あれとの再度遭遇
あれとの再度遭遇<Ⅰ>
セレーネと共に、村の教会に向かう。
教会は村の中心になっていて数軒の家が周りに建っていた。
「そういえば教会に来たのって初めてだな」
「村の皆さんは畑の方に行っていますので、この辺りは静かですよ」
「村の人も大変だよな。夜明けと共に戻って畑作業をして日が落ちたら砦に行くんだからな」
「この前の遅れてしまったご老人は、その日の間に終わらせなければならない作業が遅れてしまったからだそうです」
「農家の人にとって作物が出来なかったら死活問題だもんな……なんとか早くこの件を片付けたいんだけど、力不足で申し訳ないな」
「そんなことありませんよ。もし勇者様が居なかったら、この村はどうなっていたか……」
「それでもなんとか被害を出さないようにしてみたいな」
「そうですね」
改めて教会を見ると木造で確かに小さいが周りの家に比べるとえらく立派な造りだった。
中に入ると、拝堂なども綺麗にされていた。
教会内にある瓶からたらいに水を入れてセレーネが渡してくれる。
「本当だ。結構綺麗な水だ」
「教会では聖水として綺麗な水が必要ですので」
「そんなのを使ってもいいの?」
「はい。相手は不浄のアンデッドでしたし、清める意味でも使った方が良いかと思います」
「じゃあ遠慮なく使わせてもらうよ」
「これもお使いください」
「何から何まで、ありがとうございます」
「いえいえ」
「あ、あのセレーネさん」
「はいっ、なんでしょう」
「いや、あの……」
何故かセレーネは黙ってじーっと俺を見ていた。
「あ、これは失礼しました」
やっと気が付いたか。
だがセレーネは出て行くどころかこちらに近づいてきた。
「はーい、では脱ぎ脱ぎしちゃいましょうね」
「え、ちょ!?」
何故かセレーネは俺の衣服に手をかけて脱がそうとしてきた。
そっちかよ!?
「ふ、服脱ぐくらい、自分で出来るから!」
「あ、あら……何か勘違いしてしまいましたか。あ、ですが知らぬ間に見えないところに傷があるかもしれませんし、ちょうど良いので見てみましょう」
「え、ちょ!? うお!」
セレーネはそんなことを言いながら結構強引に衣服を脱がすのだった。
「うわぁ……勇者様の肌って凄く綺麗ですね」
ほぼ半裸にされると、セレーネは背中や肩などマジマジと見ていた。
「髪の毛もサラサラですけど、肌の方も凄く綺麗なんですね」
「ちょ、恥ずかしいからそんなに見るなよ」
ん? あれ……ちょっと待て、その頃の俺は全身吹き出物だらけで結構肌も汚くて水泳の日とか凄く嫌だった記憶があるのだが。
「えっと、本当に背中とか綺麗なの?」
「はい、少し嫉妬してしまいそうなほど綺麗ですよ。」
確か髪の毛もぎしぎしだったし、痒みで掻きすぎて肌も浅黒くって染みみたいになっていたんだけど。
腕の周りを見てみるが、全くそんな感じはなかった。
なにかがおかしくない……。
「何か気になることがあるのですか?」
「あ、いや、そういういわけじゃないんだけど」
うーん、どういうことなんだろう。
ふと、セレーネの方を見るとニコニコしながらこちらを眺めていた。
「あ、あのさ、身体を洗うので出来れば見ないでいただけると……」
「あ、そ、そうですよね」
セレーネは終わったら一声掛けてくださいと奥に行ったのを見て早速身体を拭く。
「冷て……」
お湯なんて贅沢は出来ないのは分かっているが水で身体を拭くのはさすがにきつい。
だが、文句も言っていられない。
だが少し慣れると、汚れや汗などが落ちていくと少しさっぱりした気持ちになる。
一通り身体を拭き終わるとたらいの水は結構汚れていた。
「うわぁ……って、そりゃそうか」
そういえば俺も数日風呂に入っていないんだった。
最初の2,3日は気になっていたけどそれ以降はあまり気にならなくなっていた。
気付かないだけで俺も結構臭かったりするんだろうか。
ふと礼拝堂の正面を見る。
小さいが女神と思われる像が置いてあった。
祭壇の近くに寄って見てみる。
女神様はなかなか精巧に作られていた。
「でも俺が見た女神とは大分違う感じだな」
この世界の人達にとっては神様なんだろうけど、俺にとっては作られたAIのイメージが強くて神様として受け入れるのは難しい。
出来ればネタバレせずにこの星に来ていれば、もう少し素直に神だと受け入れたんだろうな。
「勇者様、終わりましたか」
セレーネが奥から戻ってきた。
「あら、女神様が気になりますか?」
「え、ああ、俺が会った女神とは顔が違うなと思って」
「直接会ったことがあるのですか!?」
「まあ、こっちに連れてこられたとき、最初に会ったのが女神だったんだけど」
「そうなのですか!? 転生なさった勇者様達が神々と話が出来るというのは本当のことだったのですね」
「神と話なんて出来るのか?」
「教会で祈れば声だけでも通じると聞いたことがあります」
「まじで?」
「はい。困ったときにちょっとしたアドバイスがもらえるって……」
まあ、身一つで飛ばされてきた世界だからかな。何かしら困ったときに相談出来るって制度なんだろう。
そうなると俺も出来るのか?
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