第42話 41.去年今年平均台の上に居る
ワード41『平均台』だ。
『平均台』とは、一体なにが平均なのか? 僕はずっとそれが疑問だったのだが、コトバンクのデジタル大辞泉の解説によれば
『1 幅10センチの角材をある高さで水平に固定した器械運動用の器具。体操競技の場合は、高さ1.2メートル、長さ5メートル。
2 女子体操競技の種目の一。1の上で、からだの平均をとりながら跳躍・回転・舞踊的動きなどを行う。 』
とあった。
からだの平均をとりながら動く台、という意味で「平均台」というらしい。
公園に『平均台』はなかった。一本橋のような遊具はあったが、それを、「ブランコ」や「シーソ」というノリで、「平均台」と呼ぶことはなかったと記憶している。 『平均台』は「シーソー」と混同しがちである。僕には、どちらも「渡る物」だったから。シーソーは二人以上いないと、シーソーとしては遊べない遊具だった。そして公園に、一人では遊べない遊具はシーソーだけだった。回旋搭も、肋木も、上り棒も、ジャングルジムも、砂場も、鉄棒も、半分埋め込まれたタイヤも、みな一人で遊ぶことができた。だが、シーソーだけは一人では手が出なかった。だから足を出して、上を渡っていき、中央に右足と左足とを踏ん張って、ギタンバタンギタンバタン狂ったように左右の端を地面に叩きつけて渡った。
だが、今回のワードは『平均台』だ。二次元の運動を、落下の恐怖で制限する拷問器具のようなものだ。
そういえば、先ほどあげた遊具の中で、季語となっているのは「ブランコ」だけのようだ。
また、いつもお世話になっている
575筆まか勢 さんのHP(https://fudemaka57.exblog.jp/)
によれば、雲梯は二句、肋木は五句の掲載があった。
雲梯へつかみかかる手百千鳥 中田剛 珠樹以後
雲梯をのぼりて月の滝を見る 野見山朱鳥 運命
嬰児の目覚め白い肋木運河に反り 赤尾兜子 蛇
春暁の肋木の上を舶ゆけり 下村槐太 光背
肋木に垂る木工科生徒なり 渡邊白泉
肋木のあばらは薔薇の垣の上に 山口誓子
肋木の寒気にひかる辺かな 杉野一博
「ぶらんこ」は、大人がぎりぎり乗っていても可笑しくなく、それで何か想いを表すような感じがあるのだろう。鉄棒もヘンではないが、公園の鉄棒で大人が本気で逆上がりとかをしている図は、俳句になりずらい。
『平均台』ならばどうだろう。平均台は季語になりうるだろうか。
ということで、俳句だ。
アオミドロ平均台に絡みつく
秋風裡平均台は誰の墓
(秋風やひとさし指は誰の墓 寺山修司)
ふらこゝを平均台と呼びたまへ
薫風や平均台のムロツヨシ
鶏頭花平均台のさらし首
白桃や平均台に腐臭あり
サルビアの先は平均台の裏
茸狩り平均台を越えて往く
両端に蜻蛉のとまる平均台
干柿を吊るに足らずや平均台
木枯らしや平均台を運搬す
初雪や平均台に跳躍す
蒲公英や平均台を斜めにす
陽炎の平均台をあとずさる
自転車で平均台を渡る夏
爪先は落花を避けぬ平均台
蟷螂の足の広さの平均台
春塵は平均台に積もりけり
夕立を平均台でしのぎけり
鎌鼬銀座へ平均台残す
夕焼けや平均台は影ばかり
天の川平均台は橋である
そして表題句
去年今年平均台の上に居る
今回はこれで。
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