いっちゃったみたいです

いっちゃったみたいです

 あえて何をとは言いません。


「あ、ああ……」


 身体を小刻みに痙攣させながらベッドに横たわる族長、指先を噛みながら大きな声を必死でこらえていた。


「えーっと、ごめんな。少し強引だったかも」


「い、いえ……恥ずかしかったですが、これはこれで……嬉しい限りです」


 族長は徐々に浮かび上がるアザのようなキスマークをウットリとした顔で愛おしそうに指で撫でている。


「これで妾は身も心も主様のものとなりました」


 桃色の紋様を浮かばせながら、紅潮した顔で笑顔を向けた。


「そ、そうなんだ」


「はい。あの……主様、出来ましたら妾のことは名前で呼んではいただけないでしょうか」


「名前?」


 そういえば族長の名前って知らないな。


「はいっ。そ、その……無理にとはもうしませんが……」


「まあそうだよな。俺は主になっちゃったから族長と呼ぶのはちょっとおかしいか。いいよ。それで名前って……」


「妾や、アーデルハイドラと申します」


 これまた憶えるのが難しい名前だな。


「うーん、少し長いな、アーデルでもいい?」


「もちろんです。主様の好きに呼んでくださって結構です」


「ではアーデル。明日から勤務に励むように」


「はいっ! これから妾にお任せください」

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