第40話  新人戦は

 一週間はあっという間に過ぎ去っていくものだ。多少は上半身の肉体改造が出来たが、打ち合えるのが10合から20合位になった程度で、膂力は殆ど変わらない。相変わらず運任せと技と足で捌くしかない。


 それでも新人戦に出る中では突出していて、優勝候補らしい。但し、予選があり、まず間違いなく狙われるので、無計画に行動すると予選が一番厳しいという。


 バトルロワイヤルのようで、毎年約200人程が参加する。頭にバンダナを結んでいて、3人分を係員の元に持参すれば先着順で予選勝ち抜きになる。


 予選は殺したら即失格で、仲間とつるんでも良い。

 中には3人組で一番強い奴にバンダナを渡し早々に予選を通過させ、弱い奴はドロップアウトするとか。


 逆も有りだ。一番弱い奴に渡してやり、強い奴は他の奴から奪い取る。


 大輔達の座は後者をやる。

 予選で同じ座の者が戦っても意味がない。決勝の組み合わせも座を考慮され、同じ座から二人が決勝に出た場合で、順調に勝ち上がった場合に決勝まで当たらない組み合わせのトーナメント戦となる。


 大輔達の所は3人だ。

 この一週間で分かったり、上がった実力とで戦略を決めた。


 大輔が3人の中では一番強かった。後の二人も10回中2、3回は大輔に勝てていたのでそれなりに実力があった。


 なので3人で各座の者が、開始早々にバンダナを集め、係員に向かって行く奴らを襲いゴチになる。楽する奴らはご退場願う感じだ。少なく共2人は受付に張り付く。大輔がバンダナを狩り、2人はそこにいて大輔から渡されたバンダナを守るのと、のこのこ来る奴を倒す。但しちゃんと倒して実力で集めた奴はスルーする。そんな感じだ。


 大輔は軽装にして真っ先に受付に向かい、自分を倒さないと行けなくする。2人が追いついたら適当なというか、足の遅い奴を追いかけて倒す。実剣が必要で木剣は禁止なので、鞘をつけて殴り倒すようにする。


 理由は乱戦になる筈なので意図せずに誰かを刺殺すかもだからだ。

 3人共に誰かに倒されるのは考えていないが、予選を通過できないとしたら誤って殺す事だとし、それを恐れたのだ。


 因みにバンダナは取られても失格ではない。誰のでも良いから受付に3枚持っていくだけだだ。殺したら失格、武器は訓練用は禁止で、刃のついた真剣。それ以外はルールが無いのだ。決勝に行けるのが64名で先着になる位だ。


 前日は座長からの景気づけで夜の街に繰り出していた。

 座長と行動を共にする条件で外出が許され、初めての街を見る。タイムスリップして中世のヨーロッパにでも来た気分だった。大輔は完全にお上りさんだ。


 派手な看板のキャバクラみたいな店に入る。改めて分かったのは初めて見る字で当然読めない事だ。


 獣人のお姉さんやけばいおねえさん、地雷女もいたりしたが、楽しくお酒を頂いた。お触りOKな所だった。皆と弾けたとしか言えない。お触りまでだ。


 自室に戻ると不機嫌なケイトがいた。少しお金を貰っていたので、目的の店に行く前にちょっとしたアクセサリーを買っていてプレゼントした。座長からの気遣いだ。しかしケイトは寂しそうに


「ケイトはこんなんじゃ騙されません。変な女に引っかかってないですよね?」


「座長に連れられて、お姉さんがお酌する店で飲んだだけだぞ。抱いてないからな。あっ!すまない。酒臭かったか?ケイトはお酒の匂い駄目だったか?」


 お触りしたのを伏せて話を逸したが


「ケイトはもう知りません。精々明日は痛い目にあうと良のよ」


 と不貞寝してしまった。


「今日は一人にしてごめんな。明日からの新人戦を頑張って優勝するからさ。そしたらケイトの所有権を得られるから。そうたら絶対奴隷開放するよ。その後はさ、あの、良かったら二人で暮らすか、旅をして回らないか?考えておいてな。おやすみ」


 ケイトは背中を向けていたが、大輔の胸に抱きつき泣いていた。うんとしか言えなかった。そして泣き疲れて眠りに落ちる。ケイトは嬉しかった。が醜女の自分に優しく声を掛けてくれる。首輪の所為で嘘を付けないから、本当に一緒にいて欲しいと言われているのだと理解したからであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る