幕間:女神
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その白は『清廉』か、『虚無』か
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勇者神殿
転移させてから30分。カイトと博士達は転移したメンバーと通信を取るために試行錯誤していた。
しかし、一向に繋がる気配が無い。
「ええいクソ!! 全チャンネル全滅だ!!」
博士は苛立ちのあまり机を拳で叩き、頭を掻きむしって悩んでいた。
「…………これは、本当に参ったな」
カイトも眉間をつまんでこの状況の打開策を考える。
「(転移装置は使えない。通信も使えない。無事に作戦が成功しても敵地に潜伏し続けてもらうしかなくなる。だがそれ以上に、こちらの手の内がバレている。最悪の場合も考えないと……)」
思考を巡らせ、できることを必死に模索する。
今いる4人だけでできる事は何か、自分にできる事は何かを考える。
その時、カイトの目の前に光が溢れた。
「っ」
あまりの眩しさに顔を手で覆うが、すぐに目が慣れてくる。
そこは見覚えのある真っ白な空間だった。地平線も見えず、ただただ白い光景だけが続いている。
「ここは……」
『お久しぶりです。カイト』
真っ白な世界に一人の女性が現れた。
銀の長髪、澄んだ碧い瞳、薄い布を幾重にも重ねて作られた服から垣間見える細身の身体。その後ろには淡い光の球体が浮いている。
カイトはその人物と面識があった。
「お久しぶりです。女神様」
『どうやらお困りの様ですね』
「ええ、何とか打開策を考えているのですが、出し渋らずに殆どの者を向かわせたのが失敗でした。状況把握もままならず……」
『その事なのですが、これを』
女神が両手を腹辺りまで挙げると、周囲にいくつもの映像が現れた。そこに映っていたのは、転移した43人の内、35人の末路だった。
流石のカイトも眉間にシワを寄せ、苦しい表情をしていた。
「…………
『カイト……』
女神はカイトに優しく抱き着き、頭を撫でた。
『大丈夫、まだ打つ手はあります。残った皆に私の力を分けますから、それで魔族を倒すのです』
淡い光の球体から小さな光が生まれ、カイトに取り付いた。
「…………分かりました女神様。必ず皆の仇を取ります」
カイトの姿が徐々に透明になり、この空間から消えていく。
『行きなさい。私の可愛い勇者』
女神は優しく微笑んでカイトを見送った。
・・・・・・
テルモピラー 地下室
テルモピラーの地下では、氷魔法で拘束されたバベッジが鎖で繋がれていた。その身体には既に四肢は無く、性器も
その傍でアッカードとエパがいる。監視のためでもあるが、本来は拷問だ。周囲に拷問用の武器と道具が台に乗っている。
虫の息のバベッジをアッカードが氷水をぶっかけて叩き起こす。
「起きろ。拷問の時間だ」
殴られ続けた顔は原形を留めておらず、目も口も満足に開けられない。
「……こ、お…………せ。こ……、……せ」
最早戦意も敵意も削ぎ尽くされ死体一歩手前の状態だ。
「お前の生殺与奪の権限はこちらが持っている。よってその要望は却下だ」
「アッカード姉さん、こいつ丈夫だけどそろそろ死ぬんじゃない?」
エパが椅子に座ったまま足をばたつかせて聞いた。
「『女神の加護』。このスキルのおかげで頑丈になっているからそう簡単に死なんさ」
「だといいけど」
アッカードはナイフを掴み、そのままバベッジを斬り付けた。肩から腹にかけて大きく斬られ、傷口から出血する。
「あああああああ!!? うぐうううううううう!!」
叫びにならない呻き声を上げながら僅かに体を揺らした。しかし、出血はすぐに止まり、
「普通に斬ったらすぐに修復するんだ。あと何千回斬っても問題無いだろう」
アッカードが別の武器を取ろうとバベッジに背を向けた。
次の瞬間、傷口が再び開き大出血が起きた。
それだけには留まらず、過去に傷付けた部位も出血が再開する。
「何?」
「うわあ?! アッカード姉さんやり過ぎ!?」
「いや、私はまだ何も……」
困惑するアッカード達を余所に、バベッジがあまりの痛みに全力で悶え始めた。
「な、ぜ!? 何故だ! 女神ぃいいい?!!! どうして、『女神の加護』をぉおおおおぉおお!!?」
「女神だと? おい、どういう事だ?!」
アッカードが問いただそうとするが、バベッジの肉体が崩れ始めボロボロになる。
「くっぞぉお! ゆるざんぞぉお!! 何が、用済みだあああ!!! 我々を、勝手に呼んでおいてええ!!」
断末魔の叫びを上げながらドンドン赤い液体と肉片へと化していく。
「ゆ、る、ざないい……! 絶対、呪い殺して、やるう……!! おぉおおお……!!!!!」
最後の言葉を残し、真っ赤なヘドロになって完全に動かなくなった。
アッカードとエパはそれをただ茫然と見ている事しかできなかった。
「何だったんだ。今のは……」
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