4.1.16 天空の城(2)

――王国歴 302年 初夏 アニュゴン領 主都

――自治領館 屋根の上


 浮遊島についてベロニカに聞いたところ、この真上に停留していることを認めた。戦役後の主都への移動時に浮遊島を見つけ、自分たちの住処にしたそうだ。森に住まわせていた飛竜と翼鱗魔獣ガルーダを呼び寄せ、共に暮らしているらしい。


 デュリオンとの面会の前にまずは俺に浮遊島を案内したいと言われ、自治領館の屋根の上でベロニカと待ち合わせをしていた。


「ザエラ様、お待たせしました」


 目を開けると二人のベロニカが俺を覗き込んでいる。

 移住者の土埃は既に消えている……少し寝ていたらしい。


「時間厳守の君たちらしくない。どうして遅れた?」

「住処の掃除をしていました。念話が使えず、ご連絡が遅れました」


 二人は悪びれる様子もなく、俺の手を取り、‟擬態カモフラージュ”で姿を消していた飛竜‟青雲”へ乗せて飛び立つ。


「今日は、地上の些事など忘れ、天空の城にてお楽しみくだい」

眼下に小さく映る主都を見ているとベロニカが耳元で囁いた。


――天空の城(浮遊島)


 浮遊島は魔法で隠されていた。ベロニカの説明によると、空間に巨大な魔力袋を作り、魔力袋の表面を‟擬態カモフラージュ”させて、その中に浮遊島を丸ごと収めているらしい。隠蔽魔法陣ハイド・マジックサークルと同じ仕組みだが規模が違う。これほどの魔力がどこから供給されているのか不思議でならない。


 魔力袋を突き抜けると浮遊島が姿を現した。想像よりはるかに広い。森と草原が広がり、中央には大理石と金細工による城らしき建物が見える――まさに天空の城だ。


「空中に浮かんでいる島とは思えない。こんなに広大で城まで存在するとは……」

俺の驚いている様子を見ると二人のベロニカは嬉しそうな表情をする。


 上陸すると城の中へと俺を導く、そして王座が控える広間へと到着した。

 広間には魔法陣が描かれ、飛竜が周りを取り囲んでいた。


◇ ◇ ◇ ◇


 天井は半球型の硝子張りで光が降り注ぐ――見上げると空が近い。

 二人に促され、魔法陣の中心に円陣を組むように座る。

 大理石の床は温かく柔らかく感じた。


「お気に召されましたか?」

ベロニカはくつろいだ様子で俺に話しかける。


「そうだな、落ち着いた雰囲気で俺は好きだよ。ところで、この城には誰が住んでいたんだろう。何か手掛かりはないのか?」


 王国では見かけない意匠の建物だ。北のガルミット王国とも異なる。

 見慣れない建物の中でくつろぐ二人に違和感を感じた。


「……この島は竜の死骸です。竜の体内の魔力回路と魔石は死してなお活動を止めません。魔力回路から生成された魔力が魔石に刻まれた浮遊魔法を発動させることで、死骸が埋まる地面ごと空へ浮遊し、そこに住み着いた竜が世代を重ねることで島が大きくなるのです――この城は、私たちと同じ、いえ、幼体から変態した成体が眷族に命じて建築し、住んでいたと思います」


 巨大な浮遊島を包みこむ魔力袋と浮遊魔法を発動させている魔力が、浮遊島そのものから生成されているとは、にわかには信じがたい。竜の死骸が幾重にも積み重なる悠久の時を実感するにはまだ若すぎるようだ。


「魔力袋の表面には亜竜人ドラゴンニュートのみ見える浮遊島を描いています。この島を我らが竜の王都として整備するため、竜の眷族である彼らを呼び寄せているのです」


「王都……どこに王がいるのか? 君たちが王になるというのか?」


 ベロニカが何を考えているのか想像がつかない。

 俺の不思議そうな表情を見て二人は顔を見合わせ、声を揃えて答える。


「王は存在しますが、誰かはまだ分かりません。さあ、儀式を始めましょう」


 差し出されるがままに手をつなぎ輪を作る。

 三人の魔力が輪の中を循環し始めた。


◇ ◇ ◇ ◇


 波長変換を行わずにベロニカの魔力を受け入れ、俺の魔力を受け渡す。


『キン、キン、キン』


 魔力の循環が激しくなるにつれ、体内の魔石が共鳴して音を立てる。

 全身がベロニカの魔力に溺れているかのようだ。


 唇に何かが当たる――意識を外に向けると目の前には二人のベロニカが間近に映る。稲妻のような二本の角、刃を重ねたような翼、生体防具のように身に纏う鱗——彼女たちを改めて見る。


 歌を口ずさみながら飛竜たちと戯れていた少女は二年で成長した。切れ長の瞳は潤み、唇はふっくらと赤く色付く。互いに手を固く握り唇を交互に重ねる。


 意識が朦朧とするなか、唇と舌の交わる感覚が俺を興奮へと誘う。


 ——次に気が付くと魔法陣の中央に全裸で仰向けで寝ていた。太陽の光が眩しい。


 両脇にベロニカが覆いかぶさり、俺の身体をぎこちなく愛撫していた。

 首筋から乳首を通り俺の男根へ唇を這わしていく――なんだがくすぐったい。


「慣れていないのに無理しなくていい。体位を変えよう」


 二人の頭を撫でて起き上がろうとする俺を二人は押さえつける。


「私たちは竜の一族です。ザエラ様といえ、人族に組み敷かれる訳には参りません」


 竜族は自尊心の高い一族だ――人族に見降ろされるのは耐えれないということか。

 では、これならどうだ。俺は二人の身体を持ち上げ、回転させる。


「きゃっ、何をなさいますか?」


 二人の鱗で覆われたお尻が目の前に現れる。

 鱗のない秘所を優しく指でなでる――二人の息遣いが次第に荒くなる。

 

『ヌプリ』

指を割れ目に差し込むと気泡の弾ける音と共に蜂蜜のような愛液が指を伝う。

そのままかき混ぜながら舌で花弁を転がす。


「あぁ、うんん」

二人が声を押し殺し、身をよじる――下腹部の筋が細かく痙攣するの体に伝わる。

それと同時に魔法陣が強く輝き始めた。


「はぁ、はぁ、それでは私から交わらせていただきます」

片割れのベロニカが馬乗りになり、俺の怒張した男根を自らに迎えいれる。

俺の男根は閉じた襞を突き抜け、彼女の狭い膣を突き広げた。


 彼女は目を閉じてゆっくりと腰を前後に動かし始める。そして、俺に口付けをしながら腰を上下に振る。彼女の膣はきつく締まり、俺の男根から精を絞り出そうとするかのように脈動する――次第に快感が込み上げてくる。


「はぁ、あぁん、絶頂イカないで魔力を循環させてください」


 俺は男根から魔力を放出し、絡みあうベロニカの舌から魔力が俺へと流れ込む。ベロニカは俺の両手を強く握りしめ、腰を激しく振る――このままだと絶頂しそうだ。俺は彼女の膣へと流しこむ魔力の量を一気に上げる。


「あぁっ」

ベロニカは大きくのぞけると俺の胸に倒れ込む。そして全身が光に包まれる。


もう一人のベロニカが光に包まれた片割れを抱きかかえ、

「儀式は成功です。生体へと変態が始まりました」

と言いながら隣に寝かせる。


 周りにいる飛竜の鳴き声に気づき目を遣ると、‟茜”の上に‟青雲”が覆いかぶさり身体を激しく揺らしている。他の飛竜も相手を見つけ交尾をしている。


 激しい交尾に目を奪われていると、もう一人が俺に口付けをし、囁いた。

「あの子たちも発情したようですね……次は私とお願いします」

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