翼竜『ワイバーン』<Ⅱ>
「“ワードサーチ”ワイバーンの狩り方法」
【基本的に鳥などの飛翔物は獲物とみなさない。ワイバーンにとって鳥などは獲物として捕まえるのが難しいわりに小さすぎる為、よほどの状況ではない限り襲うことはない】
【基本的に地上の比較的大型の牛や馬などのサイズを好む。上空から急降下してその質量で踏みつけ、弱らせたところを持ち上げて飛び去る】
【獲物が抵抗する場合は持ち上げて落とすを弱るまで繰り返す】
【腹具合によっては人間大からそれ以下の存在も獲物として見なす。その場合は地上に降りて脚や尻尾などで痛めつけて動けなくなってから咥えるか脚で掴んで飛び去る】
猛禽類に似ているが鷹や鷲みたいに上空から掻っさらう様な狩り方は難しいみたいだな。これだけの大きさだからそこまで器用に飛べないんだろう。
とにかく状況を変える何かいい方法はないものか……。
竜語は通じないって書いてあったけど俺の能力はちゃんとした言語のないスレイプニルにも通じたくらいだからもしかしたらいけるんじゃないだろうか。
そうすれば俺一人で注意を引くことが出来そうだな。
「おい、そこの竜モドキ! そんなに腹が減っているのかよ?」
俺はとりあえず大声でワイバーンに向かって叫んでみた。
「わ!?」
デルやカトリナがいきなりの大声に驚いた。
それまで遊んでいたワイバーンがこちらに向いた。声なのか音なのかどっちに反応したんだ。
「いきなりなにを……」
俺はデルを手で制止する。
「バーカバーカ! 所詮お前にはその程度しか狩れないんだよ!」
『ぎゃっ!!』
ワイバーンの言葉は通訳出来なかったがが怒っている感情だけは伝わったのでこっちのは一応通じているらしい。
よしっ、それなら……。
「セレーネ、神の奇跡で筋力……いや体力をアップさせるようなのってある?」
「はい。筋力と体力を倍にすることが出来ますけど……ですがそれでもワイバーンには到底勝てないと思いますが」
「もちろん戦うつもりはないよ、それとバリアは後どれくらい使える?」
「能力アップを使ってもバリアなら30枚くらいは作れます」
「よし、それなら渡す必要はないな」
「回復系は全て使い切っていますが、防御系は制限はありませんので幾らでも使えます」
「ちょっと、一体なにをするつもりなの!?」
今のやりとりにデルは口を挟んできた。
「セレーネのバリアをあの人達の周りに張ってもらって、能力アップで走って行って運んでくるって作戦を考えたんだが」
「はぁ? バカじゃないの! いくらなんでも無茶よ!」
「無茶だとしても、このまま黙って見ているだけでいいのかよ」
「そ、それは……」
「この中で最も筋力がありそうなのは俺だし。1人ずつでも何とか運んで来るさ」
「もう勇者様、また無茶なことをするんですね……」
最早止める気もないとばかりに、ため息だけを漏らすセレーネだった。
「悪い、どうしても黙って見ているだけは無理みたいだ」
「はい、分かっております。借り受けた力で存分にお守りしますね」
「ありがとう」
「それに今死なれては困ってしまいますし」
「あー、そこは現実的なのね」
笑顔のセレーネ。
もしかしたら今のは彼女なりの冗談なのかもしれない。かもしれない。だといいなぁ……。
「待って! その役、私にやらせて!」
カトリナが俺の袖を掴んで懇願してきた。
「いや、幾ら何でも危険だろ」
「危険なのは勇者さんだって同じだもん! 私達はいつもこうなると見ていることしか出来なかったから……もし出来るなら自分たちの手で助けたいんだもん!」
「僕もそうだよ」
デルもカトリナの肩に手を置いて同意する。
「そうか……、それなら君達の気持ちは汲むとしよう。だったら2人の怪我人を4人で運ぶ計算で考えよう」
「分かった。他に誰か居る?」
すると俺達をドーム入口で監視していた男の子の二人が参加を志願した。
彼らは体格の差が小さいため男女の筋力差はあまりなく、それどころか一族でデルが随一の筋力を持っているらしい。
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