第91話  間に合うか?

 エニグマの体力が戻るといつの間にか小走りで駆けていた。

 21階層を駆け抜け、階段まで来ていたのだ。


 エニグマに一緒に来た3人とどの辺りでばらけたのかを確認するすると階段から5分ほど進んだところだと言う。


 階段を降りるとまず周辺の気配を探る。階段の上からは下の階層の気配が殆ど分からないからだ。


 周辺に魔物の気配がない事が分かり、エニグマが来た方向へ向かい出す。警戒しながらゆっくりと9分位歩いた頃、後もう少しという所で、エニグマが駆け出そうとした。


 その為晃は慌ててその細くしなやかな腕を掴み、引き寄せる。エニグマが抗議の声を上げようとしたので晃は


「ちょっと待って。何かおかしいんだ。何かあるみたいなんだ」


 晃のただならぬ雰囲気に今もレヴィが周囲を警戒する。すると周辺を調べていた晃があったよっという。巧妙に隠されているが、床に糸が張られている。何かがそこを通ると紐が引っ張られるような仕組みになっている。このフロアでは本来トラップがないと聞いている。なので晃の考えはははぐれ3人の中の誰か、もしくは3人がトラップもしくは警報代わりにそこのロープを仕掛けたのではないか?だった。しかし、敢えてトラップを発動させる事にした。


 解除したものかどうか。解除中に条件を満たしてしまい発動させるリスクがある為に罠を発動させることにしたのだ。晃が収納の中からボロい使わなくなった剣を出し、それを投げる。


 一投目は外してしまったが気を取り直しもう一度剣を投げる。すると孤を描きながら飛んで行き見事にロープに当たった。


 そうするとバシッという音と共に天井が落ちてきたのだ。どうやって上げて仕掛けたか分からないが、ひょっとすると土系の魔法が使えたのか?と晃は思う。そこにいれば見事にトラップにやられ、上から落ちてきた天井板に挟まれ、死ぬまではいかなくても身動きが取れなくなっていただろうと思う。そうすると近くの壁が開き人が一人出てきて様子を伺いていた。


 エニグマが声をかける


「良かった!無事だったのね私よ」


「どうしてここにエニグマが?それと彼らは?」


「うんグラッドと私を助けてくれて、彼の仲間がグラッドを地上に連れて行ってくれているの。この二人が私と共にあなたや仲間達の元に駆けつけようとしてくれているの」


「そうか助かったよ。こっちに来てくれ」


 そうするとどうやらセーフゾーンがあるらしく、セーフゾーンの入り口の隠蔽を外していた。そう彼が出てきた所である。中に入ると四畳半ほどの小さな空間がある。後の二人が横たわっていたが胸が上下していることから生きてはいるようだが、怪我をしているようだった。レヴィが慌てて治療を始めていた。


 話を聞くと階段付近のこの辺りで多くの魔物に追われ、エニグマとグラッドを先に行かせる為に3人がここでて魔物を食い止めていた。


 二人が怪我を負ってしまいなんとか魔物のを倒しきったものの身動きがとれなくなった。たまたまこのセーフゾーンを見つけ、ここで救助を待つ事にした。あのトラップは誰かが通った時に発動し、死ぬまでもないが大きな音で誰かが来たことがわかるようにし、音がすると覗きに行き、再度仕掛けていたと言う。弱いながら土魔法が使えるということで攻撃には使えないが、土の板を精製し、それを天井に持ち上げる事くらいは何とかできたそうだ。


 やがて二人が覚醒し始めたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る