アンデッドはまだ来るのよ
アンデッドはまだ来るのよ
そして夜になると、やはりアンデッドは今日もやってきたのだった。
対応は昨晩と全く同じ。俺とセレーネが門の外に出てゾンビ達に話しかける。
兵士達には俺や彼女が攻撃を受けない限り何もしないでと頼んだ。
だが女騎士はそれが不満らしく、勇者任せにしていられないと鼻息を荒くしていた。
「いいか、アンタ等は最後の希望なんだ」
「私達が希望だと?」
俺の言葉に目を輝かせる女騎士。
「そうだ。もし俺がしくじったら今度はアンタがここを守らないとならない。そうだろ」
「そ、そうだが……」
「だから待機するのは決して何もしていないわけじゃない。いつでも最後まで戦う姿勢で居続けることなんだ。それはアンタの仕事だ。だから出来るよな」
「あ、当たり前だ!」
「いいか、忘れるな。アンタ等は最後の希望だ」
「最後の希望……分かった。ここは私達に任せろ!」
「ああ、頼んだぞ!」
ふう、こういうヤツはチョロくて助かるぜ。
活躍出来ないのが嫌なだけだから、格好いい言葉で立ち位置を飾ってやれば意外と乗ってくれる。
ちらっと砦長に目線を移すと感謝していた。
苦労しているんだろうな。どうやら砦の中では上役だけど身分としては下っぽいし。
これで余計なことはしないだろう。真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方であると昔のえらい人は上手いことを言うよな。
「セレーネ、それじゃあ行こうか」
「はいっ」
ターンアンデッド!
「やれやれ……」
ターンアンデッド!
そんなことが数日続き。
ターンアンデッド!
これで何日目だろうか。
ターンアンデッド!
もう軽く100以上のアンデッドの話を聞いている気がする。
ターンアンデッド!
「ちょうどこれで300体目です」
「ええ!? そんなにか!? そこはちゃんと数えていたんだ。てっきり百体くらいだと思ってた」
「わたくしには数えるくらいしか出来ませんし」
「そ、そうか」
「もうこれはアンデッド相談専門の勇者としてやっていくのはどうでしょう。わたくしもアンデッドが決して邪悪なだけではないと分かりましたし」
「勘弁してくれ臭いだって大変だし。やっと見た目に慣れてきたと思ったら今夜のは虫だぞ虫が身体の中で這ってたんだぞ!」
「あ、あう……あれは凄かったですね」
「なんか夢に出そうだ」
「……確かに悪夢になりそうです」
「はぁ……」
段々とアンデッドの質……と言えば良いのか。
最初の頃はまだ新しい死体って感じだったが、今夜のは腐敗がかなり進んでいてヤバい色をしていて臭いも酷く、さらに体内に虫が這ってた。
さすがに直視するのはキツかった。もし昼間だったら絶対に無理だったかもしれない。
「どうやらアンデッドを送りつけている相手も良い素体がなくなってきているって感じかな」
「そうかもしれません」
「そろそろ諦めてくれると良いんだけど」
「はい、個人的にも本当にそうしていただきたいです」
「でもゾンビって腐ると強さの差とかはあるのかな」
「一応、耐久度が違います」
「ああ、なるほど」
「スケルトンてそう言えばいないのかな」
「居ますよ」
「だったら腐ったのは全部スケルトンにしちまえばいいんじゃね?」
「スケルトンは動き速くて武器や盾などが使えまる反面、攻撃が軽いので壁への攻撃とかにはあまり効果がないんだと思われます」
「体重が軽いからか。でも武器と盾が使えるってそっちの方が強そう」
「装備を用意しないといけませんし、操り人形みたいな動きなので、戦いに慣れた人ならまず負けません」
「だったら雑魚かぁ」
「ですが数が揃うとスケルトンは厄介です。動きが速いので砦の内部に入り込まれると恐ろしいことになります」
「なるほど使い方があるのね。じゃあもしスケルトンを用意されたら厄介か」
「スケルトンの場合、白骨化した状態でないと作れませんので用意するのが困難なんです」
「死体の肉を削いで用意したりするとか……うわぁ、想像しただけで嫌かも」
それにしてもアンデッドのことばかり詳しくなるな。
でも本当の意味では何も分かっていない。アンデッドが死者のよみがえりなんてファンタジーな話じゃないのは確かだ。
とはいえ……。
「とにかく疲れたぁ、今はぐっすり眠りたいよ」
「そうですね……わたくしもさすがにこれだけ続くと厳しいです」
「あー……でも、今日はさすがに身体を少し洗いたいかな」
「そういえばハグされてましたものね」
一人女性のゾンビがいた。
彼女はお礼として抱きしめてくれたんだけど腐敗が進んでいたので結構色々とぐちょってした。
さすがにこのまま眠るのは嫌だな。
「教会に行けば、綺麗なお水がありますのでそれで身体を拭きますか」
「そうさせてもらえると助かる」
「分かりました。それでは向かいましょう」
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