幕間

シェルターの構造

「それではお休みなさい」


「お休み」


「お休みー」


「うん、お休みなさい」


 魔光灯を減光させて全員簡易ベッドに身体を横たえるのであった。


 それにしてもこのシェルターは本当にすごい。

 魔法が発達した前時代に造られた簡易型の避難装置ということらしい。


 簡易だというが、装備はかなり整っていると言える。

 シェルターは500円玉よりも少し大きいコインのような金属に15MPほど消費して固定された地面に設置する。

 するとそのコインが大きくなり潜水艦のようなハッチのような形に変化させ出入りが可能となる。


 内部は異空間とかではなく、この星の何処かに存在しているようだがかなり強力な防壁が施されているらしく俺のサーチやディテクトなどでも場所を特定することは出来ない。

 まあ今は無理に場所を知る必要はないからね。おいおい暇なときにでもちゃんと調べてみよう。


 取っ手が付いているのでそれでハッチを開くと、これまた潜水艦のように筒状の縦のトンネルとなっており、そこにタラップがかけられていてそれで内部に入るのである。


 降りるとそこは大きさにしておおよそ10畳ほど部屋であり、天井までの一番高いところで2m以上あるが全体的にアーチ状になっている。

 それとは別に台所と思われる場所とトイレ、シャワールームがそれぞれ備えられている。


 施設内は地下にあるせいか室温は一定で夏は涼しく冬は温かくて過ごしやすい。

 そして壁や床、天井も同じ陶器のような質感だが頑丈で叩いても割れるような感じではない。


 台所と思われる場所はそれらしい装備はあるが壊れているのかどうやっても反応がなく、

狭い場所だから下手に火を使うのは危ないので今は倉庫として使っている。

 置いてあるのは保存のきく干し肉などの食材と、アティウラの武器防具で良くこれだけのものをずっと一人で持ち歩いていたなと感心するけどね。


 トイレは石造りの椅子のような形をしていて座り心地は少し硬いが、水洗であるため臭いは最小限である。何処に流れていくかって? 多分……地下の何処かだと思われるが今のところは不明。

 地下の狭い部屋なのでそういうところは配慮して造ったのであろう。前時代の人達ありがとう。


 俺的には大自然でするよりも……いや普通の街のトイレよりもここでするのがいいと思っている。

 まあ一々トイレで取り出すのもさすがにどうかと思うので立ちションくらいは普通にするけどね。


 シャワーは、いわゆる蓮口のようなものじゃないので正確にはシャワーと呼んでいいか不明だが便宜上そう呼んでいる。

 というのも、個室の壁の高いところから石樋が突き出ていて、まるで打たせ湯のようなものだからである。


 使っている水は地下水らしく下手な川の水よりも綺麗でありそれを魔法的な装置で温めているのでとても快適。

 女性陣はこのシャワーだと髪の毛が洗いやすいとすこぶる好評である。


 日本人としては出来れば湯船にどっぷり浸かりたいと思うが、冒険中は贅沢は言えない。

 いやむしろシャワーを浴びられるだけでも十分贅沢といえるだろう。


 そして部屋の方だが、4人が横になって寝るには十分な広さがあり折りたたみ式の木製ベッドを三つ展開して置いてある。

 普通のベッドに比べると狭いが野宿で地面に寝ることを考えたら十分である。


 街に着いたらもう一つ買おうとは思っているが売っているものなのだろうか。


 このおかげで冒険の真っ最中に暑さ寒さも感じず、外敵への警戒も必要とせずゆっくり眠ることが出来るのは本当にありがたい話である。


 これで冷蔵冷凍庫があれば完璧なんだけどな。

 そうすれば肉や野菜も長期保存が出来るから長い冒険でも食糧に余裕が持たせられるんだけどね。


 いや、これ以上はさすがに贅沢ってものか。


「……ふわぁ、そろそろ寝よう」

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