第70話 マリーついに土下座
キャサリン 「お疲れ様!! お互いに親睦は深められたって事で、メデタシメデタシっと!! じゃぁ戻って飲み物でも頂きましょうか!!」
強引に“円満な幕引き”を演出しようとするキャサリン。
たが、リューは何もなかった事にする気はもちろんない。
リュー 「約束を守ってもらおうか。貴族をやめるとか言ってたよな?」
ビクッと身を竦めたマリー。
あちゃーという顔をしているキャサリン。
リューを睨みつけているベティ。
無表情のアリス。
そしてソフィは何かを決意したような顔をしていた。
マリーは未だに、自分が負けた事実を受け入れられていなかった。何か卑怯な手を使われたのではないのか? あるいは、幻覚でも見せられているのでは……?
だが、自分の手を見れば、既にポーションで治ってはいるが、骨を砕かれた時の痛みの記憶はリアルに蘇ってくる。
あの時、こうすれば良かったのではないか? あの技を使っていれば勝てたかも? 自分に何が足りなかった? 何をミスした? 戦いをフラッシュバックしながら後悔と反省を繰り返すのは敗者の常である。しかし、考えるほどに、現状でリューに勝てる手段が思いつかないのであった。
認めるしかない。
だが、認められない。
認めてしまえば、貴族を辞める事になる。
(貴族を……辞める? 私が……?)
逡巡していたところに、約束を守れというリューの声が聞こえてきたのだった。
キャサリン 「ほ、ほら、それは売り言葉に買い言葉ってやつで……」
だが、キャサリンの言葉を遮るようにソフィがリューの前に出てきて言った。
ソフィ 「部下の不始末は
再び頭を下げるソフィ。
それを見て慌てるマリー。
マリー 「ソフィ様、王族が平民に頭を下げるなどという事はおやめ下さい。私が責任を取ればよい事!」
ソフィ 「……マリーがこのようになってしまったのは、甘やかし過ぎてしまった妾の責任じゃ。」
マリー 「そんな……ソフィ様……!」
ソフィ 「妾は王族でありながら、人を導く才能が足りておらぬ、まことに忸怩たる思いじゃ。この上は、己が身を持って示す事しかできぬ。部下に代わり妾が償う、リューよ、何でも言ってくれ。リューを奴隷にするとマリーは言うておったな、代わりに妾がリューの奴隷になってもよい。」
そう言うと、ソフィはリューの前で跪いたのだった。
マリー 「おやめください!ソフィ様!」
ソフィ 「ベティ、隷属の首輪を用意せよ。」
ベティ 「何をおっしゃるのです、王女殿下が奴隷になど!」
慌てて王女の腕を支えて半ば強引に立ち上がらせるベティ。
ソフィ 「マリー、ベティ。お前達はいずれ国の力になる存在じゃと、そのように成長して欲しいと妾は常に願っておった。そなたたちが成長してくれるなら、妾の身など何でもない事じゃ。国のために働く者を育て、守る事こそが王族が努め。そのためであれば膝などいくらでも折るし、泥でも啜ろうぞ。」
王女の覚悟と大きな期待を聞いたマリーは、この段になってようやく、己の稚拙な言動を恥じ、反省し始めたのだった。
マリーとしても、貴族の、王女の威信を守るために、自分なりに必死で行動していたつもりであった。
だが、自身の言動が王家と貴族の誇りを傷つける事になるとは考えた事がなかったのだ。
だが、こんな自分に王女は過分な期待をしてくれていたと言う。できれば王女の期待に答えたい……
だが、今更遅い。
言ってしまった言葉は口には戻らない。
もちろん、王女に責任を取らせるなどできない。
マリーはリューの前に歩み出ると、膝を着き、地に手をついて頭を下げた。
マリー 「非礼な言動、済まなかった。ソフィ様には一切責任はない、すべて
ベティも慌てて出てきて、マリーの横に並んで土下座した。
ベティ 「し、失礼な事を色々言ってしまって、申し訳ありませんでした。私の言動はすべて私が愚かであるだけ、ソフィ様には責はありませんので、どうか……」
キャサリン 「ま、まぁまぁ、そこまで大げさにしなくても! 売り言葉に買い言葉、そう、ほら、マリーさんも色々言ったけど、言葉だけの事、誰も傷ついた人が居たわけでもないのだから、ね、リューもいいでしょ?」
リュー 「いい加減にしてくれ……」
目の前で繰り広げられている王女とメイドのやりとりは、正直、リューには大げさな“茶番”にも見えてしまうのであった。
もちろん、王女は大真面目、真摯に謝罪しているのは分かるのだが。
リューとて王女に責任をとらせる気などないが、とはいえ、自業自得のマリーを簡単に許す気にもなれない。
リューはマリーに向かって言った。
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次回予告
名誉の問いかけ
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