3.2.5 殉葬
――王国歴 300年 晩夏 ザルトビア街道
街道脇の木々は枯れ、むき出しの地面に直径十メルクの巨大な丸い球が至る所に転がる。近づいて見ると、数百体の兵士と軍馬の骨と装備が絡まり合いながら球体を形づくる。どの塊も同じ大きさで、骨は溶けて接着剤のように互いを結び付け、さながら芸術作品のようだ。
そして、街道の中央には長い鉄の杭が何本も地面に刺さり、死体が貼り付けにされている。全ての死体は黒く焦げ、焼けただれた顔は悶絶の表情を残す。炭化した指に軍属の指輪が赤く光る……ブルート少将のものだろう。
ザルトビア要塞を出発してから七日目。ついにブルード少将の偵察部隊を発見した。
◇ ◇ ◇ ◇
「古代の王が死ぬと従者や侍女を殉死させて葬る殉葬という風習を思い出したよ」
「この場合の古代の王は、グロスター伯爵家のベルナール公かしら?」
「そうなるね」
「彼があの世でも戦争が楽しめるように敵兵を殉葬したわけね」
「仇打ちだけではなく、弔いの意味が込められているように感じるね」
ザエラとサーシャは会話しながら貼り付けにされた遺体を調べる。すべての遺体には剣による切り傷が残る。切り傷の場所や深さから剣筋は同じようだ。
(敵は一人か、同じ剣筋を持つ複数か、前者とするとそれなりの実力者だな)
《彼らの魂から情報は取れないの?》
《残留する魂が見つからないな。死んでから日が経つので四散したようだ》
ザエラの戦場における経験では、個体差はあるが、死後二、三日もすれば、魂は遺体から離れて漂い始める。定期連絡が切れてから二週間以上が経過しているため、魂は既にここから離れたようだ。
「カロル、塊については何かわかった?」
ザエラは死体の塊を調べているカロルに近づいて声を掛けた。
「消化できない骨と装備が排便されたもの……つまり魔獣の糞です」
「糞!?こんなに大きい塊が?」
「五十メルク以上の巨大な魔獣だと思います」
カロルは真面目な顔をして答える。
(……危険な予感がする)
ザエラは胸騒ぎを感じ、すぐに撤退の指示を出した。
「ブルート少将の遺体の移送準備ができたら早々に立ち去ろう」
‟
(空?まさか……)
ザエラが空を見上げた瞬間――――
‟
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