自主的な努力こそが、成長の鍵。――5

 戦闘開始。


 ぐさま、レイシーが指示を出す。


「まずは『エナジーアップ』です、リーリー!」

『リィ!』


 リーリーが両腕を広げ、まぶたを閉じる。


『自身のSTR・INTを30%上昇させる』魔法スキル『エナジーアップ』の構え。


『GIGI……!』


 対し、ゴールデンビートルは体を縮めるようにして力を溜めた。一手目はソリッドフォームのようだ。


 ゴールデンビートルの選択を確認し、レイシーは瞬時に指示を送る。


「『ビルドアップ』です、ピート!」

『ワウッ!』


 ゴールデンビートルと同じように、ピートがググッと力を溜めた。


『自身のSTRを30%上昇させる』物理スキル『ビルドアップ』の準備だ。


『自身のステータス上昇効果を味方にも与える』魔法スキル『ギフトダンス』を用いるリーリーの初手は、当然ながら自己強化スキルが望ましい。


 また、相手が自己強化スキルを選んだのを見た瞬間、ピートに自己強化スキルを使わせたのも、いい判断だ。


 ただでさえ防御性能が高いゴールデンビートルが、ソリッドフォームでさらに硬くなるんだ。レベル差のあるピートがの状態で攻めても、効果は薄い。


 焦って攻撃するよりは、自分も自己強化スキルを使うほうが、堅実だ。


『ワンッ!』


 レイシーの指示から2秒後、ピートが高らかにえた。


 ビルドアップの発動。ピートのSTRが上昇する。


 即座に、レイシーが次の指示を飛ばした。


「続いてスピードタックルです!」

『ワンッ!』


 ピートが弾丸のごとく飛び出し、ゴールデンビートルに高速タックルを見舞みまう。


『GIGI!?』


 ひるんだのか、ゴールデンビートルがよろめく。


 自己強化からの先制攻撃。お手本のような流れだ。


『リィ!』


 いで動いたのはリーリーだ。


 チャージタイムの3秒を終え、エナジーアップが発動。リーリーがオレンジ色のオーラに包まれ、STR・INTが上昇する。


『GIGIGI!』


 ほぼ同時、ゴールデンビートルのソリッドフォームが発動した。


 ゴールデンビートルの体がキラリと光る。VITとMNDが上がった証拠だ。


「『シャープファング』です、ピート! リーリーはギフトダンス!」

『ワウッ!』

『リィ!』


 レイシーの指示が響く。


 ピートが『ウゥゥ……!』とうなり、リーリーがクルクルと回転するように踊り出した。


 ピートのシャープファングは直接物理攻撃。チャージタイムは3秒、クールタイムは6秒。


 リーリーの『お約束』とも呼べるギフトダンスは、チャージタイム6秒、クールタイムは1分だ。


『GIGI……!』


 負けじと、ゴールデンビートルもスキルの準備に入った。


 頭部を前傾ぜんけいさせ、ピートに角を向ける。トラストスピアの構えだ。


 チャージタイム中の沈黙。


 緊張からか、レイシーの頬を汗が伝う。


『ガウッ!』


 3秒がち、ピートのシャープファングが発動した。


 大きく口を開けたピートがゴールデンビートルに飛びかかり、牙を突き立てる。


『GIGI!』


 ゴールデンビートルのHPバーがわずかに減少する。


 先ほどのスピードタックルと合わせて、HPバー1/4分のダメージ。ゴールデンビートルのざんHPは3/4だ。


「ガンガン行きましょう! 『レッドバーニング』です!」

『ワウッ!』


 攻めの手をゆるめず、レイシーは即座に次の指示を送った。


 一鳴ひとなきしたピートの口腔こうくうが赤く染まり、チラチラと燐光りんこうが漏れ出す。


 火属性の魔法攻撃『レッドバーニング』の構えだ。

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