七つの冠、始動
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魔族領最高戦力集団、緊急出動
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魔王城
魔王が過去の十二魔将達を退けてから2時間後、七つの冠達が集結していた。サザーランドが入る特殊な空間の部屋に集まり、全員が円卓に座り、顔を見合わせていた。
「ついさっき異界の者が原因とされる襲撃を受けた。こちらで片付けたが、今後似た様な襲撃を受ける可能性がある。よって、
いきなりの報告でシャイターンとアズラエルは驚いていた。それとは別に、
「どういう事か説明してもらおうか?」
アモンが冷静に質問する。セラフィムも同じ意見だと表情で分かる。魔王は2名を見ながら、
「先日、スラーパァのミスでこちらに異世界の神を名乗る不届き者が到着したそうだ。ここ数日我とサクラで探したが見つからず、今日になって亡くなった十二魔将達を模倣した者達が襲撃を仕掛けて来た。それらを全て退けて、今に至る」
魔王が簡潔に説明する。アモンは顎に手を当てて、
「……なるほどな、状況は理解した。だが、我々に何の連絡も無いのは納得がいかないな」
魔王を睨んで異論を述べた。
アモンがこう言うのも理解できる。こういった脅威に関する情報の共有をするのは重要であり、なるべく多くの要員で対処すべき問題だ。しかし、
「敵の強さも規模も分かっていない状況でお前達を危険に晒すわけにはいかない。確信が持てるまでは我のみで対処すべきだと判断したまでだ」
魔王の反論に、アモンは黙ってしまった。圧倒的強者で上位者に言われてしまうと言い返す言葉が無い。セラフィムも魔王の強さは理解しているので、下手に意見出来ず黙ってしまった。
黙ったのを見たサザーランドが口を開く。
「我らが対処に当たっても問題無いと判断して招集したのか?」
魔王は小さく頷き、
「そうだ。敵はこちらの過去の戦力を模倣してこちらの戦力を削ごうとしているのは明白。何故この様な手を取っているのか真意は分からんが、こちらで把握できるなら好都合だ。よって、七つの冠で十分対処可能だと判断した」
魔王の言葉に今まで目を閉じていたディアーロが目を開ける。
「具体的な行動方針は?」
「アモン、セラフィム、ディアーロは事体が解決するまで地底領と天上領をそれぞれ守護してもらう。警戒を強化せよ」
「「「仰せのままに」」」
アモン、セラフィム、ディアーロは忠誠の姿勢を取り、承諾する。
「サクラ、サザーランド、アズラエル、シャイターンは各大陸の警戒をせよ。異変を確認次第報告と同時に現場へ急行するように」
「「「「仰せのままに」」」」
サクラ、サザーランド、アズラエル、シャイターンも忠誠の姿勢を取り、承諾した。
「該当する異変に関しては我が開発した【探知魔術式】で探し出せる。これを全員に配布しておく。魔族領を穢した愚か者を絶対に逃すな!!」
魔王は立ち上がり、マントを翻す。
「殲滅せよ! 蹂躙せよ! これは魔族の誇りのための戦いである!!」
力強い宣言に七つの冠一同賛同し、改めて頭を下げたのだった。
・・・・・・
会議が終わった後、魔王は自身の部屋にいた。
日が落ちる空を窓から見ながら、独り黄昏ていた。
そこへ、扉をノックしてアズラエルが入ってくる。
「魔王、遊びに来たぞ」
魔王はアズラエルを見て、ソファに座る。
「座るといい。お茶を出そう」
「いや、それには及ばん。すぐに終わる」
アズラエルに制止され、魔王はお茶を出すのを止めた。
「何の用件だ?」
アズラエルはフゥ、と溜息をついて、
「お主、随分と苛立っておったな」
魔王は一瞬震えたが、すぐに動きが止まる。
「…………理由を聞こうか?」
「らしくもない口上をしていたからのお、よっぽど許せなかったと見えた。その上、魔力漏洩もいつもより若干量多かったしの」
アズラエルは懸念した様子で魔王に理由を話す。魔王は腕を組んで、
「だとしたら、どうする?」
アズラエルを睨む。アズラエルは意にも返さず、
「どうもこうも、お前の本音が聞きたいだけじゃ。我に話しても問題なかろう」
相変わらずの様子で答えた。魔王は長い溜息をついた。
「…………純粋に怒りが湧いた。それだけだ」
それだけ答えてソファから立ち上がる。アズラエルに背を向け、また窓の外を見る。
・・・・・・
その姿を外から心配そうに見ていたのは、サクラだった。
(お父様、かなり堪えてるんだろうな……。偽物とは言え、大切にしていた十二魔将達を斬ったのだから……)
魔王と十二魔将の歴史は七つの冠より長い。
元は四天王の名も無い下位組織から始まり、魔族領の規模が大きくなるにつれて数が必要となったため、十二魔将が設立された。魔王が魔王として降臨してから403年の時、今から2597年前だ。
そんな十二魔将達とは大なり小なりプライベートでも交流があった。新しい十二魔将が就任する度に信頼を結び、時に遊び、極め、仲を深めていった。
十二魔将一名一名に思い出があり、かけがえのない繋がりがあった。
(だからお父様は、攻撃を躊躇った)
サクラは魔王の戦いを遠くから見ていた。魔王が使った大剣『フォッシライズファンガ』は、『偉大なる鉄剣』の次に実戦で昔から使っていた物だ。それは十二魔将達と共に戦った時にいつも持っていた武器でもあった。
それを使ったのは、微かでも記憶が残っているのなら、どうか戦わず退いて欲しいという意思の表れでもあったのだ。『一振千斬』を使わなかったのもそのせいだろう。
トドメにあれだけ強力な魔法を放ったのは、偽物で、何の望みも無いと気が付き、せめてもの慈悲で一撃で苦しまないようにしたためだ。
サクラはそんな推論を立てて、魔王が何故怒っているのかを理解できた。理解できたのと同時に、サクラ自身も悲しくなった。サクラも十二魔将達と交流があるからだ。
サクラは胸に手を当て、痛みを抑える。
(お父様はあれだけ怒るのと同時に、痛みも感じているはず……。……なのに、そんな素振りを一切見せない)
改めて魔王の姿を見る。そのオーラには怒り、憎しみの他に哀愁もあった。
そんな背中を見て、サクラ自身も堂々としなければと思い、背筋を伸ばした。
(お父様にご期待に添えるよう、私も頑張らなくては……!)
密かな決意を固め、魔王に背を向ける形で、任務の準備に向かうのだった。
・・・・・・
ザバファール大陸 孤島 遺跡群
そこにある遺物達に共鳴し、地の底に眠る魂が蘇る。
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お読みいただきありがとうございました。
次回は『魔王達』
お楽しみに。
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