第4章

第75話  クラン始動

 3度寝から目覚め、顔を洗っていると胸が半ば見え掛けているターニャが頭を手で押さえながらこちらに向かってきた。


 晃はあれ?と思う。

 顔立ちが幼いのだ。服が違うからそう見えるのか。それより胸が気になる。見えそうで見えない。


「おはようございます。ターニャさん。あの、服直しませんか?ポロリになっちゃいますよ?」


「うへ?いやーん!晃のエッチ!」


 慌てて後ろを向き、乱れた服を直すが、どうやら二日酔いのようだ。やはり飲めないのに誰かのいたずらか、間違えて飲んだのか辛そうだ。


「あの、晃くん?昨夜私達何もなかった?なんかね、君に告白された気がするんだけど」


「僕もあまり覚えてなくて、誰かがベッドに運んでくれて、起きたら一人でしたよ。ターニャさんは?」


「うん。なんとか歩けたから私とイザベラ様とで君に肩を貸してベッドまで辿り着いたの。晃くんをベッドに寝かせてそこで力尽きた気がするのよね。でも起きたら一人で寝てたのよ」


「きっと酔っいて記憶が曖昧なんですよ。ターニャさんの事は大好きですけど、流石に知り合って間もないし告白はしてませんよ」


「分かったわ。誰よ私にお酒を飲ませたの。それより、クリーンをお願い。女の子の日なの」


 よく分からなかったが、ターニャに触れながらクリーンを使った。


「あれ?詠唱は?」


「あっ、はい。イザベラ様から無詠唱の加護を頂いてるので不要なんです」


 晃の手を取りながら


「あっ!本当だ。イザベラ様は凄いギフトを授けて下さったのね。なんか、頭がスッキリしたなー。よし、着替えて朝食を食べに行きましょう!」


 イザベラを起こし、ギルド近くの店で朝食を済ませ、次にルーシーの店に行き弁当を2つ受け取った。ついでに追加で3つ買って行く。晃のはルーシーが直接手作りした特別製で、他は売り物だ。晃がデレデレしているものだからイザベラとターニャはすこぶる機嫌が悪いかった。


 今日のイザベラの予定はケイトと主に服の買い出しだ。

 それと神殿にケイトが下界に降りた旨を報告をしに行くので送り届ける。報告の後にギルドにて皆と待合せでダンジョンに向かう事に。


 ギルドに着くと既にレヴィがいてローラン達と話し込んでいた。


「みんなおはようございます!レヴィと知り合いだったんだ。じゃあ話は早いね」


「えっ?レヴィが団長のサポートしてたんだ。改めてよろしくね」


「あの、晃様はローランさん達とパーティーを組むのですか?」


「うん。彼らは僕のクランに入ったんだ。女神様が亡くなられたって聞いて、うちに来て貰う事になったから宜しくね」


 次にソレイユが


「レヴィは拾ってくれる所は見つかったの?」


 レヴィは首を振る


「ひょとしてレヴィはライチの所属なの?」


 首を縦に振るレヴィ


「ひょっしてあの時はサポートを売り込んでいたんじゃなくて、クランに入れて欲しいと頼んでいたの?」


「ご、ごめんなさい。私はぐれなんです」


「よし、じゃあまだ時間あるからイザベラ様の所に行こうか。まだ中にいるからねー」


 キョトンとしているレヴィが


「あのー?イザベラ様がどうかされたんですか?」


「うん。何ってレヴィと契約してもらうんだよ」


「いいのかい?この子ライチじゃ一番下っぱで稼ぎも悪かったんですよ!」


「えっとソレイユさん、彼女自身が仕留めた分だとそうなると思うけど、レヴィの真価は仲間の主力が戦いやすくフォローしてくれるのと、多分レヴィの特殊能力が攻撃力アップのハブを掛ける事にあると思うんだ。レヴィがハブを掛けてくれると体が軽くなり、力が漲るんだよね。だから問題ないよ。寧ろレア能力で本来引手数多なんだと思うんだ。レヴィ、改めて頼みたい。僕のクランに来てくれないかな?」


 レヴィは泣きながら頷く。ローラン、レオナ、ソレイユの3人に祝福されていた。

 そしてそんな様子を見ていたイザベラがいつの間にやら現れレヴィの額に手を添え


「無慈悲の女神たるイザベラが求む。我の庇護下に入り無垢の民の平安と自愛に尽くさん事を。ヒューマン、エルフ、ワーキャット、ドワーフのクウォーターたるレヴィに問う、我が祝福を受けるか?」


「はい。不詳の身なれど女神イザベラ様の祝福と共にあらん事を!」


 一瞬光りレヴィがイザベラの庇護化に入ったのがわかる。


「レヴィさん、くれぐれも私の晃にちょっかいを掛けないように。でも晃を助けてね」


「あの、ちょっかいって何ですか?」


「雌狐にならなければよいよ」


 レヴィは首を傾げていた。その意味を理解するには幼すぎたのだ。そんなレヴィを見てイザベラはやらかした感がしていた。


 そんな中、大輔達が現れダンジョンに向かい出した。


 ライチの女神の加護は弓矢の命中必中だったので、一部の者以外あまり有効では無かったという。


 ダンジョンの入口は団体様の、それも初ダンジョン者ばかりだった。その為に呆れ顔でうんざりしているギルド職員が呻いていたのであった。

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