第2章  晃編

第13話  プロローグ

 話は少し戻る。晃が異世界転移した前後〜第1話の話である。

 

 晃は普通の高校に通う普通の高校1年生だ。皆で歩いていれば仲間内のただの一人であり、特に目立たない。身長155cmと小柄だが、絶賛成長中だった。


 ただ単に惰性で親に言われていた義務で高校に通っていた。親は中学を卒業した直後に交通事故で死んでしまい、今は貯金で過ごしていた。多額の賠償金が入る予定と、住宅ローンは死亡時免除だから自宅は晃の物だ。親からは厳しくは言われていなかったが、ちゃんとした大学に通い、その後は好きにしなさいと言われていた。何をするにも大学を出ておけば助けになるからと、大学は出なさいと言われていて、最後のアドバイスになっていた。ガリ勉ではないが、地元の大学に行く事を考え、以前はそれなりに勉学に励んでいた。


 一応叔父夫婦が保護者になっていて、時折様子を見に来る位で基本的に一人だ。


 晃は昔から足が早かった。その為陸上部に入り短距離の選手をしていた。100m、200m、100✕4リレーで、今は春の県大会に向けて練習をしている位で、他には特に何もしておらず帰宅してから適当に勉強し、息抜きにスマホのゲームをする位だ。最近嵌っていて、自分で決めている月の小遣いは全て課金に消えていた。


 ゲームもtoomで仲間とやり取りしていたりした。


 夕方に友達から家に来なよと呼ばれていて、宿題と食事をしに行く為家を出た。周りが気にかけてくれていて、友達は小学校からの付き合いで、昔からおばさんには良くしてもらっていた。


 妹が結構可愛くて、呼ばれると妹目当てで行っていたりする。


 友達の家に向かう道中、スマホが鳴り画面に、以前申し込んでいた今やっている法治少女というゲームの運用会社から、特別ベータテストのモニターに当選した旨が出ていて、参加する場合は今から2分以内に画面に出ているボタンを選択しなければならなかった。


 噂には聞いていたが、申し込んだ記憶がないが、寝ぼけて申し込んだかな?位の感覚で


「うほー!モニター当たったか!申し込みしたか覚えていないけど、もちろん参加するに決まってますよーだ!」


 とつぶやきながら申し込みの所をポチる。


 直ぐにメールが来て、分身となるキャラクターのメイキングの案内がある。


 約束の時間まで少しあり、近くのコンビニの壁にもたれながらポチポチしていた。


 3Dのゴーグルをいずれ装着しての立体も楽しめるようにアップデートをするからと、可能な限り体の特徴はリアルサイズを入れて行くよう求められた。テスト段階の為、身長に差があったりすると視界が変わり酔うからと説明書きがある。


 ジョブはスタート時はまず一般からだが、戦士、神官、魔法使い、蛮族等にいずれ成れるが、何になりたいかの指針を指定する。基本ジョブに一般、勇者、極悪人、貴族がある。晃は勿論勇者一択だ。貴族は初期の装備や、得られる資材が豊富で、ある意味序盤最強だが、成長は早く止まる。極悪人は初期から肉体的に強く、倫理観に左右されず序盤から中盤にかけて強く、後半も育成次第で及第点だ。但し、犯罪者の為に街に入れなかったりするが、勇者に次ぐ強さを持つ。

 勇者は最初が最弱で、一般人以下だ。初期の育成に苦労するが、いずれ最強になると。初期装備も貧弱だが、勇者特典が有り、特別ロトが定期的に有るらしい。


 また、ゲーム全体の話で、所有している一部の武器や防具、初期アイテム、お金等を入れておいて他人からアクセスできない特別収納がある。まあ、ゲームならお金はデータのような物だから、ジャラジャラと持ち歩かないよなあと、普通のゲーム感覚のようにお金の管理をするもっともらしい理由かな?とニヤニヤしていた。


 中々リアルを追求していて、体力値と装備上限重量が紐付いていて、超えると動きが鈍くなったりと凝っていた。食料や水のパロメータまである。


 最後の作業として顔写真を撮り登録が完了した。


 そして最後のメッセージが来た


「異世界へ転移されますか?異世界では死ぬ危険性が有りますが、異世界での行動は自己責任になります。また、この世界に戻る手立ては3つある最古の未踏破ダンジョンの制覇が条件です。最低でも数年掛かる見込みです。それでも行きますか?  行く/行かない 」


「はははは。中々凝ってるな!おうおう異世界でもどこにでも連れてけるなら連れてってくれ!そらぽちっとな」


 すると景色が変わった。岩場がゴツゴツしている6畳位の部屋?にいる。瞬きをし、目を開けると得体のしれない場所にいたのだ。


 スマホが鳴り、メッセージが出た。


「見ての通り、貴方は異世界に勇者として転移しました。頑張って生き抜いてください。初期装備配布用の無料アイテムロトを一度回す事ができます。また、この部屋は一度出ると消えてしまいますのでご注意願います。また、本通信装置は収納に入れておいて下さい。電力の代わりに貴方からの魔力で動き、メッセージは貴方だけに鳴り響きます。それではご健闘を」


 ぽふっと煙が出て、チケットが出た。


 晃は先程までコンビニにいたのに違う場所に来ていたが、何故かワクワクしていた。


 スマホを見ると当然だが圏外だ。


 チケットにはジョブ勇者用初期装備無料特別ロトとある。

 試しにスマホを収納と念ずると消え、出ろと念ずると出てきた。次にかばんや財布も出し入れ出来た。また、部屋の扉と思われる所は開かなかった。


 先のチケットを使わないと出れないと感じ、チケットに書いてあるように破るとぽふっと煙が出て、ロトマシーンや武器やらなんやらが現れた。チケットにはロトマシーンは以後のロトにて必要になるので収納するように書いてあり、一度収納すると、以後はアプリに連動して自動で出たり消えたりするとあった。


 出てきたのは定番のブロードソードか?と思うとブロンズのショートソード、革の鎧ならぬ革の服。革の胸当て、革の小手に革のズボン、冒険者用の靴。金貨10枚、銀貨10枚、銅貨10枚、それを入れる財布、予備の服、短剣、ナイフだ。また木の盾や額当てがあるが、最低限の装備だ。レアリティRと何とな分かる。知っているゲームとかと同じならレアリティは一番低い。つまり底辺の装備だ。アイテムとして万能回復薬小(塗り薬タイプ回復度中、回復速度遅と表記あり)、腰のベルトに付ける握り拳位の革で出来たウエストポーチ?だ。

 見た目もしょぼい。今着ている服よりは防御力が有るのが分かる。そして次なるメッセージにて急がなくては成らなくなった。


「本セーフティエリア消滅まで30分。それまでに支度をしてください。尚本セーフティエリア以降は本セーフティーエリアでの記憶が無くなりますのでご注意願います。尚能力については理解をしている状態でのスタートです。一月後位に記憶が戻りますので、それまで頑張って生き延びましょう!また、記録を残してスタート後のご自分にメッセージ等は残せませんのでお気をつけ下さい。それでは良い旅を!」


 晃はやばいと感じ、急いで着替え、着ていた服等は収納に入れて行く。強烈な焦燥感の為、着替えに必死だ。ここから放り出された直後から戦闘になるかもだからだ。しかも記憶をしばらく失うと。嘘を言っていないと判断し、試しにメモをスマホに残そうとするも


「記憶の持ち出しはできません」


 となり、ボイスレコーダーや動画も撮れないから記憶をなくした直後の自分にメッセージを出せなかった。ペンで書こうとしたが、それも叶わなかった。唯一靴紐の結び方を工夫するのが精一杯だった。


 そうしていると時間が来て晃はセーフティエリアの外に放り出されるのであった。


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