると分かるのかリューには不思議なのだが……何かしら野生の感で分かるのだろうか?

 

戦わずに済むなら、そのまま次の階層に進ませてくれないか? と訊いてみるリュー。しかし、やはり、ボスを倒さないと次の階層に進めない仕様らしい。ドラゴンはリューの前に首を出しだしてきたので、仕方なくリューは首を刎ね、亡骸は素材としてありがたく収納させてもらう事にした。ダンジョンモンスターなので、またしばらくしたら復活するだろうと、リューもあまり気にしないことにした。

 

なぜドラゴンスケルトンが戦わずに自分から殺されに来たのか、チェリーとヴェラには不可解なのであったが、ふたりともドラゴンロアーの影響から抜けてもしばらく腰が抜けたような状態で、何も言えなかった。

 

第十二階層。

 

これまでの階層と同様、これまで出てきたモンスターがランダムに出てくる。ごく稀にだがドラゴンスケルトンも。Aランクの冒険者でもこの階層までには全滅してしまう可能性が高そうである。

 

ボスはヘカトンスケルトンであった。腕が異様にたくさんある巨人のスケルトンである。

 

もちろんリューの敵ではなかったが、このレベルになると時空魔法なしで倒すのは無理であった。正直、この段で、もはやSランクの冒険者でも突破できないのではないかとリューは思った。(古い時代に居た伝説的なSランクの実力ならば別だが、この時代のSランクにはそこまでの力はないのである。)

 

第十三階層。

 

ボスはリッチ。

 

リッチは骸骨のような容姿で、魔法使いが死を超越するためにアンデッドとなった存在である。非常に強力な魔法を使う。

 

恐ろしいほどの威圧感を放っているリッチである、その迫力に腰が抜けて動けなくなってしまうヴェラとチェリーであった。

 

だが、実体のあるアンデッドで魔石を持っていたので、リューの敵ではなかった。魔法が得意ではあるが、それは通常の火・水・風・土・雷・闇という魔法であって、時空系の魔法は使えないようであった。時空系の魔法が使えないのであれば、それを使った攻撃を防ぐ事もできないのである。

 

第十四階層。


ボスはリッチロードであった。リッチ達の王である、その強さは尋常ではない。人類などリッチロード一人で滅ぼされていしまう可能性すらある。

 

もちろん、リューの敵ではなかったが。リッチロード級になると、単純な攻撃魔法以外に絡め手のような嫌らしい魔法も色々と持っているが、どれほど強かろうと、魔石を持っていて、時空魔法を防ぐ手立てがないのであれば、抵抗できないのである……

 

リッチロードを瞬殺すると、宝箱と帰還用の魔法陣が現れた。どうやら、この階層がダンジョンの最下層であったようだ。リューが思っていたよりかなり少なかったが、この階層まで到達できた冒険者が過去に居なかったので、何階層あるのか不明だったのである。

 

ヴェラ 「……ど、どうやらダンジョンクリアのようですね」

 

チェリー 「ええっと…

 

なんか魔物も妙に少なくて、ボスもリュー一人でアッサリ倒しちまうから、ついどんどん進んじまったけど……

 

それでダンジョン攻略完了って、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁ

 

2~3階層様子を見るだけじゃなかったんか~い!

 

そんな散歩みたいにダンジョン攻略とか、なんかおかしいだろ?

 

だいたいリッチロードと言ったら、まともに戦ったら一国が滅びるレベルの相手だろうが……それをFランク冒険者のくせにアッサリ倒すとか、どうなってんだ?」

 

ヴェラ 「確かに、おかしいです……でも、私の占いに現れていた救世主となる大魔道士様がリューであるなら、当然の事かも」

 

混乱している二人をよそに、リューは宝箱を開けてみた。出てきたのは一振りの剣。

 

ヴェラ 「…それはもしかして……ハリ様が持っていった幽剣アストラルソードではないですか?!」

 

リュー 「ハリ? エミリアの父さんか。確か世界中を探してノーライフキング対策の武器を見つけてきたとかいう?」

 

ヴェラ 「そうです、その剣は、物質を斬る力は普通ですが、実体のない魔物を斬る事ができると聞いています。その剣ならレイスなどの物理攻撃が効かない魔物も斬る事ができるとか。それを使えばノーライフキングも斬れるのではないかとハリ様は考えたようです」

 

リュー 「だが失敗、そして、剣だけ戻ってきたって言ってなかったか?」

 

ヴェラ 「いえ、帰ってきた剣は呪いを届けるためのものだったようで、お嬢様が受け取った途端、ボロボロの錆びた剣に変わってしまったのです」

 

リュー 「で、本物を、ダンジョンクリアの報酬として宝箱に入れておいたってか? なんだかセコいな、このダンジョンの管理者は」

 

そういうリューは、自分が管理するダンジョンで、ボス攻略の報酬(宝箱)の設定はした事がないのであるが。倒した魔物の素材そのものが高額で売れるのでそれで十分だとリューは考えていたのである。

 

攻略を完了し、リュー達は一旦街に帰る事にした。ダンジョンコアを探して入手するなり破壊するなりという事も考えられたが、管理者が居るダンジョンであれば、その管理者が出てきて戦う事になる可能性がある。つまり、ノーライフキングが出てくる可能性があるのだ。今日のところはリューもそこまでする気はないのであった。さすがに、軽く案内程度で連れてきた二人をノーライフキングとの戦いに巻き込むわけにも行かないだろう。

 

リュー達は帰還用魔法陣でダンジョンから脱出したのであった。

 

 

― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

ついにリューは不死王と対面する

 

乞うご期待!

 

 

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