第11話
今日も黒板に書いた料理の集計を済ませサンクート様に今日も1日無事に過ごせたことを感謝してベットに入る。
正直クタクタではあるのだが、何故か目が冴えてしまい今日を振り返る。
タスマニアさんたちも、アンナさんたちも最初から最後まで美味しそうに食べたり飲んだりとしてくれていたので良かったし、ロン君も感激しながら食べてくれたのはとっても嬉しいかったわ。
だたふと、気づいてしまったのだ。
休みがないことに。
この世界休みの概念は正直薄いが咲百合とゆっくり過ごす時間も欲しいので何としてでも休みは取りたいところなので、何とかしないといけない。
まぁ朝食は簡単に用意できるとしても夕食、しかも宿泊者以外も受け付けるとなるとかなりの負担になる。
そうなると、私もツラいので5日働いて1日朝食のみ作り夕食は値下げしてシチューやステーキとトーストのみとかにしてもらえればゆっくり出来るので明日キリスさん達に相談してみようと考えがまとまりスッキリすると眠気に襲われそのまま寝てしまった。
翌朝もモーニングプレート風にトーストと目玉焼き、マッシュポテトのミルクバター添え、チキンソテーを出したら、毎日違うメニューに驚かれた。
普通の宿の朝食はかたいパンに、チーズとミルクだけの所も少なくないとアンナさんが教えてくれたわ。
皆さん体を動かすことの多い人だし、よく食べる人達ばかりだからしっかりお肉付きじゃないとと勝手に思ってしまっていたけれども、朝からお肉付きって言うのもとっても喜ばれるらしいので、このままのスタイルでしばらくやって行きましょう。
朝食が終わってからキリスさんたちに今後の営業方針を相談させてもらった。
昨夜考えた事を伝えると、手伝える事は手伝うからすきにやってごらん。
と任されてしまったので責任重大だわ!
ひとまず今日はレガシィさんの所で大きめの黒板もどきを買って、本日のおすすめでも書いて置いておこうかしら。
あとは、ハーブ塩にケチャップ制作もしたいし、やることがたくさんだわ。
でも、咲百合ともなかなか遊べていないからサンドウィッチを作って安全なところでピクニックでもしようかしら。
そうね、今日は咲百合を優先でしばらく今の料理で作る私が不便を感じているだけだし焦らなくていいわね。
早速サンドウィッチと水筒を持って街の外に出てみる。
門が見えるところに草原がありこの辺りは滅多に魔物も出ない上、誰かしらが薬草採取や鍛錬でいるので危険度は低いと門番さんが教えてくれたので、行ってみることにした。
「うわぁ」
「きれいね」
教えてもらった草原にはシロツメクサに似た花が1面咲いておりとても綺麗だった。
「ままぁ、おはなとっていい?」
「えぇ、少しならいいわよ。お部屋に飾りましょう。」
「わーい」
見晴らしがよく、心地よいそよ風に吹かれながら嬉しそうに花を摘む咲百合を眺めていると、
「あれ?ユーコ?」
後ろから声をかけられ振り向くとアンナさんが5歳くらいの少年少女を連れていた。
「おねぇちゃん、早くはじめようよ」
後ろにいる子達が何かを待ちきれないようにアンナさんにせがむ。
「ゴメンゴメン、それじゃ始めよう!あっ、良かったらユーコもやってみるかい?」
「え?なにをするの?」
突然誘われたが何をするのかしら。
「前に魔法を使うことの無い田舎から出てきたって言ってたじゃん?コレからチビッ子に魔力操作をおしえるんだ。」
おお!定番の魔力操作ね。それはぜひともチャレンジしてみたいわ。
「お邪魔で無ければやってみたいわ。」
ちょうどそこに花を両手に持った咲百合が戻ってくる。
「ままぁ、たくさんとれたよ。」
「さーちゃん、ママはコレからアンナさんのお話を聞くからさーちゃんも聞いてみようね。」
「はーい」
咲百合を膝の上に座らせてアンナさんの講義を聞く。
「という訳で身体の中にある魔力をぐるぐる動かす練習から始めよう。」
よく物語で語られているように、血液循環のイメージで魔力も体内を巡っているらしいので、その魔力を自分の意思で動かす事から練習するみたい。
「うーんよくわかんない」
「まださーちゃんには難しかったかもしれないわね。ちょっとママが出来るかやってみるね。」
咲百合を膝の上に乗せたままイメージを膨らませる。
こう言うのはイメージが肝心なのは異世界のド定番のはずなので試してみて損は無いかしら。
「ちょ、ユーコ!」
咲百合を抱えたまま瞑想をするように集中していると何かが身体の中で巡る感覚を捕まえたような気がしたのにアンナさんに呼ばれて目を開ける。
「えっ、」
膝の上にいる咲百合がうっすら光っているように見える。
「さーちゃん?」
「ままのマネっ子!」
どうやら私がイメージしている雰囲気を肌で感じ取ったみたいで咲百合の身体の周りが魔力で覆われていたの。
「スゴ…この歳で、しかも一瞬でできるようになるなんて聞いた事がないよ。」
講師役のアンナさんもビックリの状態って事はコレも転移特典に含まれているのかしら?まじまじと咲百合を見ても分からないわね。
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「ちょっと…まさかあの子がこんなに素質あるなんて…」
由布子と咲百合母娘を転移させたサンクートはつい気になって2人の様子をよく覗いているのだが、まさか娘の咲百合にあんな才能が有るのに気づかなかったのは惜しいことをしたかもしれない。
「うーん、チートスキルもう少し違うのにすれば良かったぁぁぁ!」
嘆いてももう遅い1度転移させてしまったらスキルのアップデートは出来ても追加は出来ないのだし。
今のままでも充分偉業を成し遂げられるくらいの実力者になる可能性を秘めているのだから。
「ちょっと反則だけどアレをするかな。」
神様も全能では無いゆえ失敗も意外と有るのだけれども、今回の見落としはサンクートにとってもったいないと思える事だったりした。
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