■■の行進

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■■が降りてくる。神に呼ばれて降りてくる。


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 魔都 魔王城



 スラーパァの謝罪から2日、魔王は全土を隈なく探していた。



 あらゆる魔術と技術を駆使して探すが、未だに発見されていない。通常業務をこなしながらとは言え、尻尾すら掴めないのはここ1000年では無かった事だ。


 書斎で調査した場所のデータを改めて精査し、洗い出しを行う。


(物理的、時空間的にも反応が無い。存在そのものを隠蔽しているのなら厄介だな……)


 異星界の神と戦った転生者も、姿を現すまではどこにいるのか全く分からなかったと言っていた。多少難航すると思っていたが、それ以上だ。


 しばらくデータを閲覧していると、扉をノックする音が聞こえた。


「入れ」

「失礼します」


 入って来たのはサクラだった。


「追加の調査データをお持ちしました」


 今回の件はサクラ以外には伝えていない。実力の分からない敵と無闇に接触させるのは得策ではないと判断し、正体が分かるまでは伏せておくことにした。


「こちらへ持って来い」

「はい」


 魔王はデータを直接受け取り閲覧する。


「……別段変わったことは無さそうだな」

「そうみたいです。……使える物は全て使いましたが、何も手掛かりは見つかりませんでした。本当にこちらの世界に来ているのでしょうか……?」


 サクラが疑念を抱くのは無理も無い。ここまで徹底的に探しているのに何も見つからないのは、いないからではないか。そう結論を出してもおかしくない程あらゆる手を使って探しているのだ。


 しかし魔王はこちらに来ているのは間違いないと確信していた。


「サクラの言いたいことは分かる。しかし、万が一があってからでは遅いのだ」


 魔王は少し考え、


「……ならばアプローチを少し変えてみるか」

「と言いますと?」

「この魔族領には100億の民がいる。その民が見聞きした『情報』『噂』から特定する」


 そう言うと席から立ち上がる。


「屋外に出る。付いて来い」



 ・・・・・・



 魔王とサクラは魔王城の最上階テラスに来ていた。


 ここから魔都を一望でき、端から端まで見渡せるようになっている。


 魔王は魔力を解放し、術式を展開する。



 【並列思考】『地獄耳』『聞き分け』



 魔術【並列思考】で聞く頭を増やし、スキル『地獄耳』で魔族領全土の会話を聞き、スキル『聞き分け』で会話の内容を選別していく。


 最初はいくつもの会話が重なり騒音の様に聞こえる。徐々に聞き分け、内容を絞り、会話を聞いていく。


 聞き始めてから10分。魔王はある地域での『噂』に耳を止めた。


 『噂』の内容を拾い集め、一つの推測に辿り着く。


「…………なるほど、すでに行動は始まっていたか」


 魔王はマントを翻し、


「『七つの冠』を召集せよ。事態は一刻を有する」

「は! ただちに!」


 サクラは忠誠の姿勢を取り、連絡を取り始める。魔王も事態に対処するための準備に取り掛かる。


(今回の敵は質が悪い。みなに負担をかけるが、その分後悔させてやろう)



 ・・・・・・



 ホープ大陸 キャリバート霊山



 キャリバート霊山はラストギャリアの北西に隣接している山で、標高2000mある岩山だ。


 斜面が緩やかで、登山には最適なため、シーズンになると沢山の登山客がやってくる。今はシーズンが終盤なので、いるのは物好きな登山客と山小屋を管理している者くらいしかいない。


 山小屋を管理しているドワーフ族の男は、今日も少ない登山客を監視していた。登山客の中には素行の悪い者もいるので注意して見ているのだ。


(今日は、問題無さそうだな……。シーズンが終わったら浴びる程酒を飲みたいぜ)


 苦いコーヒーを飲みながら窓の外を見ていると、慌てて降りてくる登山客の姿が見えた。


「なんだ?」


 悪天候に変わったのかと思い、すぐに天気予定を確認する。しかし今日はそんな予定はない。


 落石、あるいは魔獣が発生した可能性も考慮し、武器を持って小屋から飛び出した。


「何があった?!」


 降りてくる登山客は武器を持った管理者に気付き、


「た、助けてくれ!! 山頂から武器を持った連中が降りて来てるんだ!!」

「何?」


 管理者は山頂の方を見る。



 山頂から、黒い塊が押し寄せているのが見える。


 目を凝らしてよく見ると、武器を持つ黒い影が大量にいるのが分かった。



 管理者は背筋に凍る物を感じ、


「急いで山小屋に入れ!! 防御結界が貼ってあるから多少はもつはずだ!!」

「は、はい!!」


 全員慌てて山小屋に入り、防御結界を起動する。管理者は急いで他の山小屋と連絡を取る。


「こちら7合地点山小屋! 山頂から武器を持った何かが降りて来てる! 至急救助を求む!」

『こちら救助隊。救助了解。詳細を求む』

「黒い影みたいな連中なんだが、ぞろぞろ山頂から降りて来てる!! しかも殺気立ってるから何してくるか分かんねえ!!」

『持っている武器は分かりますか?』

「ちょっと待ってくれ!」


 管理者は急いで双眼鏡を手にし、窓から黒い影達を見る。


「持っている武器は、剣に槍、斧に弓……、どいつもこいつも違う武器持ってて何とも言えねえよ!!」

『落ち着いて。とりあえず全部でなくてもいいですので、一つに絞って教えてくれませんか?』

「そ、それなら何とかなりそうだ」


 一旦呼吸を落ち着かせて再び双眼鏡で見る。


「……そうだな、ドワーフ族の男で、持っている武器が…………」


 それを見た管理者の言葉が止まる。


『どうしましたか? 応答してください』

「嘘だろ、何で……?!」



 そもそも、この山が何故『霊山』と呼ばれているのか。



 それは、この山の山頂に、



「どうして大昔の英傑、十二魔将の『エルミオン』様がいるんだ?!!!」




 歴代の十二魔将達の墓があるからだ。




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 タイトル:『死者の行進』


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お読みいただきありがとうございました。


次回は『魔王VS歴代十二魔将達』

お楽しみに。

 

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