第18話 恨みは知らぬうちに買うものですが、何か?
~リコネルside~
「先ほどご連絡がありまして、ミラノ・フェルン作家と、ヴィヴィアン・ヴリュンデ作家との合作の小説になるそうですわよ」
「まぁ! 純愛恋愛小説のヴィヴィアンさんと、官能小説のミラノさんの合作……それはとても興味がありますわ!」
オペラ歌手であるイリーシア・ファレルノ様の情報に、わたくしは胸躍る気分で報告を聞いたのです。
純愛恋愛小説の神髄、ヴィヴィアン・ヴリュンデ。
官能小説、エロ小説かとして右に出る者はいない、ミラノ・フェルン。
この二人の合作がどうなるのか楽しみでワクワクしていたのですけれど、今日はそれだけではありませんのよね。
「それで、情報は集まりまして?」
「ええ、リコネル王妃が納得するだけの情報は一応、第一段階で集まりましたわ」
「それでは、ミハエルが集めた情報も合わせて聞きましょうか」
諜報部でも集めるだけ集めた【黒薔薇の会】のリーダーである【アリィミア・ダライアス】のこれまでの活動と、今後の活動展開を調べ上げていたのは骨が折れましたわ。
小さな溜息と共に、学生時代のアリィミア様の事を思い出します。
けれど……わたくしとはなんら接点はなく、ただ、彼女は何かと暗いイメージがあったのは間違いない事ですわ。
爵位としては低い地方の男爵地位の彼女が、後妻であれ伯爵家に入れたことは、シンデレラストーリーのようなもの。
その彼女が、わたくしに妬み、嫉妬をしていることを知ったのは、最初の作家たちが筆を折られるだけの誹謗中傷を受けた時に始まりますわ。
それから日々行われる誹謗中傷の手紙の嵐は狂気じみていて、それらを排除するまでに、そう時間はかかりませんでしたわ。
彼女たちの手紙には特徴があり、その全てが、宛名が三か所、偽名も三つと言うやり方でしたわ。
その住所と言うのが可笑しいのです。
調べ上げたところ、その住所とは――今はもう無い、ネルファー・ガルディアンの屋敷の住所、そして、既に宰相の地位を追われ、今では強制労働をしているラフェール様のご実家の住所。そして、同じく強制労働をしている伯爵の地位を追われたモンド様のご実家の住所を使われていた。
そして、偽名に関しては、彼らの名前が今もなお使われていると言う事。
名誉棄損で訴えられても可笑しくはないのに、黒薔薇の会はそんなことはお魔界なしに手紙を送ってくるのです。
彼女たちにとっては、ライフワークなのかもしれないけれど、作家生命を奪う事がライフワーク等、作家達からしてみれば、たまったものではありませんわ。
「各作家へ届いている誹謗中傷のお手紙の筆跡も誰だか追う事が出来ましたし、そろそろ一網打尽にして差し上げたいところですわね」
「それはまだ早急過ぎますわ。ミラノさんとヴィヴィアンさんの合作が出来てからでも遅くありませんもの。きっと今までにない程の量が届くはずですわ」
「リコネル王妃は、そこで勝負をかけるおつもりなのね」
「無論ですわ。まぁ、誹謗中傷なんてものは、目立てば目立つほど、沢山出てくるものだとは思っていますけれど、度が過ぎれば作家生命を脅かすものになりますもの。彼女たちのライフワークを奪う事になりますけれど、それは致し方ありませんわね」
「もう暫く、泳がせておきましょうか」
「ええ、もう少しだけ……ね」
そう微笑み合って紅茶を飲み、その日は解散となりましたの。
けれど――アリィミア・ダライアス。
一体彼女は何処で狂ってしまったのかしら……。
そもそも、わたくしは以前の婚約者の所為で断罪されてますし、学園からも追放されてますから、それで何か思う輩が居ても留飲は下がっていると思ってましたけれど……。
「人とは、恨みをどこで買うか分かりませんわね」
一人呟いた言葉は誰にも聞かれることなく、秋の空に溶けて消えた。
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アクセス頂き有難うございます。
無事、子供の風邪も落ち着いたので執筆が可能になりましたが、やはり書き溜めが余り出来なかったので、更新が止まったら申し訳ありません。
そして、恨みって知らない内に買うよね~?
と言う事を考えながら書いてみました。
いや、本当に訳の分からないところから妬み、恨みって買いますよね。
誰しも一度は経験があるはず。
人の脳とは不思議なものですね。
★お知らせ★
夜の執筆用にポメラを導入したので、別枠で書ける小説が増えました。
そのうちアップできるといいなぁ。
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