結局のところ、やる気があるやつは応援したくなるのが人情。――15

 明らかな劣勢のなか、レイシーが、反撃のための一手を打った。


「リーリー、『ギフトダンス』!」


 レイシーに指示されたリーリーが、空中でクルクルと舞いはじめる。


 これこそが、エイシス遺跡で手に入れた『魔法のスクロール』により、リーリーが修得したスキルだ。


「なんのためにヒラヒラ踊っているのかわからないけど、最後までガンガンいくからね! 『フェザーショット』だよ、ガーちゃん!」

『クワァッ!』


 だが、ギフトダンスの発動には6秒間のチャージタイムが必要となる。それまでにピートが倒されたら、レイシーの勝ちの目はついえる。


 ケイトは、その勝ちの目を、ガーにつぶさせにいく。


 さらに、


「ケロちゃんももう一発、ウォーターショット!」

『ゲロッ!』


 ピートの弱点である水属性魔法スキルの準備を、ケロにさせた。トドメを刺すつもりだ。


 チャージタイム明けを待つふたり。


 ステージ上に漂う緊張感。


 先に動いたのはガーだった。


『クワァッ!』


 矢のように放たれる藍色の羽。


 物理攻撃スキル『フェザーショット』が、ピートを襲う。


『キャウンッ!』


 苦しげに鳴くピート。


 HPはもはや1/2以下だろう。ケロのウォーターショットを食らえば、間違いなく戦闘不能になる。


「あたしの勝ちだよ!」


 ケイトが自分の勝利を確信するなか、


「いえ、まだわかりません」


 レイシーは諦めなかった。


「間に合いましたから」


 レイシーの言葉の意味がつかめなかったのか、「間に合った?」とケイトがいぶかしげに首をかしげる。


『リィ!』


 レイシーが示唆しさしていたのは、リーリーのギフトダンスの発動だ。


 踊り終えたリーリーが両手を掲げると、ピートの体が緑色の光に包まれた。


「スピードタックル!」


 ギフトダンスの発動を確認するやいなや、レイシーが声を上げた。


 いまにもウォーターショットを放ちそうなケロに、指示を受けたピートが猛スピードで突進する。


『ゲロォッ!?』


 スピードタックルを食らったケロの反応は、明らかに先ほどとは異なるものだった。突進の勢いで宙に浮かされたケロは、目玉が飛び出すほどに目を見開いている。


 ケロの異変に、ケイトがメニュー画面を確認し、ギョッとした。


「ダメージが増えてる!?」


 ケイトが驚くのも無理はない。スピードタックルによって与えられたダメージが、約1.4倍になっていただろうから。


「バイト!」


 ケイトが驚いているあいだも、レイシーは指示を絶やさない。先ほどと同じようにバイトへ繋げる。


『ガゥッ!』

『ゲロォ……ッ!!』


 その一撃がトドメとなった。ウォーターショットを放てないまま、ケロが魔石へと姿を変える。


 信じがたいものを見るように、ケイトが呆然とした。

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