第79話 付与
晃はドロップについて頭を悩めていた。
矢生成の矢筒は弓を使うのがレヴィだけなので問題なかったが、悩んだのは魔導書についてだった。
どうやら何かの初級魔法を取得できるらしいのだ。ただ属性がランダムなのが気になるところではあるが、レヴィに魔法を使いたいかを聞くと、弓があるから今はまだいらないという。それよりも、皆は晃が魔法を覚えるのに使ったらどうだということになった。中衛をする者がまともにいないので自然と晃になった感じだ。ローラン達は根っからの脳筋で、確かに強いのだが、全体を見ながら指示をする者が必要になっていた。
それとドロップをゲットしたのがそもそも晃だから取得しなと言われた。
皆からどんな魔法が得られるのかが楽しみだと急かされ、その場で魔導書を開ける事になった。クリーン魔法を取得した時のように読み始めると、文字は読めないが頭の中に入ってくる。魔法書は誰かが読むと灰になって消えてしまう。魔法書とはそういった代物であった。
晃が魔法書を読み始めると何をイメージするか?と頭の中に質問がこだまする。何に力を求めるか率直なイメージを思い浮かべる。晃が思いついたのは定番の炎ではなく、漫画の北○の拳に出てくる南○水○拳のように何かを切り裂くそういうイメージを思い浮かべた。そうすると相分かった。君には鎌鼬を授けよう。そう言って本は崩れて消え去っていった。実質1分位晃はぼーっと立っていたそうだ。
皆で警戒をしながら晃の様子を見ていると、一瞬晃が輝き、晃がボソッと言う。
「鎌鼬だって」
みんなポカーンとしているのは鎌鼬が何か分からないからだ。
そう、格好良くウィンドカッターではないのである。
晃の準備が出来るのを待っていたかのようにゴブリンが数匹現れて、晃に向かい出す。
早速鎌鼬を試す機会が来たのだ。
ゴブリンの群れが接近してきていた。ただ、困った事に魔法を念じても何も出ない。晃は慌て出したが、目の前にゴブリンが来た。剣が振り降ろされる。晃が戸惑っていて対処に間に合わなく、助太刀しようとするもローラン達は間に合わなかった。
晃は恐怖に駆られ、咄嗟に手を振り来るなとジェスチャーをすると手の先から見えない何かが出た。すると先頭の2体のゴブリンがバラバラになり霧散した。
他のメンバーにも一斉に掛かってきて各々対処を始めた。
晃に向かってきた奴に魔法を出そうとするが出ないので剣で戦い出した。
レヴィは弓で援護をしてたり倒したりしている。
一体一体の強さは問題ないが、如何せん数が多かった。最終的に拾った魔石は45個になった。
晃は不意を突かれて襲われ、死ぬ!と恐怖に震えながら、涙しながらみっともなく戦い、ソレイユが必死に守った形だ。
心構えができている時は戦えるが、咄嗟にとなった状況下で初期の対処に失敗し、立て直しがうまくできなかったのだ。
経験の無さが露呈した形だ。
魔石を拾い終わると警戒をお願いし、魔法の発動条件を確認し、手で弧を描いたり手を目標に向けて振りがざすと出た。また、剣を振りがざし鎌鼬と唸ると剣先からやはり出た。
「ごめんね。咄嗟に動けなかった」
「確かまだ一週間位だよな。まあ無理ないよな。で、魔法は使えそうなのか?」
「あっはい。そっちは今確かめました。ほら、こうやって出せるのが分かったので」
剣を振るとそこから何かが出たのが皆も分かり、おおーと唸っていた。
晃は嬉しかった。
普通の魔法が放てるのだ。夢中になり、今日の以後の戦いには魔法でガンガン攻めていた。暫く10階で戦い、そろそろ引き上げる時間になり9階に戻る。
するとバックヤード団の者達が戦っていて時間を忘れていたようだが、晃に気がついたようで
「おっ、晃団長のおでましだ。って上がりっすか?」
「うん。そろそろ引き上げないと夕食に間に合いませんからね。皆さんもそろそろ帰りましょう!」
「ですな。野郎ども帰るぞ!飯が待ってるぜ!」
帰り道にどんどんバックヤード団のメンバーが合流し、かなりの人数での凱旋になったのであった。
勿論死亡者はいない。
皆気がついてはいないなが晃は引きが強い。強敵が現れるが結構なレアが出るのだ。
ローラン辺りは今日の稼ぎに胸を膨らませていた。
大輔の方は晃にダイスについて教えていたが、やはり途中で何度かダイスを振り、中々出目が良く、レアやドロップが出る比率が高かったらしい。大輔は全体のフォローに回っていて皆程戦っていないのと、初心者層に大して人数が多過ぎたて満足に戦えず、稼ぎ的に無駄が多いとし、明日はかなり減らすと言う。
晃達は明日は昼から行くことになった。
大輔はバックヤード団は半分は屋敷の修繕の為に残し、ダンジョンに入るのは半分にしま。数日は入れ換えで行くと。明日は建材を買い込んでから行くんだそうだ。
因みに大輔のパーティーが離れで暮らすらしい。屋敷は大き過ぎて落ち着かないんだそうだ。
それと一度ローラン、ソレイユ、レオナの3人をケイトと契約させ、直ぐにイザベラに再契約させる話をした。どうやら先程魔法の取得を晃にとしていたのは、魔力を感じないから無駄になるからだそうだ。
ケイトの加護は魔力を持たぬ者に魔法の発動を強制的に可能とするレアな能力だ。しかも一度魔力を使えるようになると契約解除しても魔力が残る。
晃は大輔にギルドと掛け合い、魔力を持たぬ者に魔力を付与する為の一時契約を、対価と引き換えに受けたらどうかと提案した。
基本的に女神は稼ぎがない。自分で稼ぐ事が出来れば、気兼ねなくお金を使えるからと、女神の精神衛生上稼ぐ手段が有るのが良いのではとなった。
大輔はなる程と唸っていた。
そうして先ずは換金の為にギルドに行くのであった。
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