ここは魔物の森
ここは魔物の森
その後、兵士達に英雄扱いをされながら陣地に迎え入れられた。
それどころか檻に入れられていたネクロマンサーにまで感謝されてしまった。魔王城に連れて行かれたら余程怖い思いをするんだろうか。
一通り感謝された後、俺はその軍のお偉いさんに挨拶をされる。
ドガ砦の長とは旧知の仲で、彼に話を聞いていたらしい。
それにしても髭がダンディで当然のごとく俺よりも身長があって格好いいな。
革と金属の使い古した鎧がなんとも渋い。
その彼が今の状況を細かく説明してくれた。
「それではこの後はどうするのです? とりあえず追い払いましたが倒したわけではありませんし」
「絶対に復讐してやる!」
ヘルナイトに二度も斬られて生きていた剣の勇者は興奮気味に吠えていた。
彼は俺が地上に落ちる前にも一度不意打ちをして失敗したが、ヘルナイトが話をしている間にこっそりポーションで身体を回復させて機会をうかがっていて、再度の不意打ちも失敗したわけだ。
「くそっ! あんな長い武器を使いやがって!」
いや武器そのものはお前の方がよほどチートだろ。
なんかこいつあんまり勇者っぽくないんだけど。
ちなみにもう1人の勇者、魔術師の方はまだ戻ってきていない。
セレーネに聞いたがこの2人の勇者は何かと経験値ばかり気にしているらしく、味方の損害など全く考えず、とにかく現れた目の前のモンスターを倒すことにしか興味を示さないのだとか。
それでもかなりの強さを持ち、2人だけで現れた敵をほぼ倒してくれたのであまり問題にしなかったらしい。
魔術師を探しに行くにも真っ暗な夜の森なので捜索の二次被害が危ないので放置しておくことにした。まあヘルナイトでも出てこない限り1人で大丈夫だろう。
一応サーチで探したけど元気に動いているみたいなので問題ないと思われる。
「勇者サトー、お気持ちは分かりますが今は傷を癒す方が先です」
セレーネの回復魔法で見た目は治っているが、二度も致命傷のような怪我を負っているので完治にはさすがに時間がかかる。
サトーさんと呼ばれた勇者は、ちっ、と吐き捨てるようにテントの方に脚を少し引きずるように行ってしまった。
「申し訳ありません、あの方は腕はしっかりしているのですが……」
「ああ、大丈夫、大体分かるから」
この隊長さんも、意外と出来る人物で話が通じるっぽくて助かる。
「一応討伐を目的とした編成をしている以上、この程度で戻るわけにもいかないのです」
「なるほどね……」
「なので出来れば勇者殿にも是非参加していただきたいのです。もちろん報酬はそれなりに用意させていただきます」
俺としては出来ればこのまま一度国に戻る方が助かるんだが。
今回はたまたま上手くいったけどヘルナイトみたいのとまた戦うなんて冗談だろと言いたい。
だからといって、ここで降りて魔物の森を1人で戻るなんて選択肢もなぁ……。
結局どっちもどっちか。ならば少しでも生存率の高い方を選ぶだけだよね。
「分かりました。乗りかかった船ですし、付き合いましょう」
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