今回も出番がありました
今回も出番がありました
「……来たか」
祭りで騒がしいダンジョンから少し離れた場所に謎の集団がいた。
彼らは攻略される数日前からここで監視を続けていたのだった。
もうすぐ攻略完了とのこと情報を得て、攻略後のダンジョンに残されたモンスターに財宝を奪えるか伺っていたのだ。
もちろん同じことを考えている連中は沢山いる。そういった連中はこっそりとダンジョンに入ってシコシコと回って小銭を稼ぐだろう。
「そんな格好悪いことサリ様はしないっ!」
「出来ないの間違いでは? 細かい作業とか苦手ですし」
「……はっはっは!」
「この人すぐ笑って誤魔化すんだよな」
「こ、細かいことはいいのだ! それにしても、こんなのコソ泥みたいであんまり気が乗らないんだよ」
話をしているのは我らがサリ様。
「仕方がないでしょ。我々は秘密結社なんですから堂々と正面から行って正体がばれたどうするんですか。バカなんですか?」
そのサリ様相手にざっくりと言ってのけるのは、新たにお目付役として同行している人物だった。
「ば、バカとはなんだ! バカって言う方がバカなんだぞ! それにサリ様は上司なんだぞ!」
「あー、はいはい、申し訳ありません」
耳は長くエルフと思われるその人物はサリ様をとても上司とは思えないぞんざいな扱いをしていた。
「まだしばらくここで監視しますから」
「ええ!? だって今攻略されたじゃないか!」
「馬鹿ですか? あれだけの人だかりがあるところに近づけるわけ無いでしょ、それにまだ迷宮内にも人が残っているじゃありませんか。それも分からないほどの馬鹿なんですか?」
「馬鹿って二回も言ったー!」
「おっと、これは失礼しました。つい本音が……、聡明なるサリ様ならば分かりますよね」
「うう、分かったけど、また野宿なのか……たまにはサリ様もゆっくりとベッドで寝たいぞ」
「……はぁ、分かりました。では、輸送艇にあるお菓子を一袋食べてもいいですから、大人しくしていてください」
「わー、アッキー優しー!」
なんてチョロい上司だと呆れるアッキーと呼ばれる人物。
這々の体でなんとか魔物の森から戻ってきたサリは休む間もなく新たな任務として攻略後のダンジョンを調査する任を授かっていた。
もしダンジョンの形が残っていれば、そのまま奪って拠点とする。もしくは財宝やマジックアイテムの収集。
それらよりも最も大事なのはダンジョンを運用していた魔導機を無傷で手に入れること。
ダンジョンの種類によっては攻略後に自壊することもあり注意が必要であるため比較的繊細な任務になることから今回補佐役というかお目付役を付けられていた。
今回は作戦規模も大きいため戦闘員も数名帯同していて、そのための人員を運べる輸送艇で来ていた。
この平原では隠れる場所はないが透明化するための装置があるので見つかる心配は無い。
それがどんな技術かはサリにはさっぱり分からかったが、透明化していると足音や話し声も聞こえない。
だが透明になっている者同士はお互いに見えて声も聞こえる優れものだった。
「それにしても、こんな大きな船があるなら最初から使えばよかったのに」
「虎の子なんですから壊さないでくださいよ」
直ぐ側に着地……いや薄らと浮かんでいる輸送艇は一見すると飛行船のような形をしていた。だが飛行船でいうところのバルーンの部分が本体でありそこに人や物が乗るのである。
「ふむ、どうやら自爆も自壊もしていないみたいですね」
アッキーは二名の戦闘員に手で偵察に行くように指示をする。
すると全身黒タイツに白い仮面を被った彼らは黙って監視に向かっていった。
「あむあむ……何時頃行くの?」
「そうですね。とにかく一度夜になって落ち着くまで待ちましょう」
「えー、そんなに待つの?」
「聡明なサリ様ならそれくらい分かりますよね」
「お、おう当然だ! よ、よし、暗くなるまで待つんだ!」
やはりチョロい上司であった。
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