足を斬られてダンジョンに置き去りにされた少年、強くなって生還したので復讐します（習作２）

第59話 子供達を狙うのはやめて

ゴーン　「自分の失態を誤魔化したいだけだろう？」

ロンディはアジトに戻ると、五黒星の幹部を集めてリュージーンに手を出さないように警告したのだが、案の定、誰も聞く耳など持たない。

ビンチ　「部下を全滅させられたのは、相手が強かったのではなく、お前の部下が弱かったからだろが？」

五黒星は、五人の幹部、ガエタ・マルゴ・ビンチ・ゴーン・ロンディによって形成されているが、ロンディ以外は、基本、脳筋の武闘派ばかりである。

ロンディ　「そうではアリマセンヨ。客観的に見て、リュージーンは規格外。できれば仲間に引き入れたいと思いマシタガ……」

マルゴ　「ふん、臆病者が。すっかり牙を抜かれちまったな！」

血の気の多いマルゴが煽る。

ビンチ　「ロンディにもともと牙などないだろう？　いつも姑息な手段を弄してまともに戦おうとしないんだからな。」

ビンチは意地悪ないやらしい性格をしている。

マルゴ　「そんなガキは俺が行って力づくで従えてやる。」

ため息をつくロンディ。

ロンディ　「やれやれ……、やっぱり言っても無駄デスネ。脳筋はコレダカラ・・・」

マルゴ　「あんだテメェ？　やんのか？」

ガエタ　「やめんか！」

イキるマルゴをガエタが一喝する。一応、この中ではガエタがリーダー格である。

ガエタ　「そのリュージーンという男が転移魔法を使うと言うのが本当なら、確かに仲間に引き入れたいな。」

ロンディ　「反対デスネ。手出しをしないで置くのが無難。下手に手を出せばこちらが全滅させられる可能性があります。」

ガエタ　「四夜蝶のように、か」

ビンチ　「その噂も嘘くさいがな。あの四夜蝶が、ガキ一人に全滅させられたとか考えられん。転移魔法ってのも信じられん、伝説でしか聞いたことがない魔法だぞ。何かのトリックなんじゃないのか？」

ロンディ　「シンと五剣は殺されマシタガ？　戻ってきた部下の証言でも、奴はとんでもない強さだったと。」

ビンチ　「本当に殺されたのか？　死体は確認したか？」

ロンディ　「いえ、それは未確認デスガ……」

マルゴ　「なら生きてる可能性もあんじゃねぇのか？　剣の腕が立つ五剣が、そう簡単にやられるとも思えん。やられたにせよ、何か卑怯な手でも使われたとか？」

ガエタ　「ロンディは戦いを直接は見てはいないのだろう？」

ロンディ　「それは……そうですが。ワタシが集めた情報でも、四夜蝶壊滅がリュージーンの仕業であるのは間違いないところデス。」

ゴーン　「お前はいつも情報情報と小賢しい事を言うが、相手の実力など、自分で直接戦ってみなければ分からんだろうが。」

ゴーンは難しいことはあまり考えず、すぐに武力で事を解決したがるタイプである。

マルゴ　「奇手を使ったにせよ、四夜蝶が壊滅したのは事実だ。五剣が帰ってきていない事もな。油断は禁物だ。」

ロンディ　「ワタシは直接話しましたが、リュージーンは、正義感で犯罪組織を潰したがっているというタイプではないヨウデス。手を出さなければ向こうも興味ないと言ッテル。」

ビンチ　「だがな、一度手を出しておきながら、潰されるのを恐れてその手を引っ込めたとなると、五黒星が舐められる事になる。」

ゴーン　「そんなガキは俺が潰してやろう。」

ガエタ　「いや、転移魔法が本当なら欲しい人材だ。潰すのではなく、仲間に引き入れる方法はないか？」

ビンチ　「良い手がひとつあるぞ？　俺に任せろ。」

ロンディ　「その手とはなんです？」

ビンチ　「それは秘密だ。お前とは一味違うやり方を見せてやろう。」

ロンディ　「大丈夫ですか？　リュージーンを怒らせたら大変な事になりますよ？」

ビンチ　「まぁ見てるがいい。」

　　＊　＊　＊　＊

翌日の早朝、シスター・アンの教会にマルゴの部下による襲撃があり、教会（孤児院）の子供達は全員、どこかに拉致されてしまったのであった。

そして、シスターの使いという者がリューの元にやってきて、シスター・アンが至急、教会に来て欲しいと言っていると伝えた。

何かあったと察知したリューが即座に教会に転移してみると、そこには、シスター・アンとビンチ達の姿があった。

だが、子供達の姿はない。

リューは神眼で即座に教会内を確認したが、子供達の姿はどこにもなかった。

シスター「リューちゃん！」

ビンチ　「ほう、転移魔法は本物か。これはこれは……」

リュー　「……子供達を攫ったのか。」

ビンチ　「話が早いな。ガキ共は預かった、無事に返してほしければ仲間になれ、お前の転移魔法は役に立ちそうだ。

どうだ、これが暗黒街のやり方ってもんだ。どんな強者だろうと、守りたい者がある……」

だが、ビンチが勝ち誇って喋っている間にも、リューの目は金色に強く輝いていた。

神眼の能力をフル稼働させ、ビンチの心の中を読み、子供達の居場所を特定していたのだ。

そして、次の瞬間には、子供達を全員、教会内に転移で取り戻していた。

ビンチ　「……それを拐って脅迫すれば、誰でも言う事を聞くしかないのさ…………あれ？！」

リュー　「子供達は返してもらった。出ていってもらおうか。」

ビンチ　「ば、転移とは、そんな事までできるのか？！」

次の瞬間には、ビンチとその部下達は周囲の景色がガラリと変わっている事に気づく。全員まとめてスラム奥の五黒星のアジト近くに転移させられていたのだ。リューも一緒である。

リュー　「言っておくが、教会には結界を張った。部下に襲わせようとしてももう無理だぞ。」

その頃教会では、外を見張っていたビンチの部下が異変に気付いて中に入ろうとし、見えない壁に鼻をぶつけて痛い思いをしていた。

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次回予告

ビンチは後悔することに？！

乞うご期待！