これは運命の出会いか、はたまた呪われた出会いか。
八歳のアシュリンは、ぼろ布を纏う龍族の少年、サミュエルと邂逅した。
死に瀕していた彼を、彼女は看病した。
その甲斐あって、彼は元気になった。
お礼に不思議な輝きを放つ石を彼女に贈り、彼は去って行った。
時は進み、十六歳になったアシュリンはすでに両親を亡くし、自力で生きていた。
仕事に疲れて深く眠りについていた彼女であったが、気が付くと己が劫火に包まれていた。
逃走しようにも、もう彼女にそのような力は残されていなかった。
生を手放した彼女を救ってくれたのは、彼、サミュエルであった。
これから二人の織り成す物語は、一体どのようなものになるのだろうか。
また龍と人間の軋轢がどんなものなのかも非常に気になる。
気になった方は、ぜひ読んでみては如何だろうか。
世界観がとても緻密に創られている印象を受けました。
ファンタジーなので当然といえば当然なのですが、この基礎ががしっかりしていないと没入感を得にくい。
国の名前や物の名前といったところから魔術に至るまで理論的に構築されています。
龍がどのように生活しているのかも分かりやすい。
書くべきところは説明し、想像を膨らませる部分は情報量を少なくするというのは小説として大切な部分です。
ファンタジーだとここが難しいのですが、それをさらっと行っているので読んでいて不安を感じることはありませんでした。
きっと面白くなるだろうと思わせてくれる作品でした。
どうやら不穏な事件が頻発しており平和だった世界にも、悪意が満ちている様子。
ミステリ的な謎も投入することでジャンルを横断する魅力もありました。
主人公にも隠された秘密があるようなので徐々に解決していく過程も楽しみです。
本格的なファンタジーを読んでみてはいかがでしょうか。
龍族と人間、様々な種族が混在する世界。
結ばれることが決して許されない二人が出会ってしまった時、待ち受けるその運命とは。
まだ幼かった頃の主人公のアシュリンが、子供の龍、サミュエルを助けるシーンから始まります。
それから月日が経ち、再会することになり、二人は次第にこの大きな運命に飲み込まれて行き、己の切ない過去と共に突き進んでいく、異世界での恋愛ファンタジーです。
構成は3部に分かれており、現在、過去、そして未来へ繋がる完結編となっています。
切ない悲恋から、バトルシーン、ミステリーも散りばめられており、読んでいてハラハラドキドキ。
その分、ラストは想像以上のハッピーエンドで思わずガッツポーズをしたくなる結果が待っています。
本当によかったね、と……。
この壮絶で儚い雰囲気がこの文章内にもとても美しく描かれており、うっとりとしてしまう世界感がそこに広がっています。
切ない恋愛や、悲恋が好きな方、バトルファンタジーが好きな方にもにぜひ読んでほしい壮大な物語です。