第113話 モヤ
ジュダは靄の掛かった中にいた。
ここは?確かユナ様の加護が急に消えて、仲間が死にかけていて、俺は殿を努めて己の死に場所とした筈だった。だが今ユナ様が目の前にいて自分を抱きしめてくれていた。
そうか俺は死んでユナ様の元に来れたんだな。
そんな事をジェダは考えていた。しかしユナは
「ごめんなさい。ジェダ。私はこの世界で死んで神界に戻される事になったの。間もなく召されるわ。貴方と過ごした時間は私の宝よ。良かった・・生きて女神イザベラの加護を得られたのね。新たに恋人を探し、新たな人生を歩みなさい。ちゃんと年老いて孫達に看取られるまで生きてください。さようなら愛しい人よ。お別れです」
「ああ、ユナ、愛している!愛している!暫しのお別れだ」
二人は泣きながら抱き締め合っていたが、やがて女神は霧散していった。
するとジェダの頭の中の靄が消え、意識がはっきりした。気が付くとイザベラと言う女神が仲間に契約をして回っていっていた。
「なあメアリー、ユナ様にちゃんとお別れが出来たよ。ちくしょー!なんで死んじまったんだよ!何があったんだよ!」
メアリーのお腹に抱かれ頭を撫でられていたが1分位で立ち直り
「助かったよ。有難うな。今まで済まなかった。もう大丈夫だから」
自らの頬を叩き、晃に
「君が晃くんだね。皆を頼むよ」
「貴方はどうされますか?若輩者の僕が嫌じゃなかったら皆さんで六連星に来ませんか?第2師団の師団長として」
「良いのか?」
「今までと殆ど代わりありません。何人か亡くなられているからそのままのパーティ構成と言う訳には行かないでしょうが。それと、グラッグさんに案内をして貰い、装備を回収してきます」
メアリーが横から
「晃さん、地上に戻ったらエニーをめとじゃなく、宜しくね。あの子を貴方の直接のパーティに入れてあげてね。今は5人ですよね?それと、あの、別のお願いは大丈夫ですか?」
晃はアホだった。頷いてから
「ダグラスさん!ちょっといいですか?」
「どうした?」
メアリーから距離を置いて
「あのーメアリーさんが、お話があるって。確かダグラスさんは恋人いませんよね?メアリーさん多分ダグラスさんの事を好きなんです。仲を取り持ってって」
「ちょっと待て?あのメアリーさんが俺の事を?マジでか?憧れのマドンナだぞ。」
「団に入る筈ですから、食事にでも誘ってみたらどうですか?」
「そ、そうか。うん。うん」
晃はダグラスをメアリーの所に連れて行くとメアリーはくねくねしていた。晃はダグラスの背中を物理的に押した。勿論躓いてメアリーに突進する形になり、ぶつかってしまい、メアリーが倒れそうになった。
咄嗟に腰に手を添えて、慌てて引き寄せる。抱き合う形になったが、晃はメアリーにサムズアップして見せる。
「きゃっ」
「メアリーさん大丈夫ですか?あの馬鹿野郎が」
「お久し振りですわねダグラス様。あの、今度今後の事も話したいのでそ、その、あのー」
「メアリーさん。俺と今度食事をどうですか?あ、いや。流石に俺なんかとは嫌かな」
「そんな事は有りませんわ。貴方が救援隊を率いて来てくれて嬉しかったのです。一人の女としてですわ。お食事は勿論ご相伴させて頂きますわ。坊やとか抜きでその、できたら二人が良いのですが」
いつの間にかメアリーは本格的に抱きついて助けに来てくれた事の感謝で泣いていた。
ダグラスはただただ抱き締めて背中を擦っていた。エニーが
「ねえ、朴念仁さん。我らのマザー、メアリー女史はどうしたの?」
「ダグラスさんの事か好きで、ダグラスも満更じゃないって事さ。メアリーさんにダグラスさんとの仲を取り持ってって頼まれて、引き合わせたんだ」
「いいなー。ねえ、あんたはああやって抱きしめてくれないの?」
「それは恋人の役目だよ。地上に戻ったら恋人に甘えたら?」
「ばか!恋人なんて居ないわよ。あんたに抱きしめて欲しかったのに。やっぱり本格的に朴念仁ね。私もあんたが助けてくれて嬉しかったのです!ばーか」
オロオロしている晃の所にグラッグが来て
「坊主、そろそろ行くんじゃないのか?」
「ああ、そうだった。よし。おーい出発するよ。34階層まで先に行っていてね。僕のパーティと、グラッグさんとで41階層に行ってきます」
「待て晃。俺のパーティも行こう。食料は34にある程度置いてきたし、オッサンじゃなくてダグラスさんが居れば大丈夫だろう。それに死体も可能なら回収してあげたいからな」
そして2つのパーティは41階層に向かうのであった。
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