次元超越
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敵の居場所は
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セラフィムにデータを渡した翌日
「分析が終わったぞ」
サザーランド以外の七つの冠が玉座の間に集合し、セラフィムの報告を聞く。シャイターンは分身体、サザーランドは龍宮から聞いている。
「このハイネス因子はこの世界には存在しないエネルギーだ。だが今回敵が持って来たことでこの世界での存在が確立した。特性は魔力と酷似しているが、生命体による変換ができない。つまり魔力変換による魔導系列の発現ができないという欠点がある。他にも―――」
「その辺は後程聞く。このハイネス因子で次元移動は可能か?」
長くなりそうだったので、魔王が遮って質問する。セラフィムは不服そうだったが、切り替えていく。
「…………可能だ。そちらで用意した器材でも十分追跡も可能だろう」
「ふむ、それなら彼らの頑張りも徒労で終わらずに済みそうだ」
魔王城で作業していた面々は何とかハイネス因子の痕跡を探し出し、数日前までこの世界にいたのも判明し、現在の座標も割り出したが、とても不可解な座標だったので二の足を踏んでいたのだ。
「何せ突き止めた場所がこの世界から離れた異世界空間、しかも多次元を跨いで本来存在しない座標を示したのでな。確証を得られて何よりだ」
「そういう事でしたか。調べたかいがあったよ」
セラフィムは満足げな表情で鼻をフンと鳴らす。
「それで、どうやって攻める?」
ディアーロが片目を開けて尋ねる。腕を組んでいるが、その闘気からはいつでも戦えると訴えている。魔王はフッと笑う。
「我々だけで攻める。短期決戦だ」
それを聞いたディアーロ、アモン、セラフィムが不敵な笑みを浮かべる。
「そうでなくてはな」
「打って出るという訳か、面白い」
「私もどんな奴なのか興味がある。神に近付けるなら本望だ」
好戦的な態度で、楽しみで仕方ないと言った表情だ。
『儂を忘れるな小童共。しかし、全力で羽を伸ばせるなら、それはそれで楽しみだ』
サザーランドも乗り気で、口調から口元を歪ませているのが分かる。
一方で、アズラエルは呆れていた。
「攻めるのは良いが、そこまでどれくらいで行けるか明らかになっておるのか? この前とは訳が違うぞ?」
勝手に持って来た調査結果報告書をめくりながら質問する。
「低級神とスラーパァとやらの場所は単純に辿れたり招かれたりしたから良かったものの、今回はそうはいかんじゃろ。すんなり行けるとは限らんぞ?」
確かにアズラエルの言う事も分かる。しかし、
「安心しろ。伝手はある」
魔王は不敵な笑みを浮かべてみせた。
「伝手、ですかあ?」
シャイターンは首を傾げながら聞いた。
「ああ、こんな時に役に立つ連中だ」
・・・・・・
「と言う訳で、協力してもらうぞ」
「強引だなアンタ……」
そう言って愚痴を零したのは、1級神族『次元』のネインだ。
神族と言っても、スラーパァの様な人の形はしていない。
奇怪な黒い肉塊に複数の目玉が付き、昆虫の様な殻を纏った腕が無数に生えている。如何にも怪物らしい存在だ。しかも、全長50mはある巨大な存在だ。
ネインの領域でお互いに向かい合っていた。今は魔王が押しかけてきた状況だ。
ネインは頭?を搔きながら、
「座標が分かっているなら問題無い。容易に目的地まで辿り着けるだろう」
「時差は?」
「おおよそ20分。大したズレは無い。まあ向こうの世界に影響は出るだろうがな」
ネインは無数の腕を数本動かして魔王の指定する世界を見る。
「…………と言っても、そのデウスエクスマキナとかいう自称神が一から作った世界だが」
「なら遠慮なく破壊しても良さそうだな」
魔王はマントを翻す。
「お前達にも良い影響は無さそうだしな」
「ああ。こんな無理矢理作った世界、他の世界に干渉して迷惑だからな。私達が手を出しても、新しい世界を創って逃亡を続ける。既存の世界に逃げ込まれたりしたらそれこそ大迷惑だ。早急に頼むよ」
「いいだろう。それで貸し借り無しだ」
「…………ああ、くっそ。そういう事か」
ネインは魔王に良いように誘導されたのに気付き、頭を抱える。
「交渉材料を引き出されたのか、喋り過ぎも良くないな」
「ならば次から気を付けるといい。今回は勉強代だと思って素直に聞くのだな」
「はいはい……」
ネインとの約束をこぎつけ、魔王は一度帰還する。
(待っていろ愚かな神よ。我直々に叩き潰してくれる)
・・・・・・
魔王城に戻って来た魔王は、七つの冠全員を二十席の間に集合させる。
「今から敵本拠地を強襲する! 行くのは我と七つの冠全員のみとした少数精鋭だ!」
魔王は声を張り上げ、全員に説明する。
「この戦いはこの世界を護る戦いである! 敗北は許さん! 手に入れるのは勝利のみだ!」
拳を高々と挙げ、
「我らが故郷を穢した敵を徹底的に蹂躙せよ!! 全力を持って殲滅するのだ!!」
七つの冠達は忠誠の姿勢を取り、無言で魔王の意思に答える。
そして、8つの強者達は、機械仕掛けの神の世界へ次元を超えて乗り込むのだった。
―――――――
お読みいただきありがとうございました。
次回は『異世界蹂躙』
お楽しみに。
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