白く丸い道を歩く
『 一周まわってまた会いましょう
そして彼女は長く続く道を指をさした
『 わたしはこっち
真っ白な道だった
浮き上がった道だった
僕は彼女を見た
『 あなたはそっち
彼女は反対を指さした
こちらも真っ白な道だった
「 この道は円を描いているの?
『 そう、丸く円を描いている
僕にはこの道はまっすぐにしか見えなかった
「 一周するのにどれくらい掛かんだろう
『 そうねえ
『 早ければ三日くらいかしら
「 遅ければ?
『 一週間くらい
それから僕らは円に見えない道を反対側に歩きはじめた
一日歩いても彼女と会わなかった
まったく円を描いているとは思えなかった
目安の三日を迎えた
彼女は現れなかった
一週間
彼女は現れなかった
一か月
一年
三年
何日歩いただろう
もう会えない気がしていた
でも僕は歩き続けた
彼女に会うために
それから何日歩いただろう
何年だったかもしれない
前から歩いてくる彼女が見えた
米粒のようにしか見えなかったが僕には分かった
確かに彼女だった
まっすぐに歩いてくる
こちらに歩いてくる
でも僕は彼女と出会うことはなかった
彼女ははじめから知っていたのでしょうか
この丸く描く道が
なだらかな螺旋スロープになっていることを
彼女は彼女の道をまっすぐ前を向いて歩いていた
僕が彼女を見つめていても
彼女は僕に気が付かなかった
だんだん彼女が上昇する
だんだん僕が下降する
彼女はまっすぐに見える道の上段を歩く
僕はまっすぐに見える道の下段を歩く
うしろ姿の彼女も真っ直ぐ前を向いていた
ふたりは円に見える
螺旋スロープを
反対方向に歩き続けた
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