第39話 38.逃亡者オレンジページ愛読す
ワード38『愛読』
縛りとして、「愛読書」「愛読者」などは外すことにした。すると、『愛読』す、と、『愛読』せしは、『愛読』したる、の三通りくらいしか使い道がない。
しかも『愛読』というからには、著者名か、作品名をいわねば収まらない。そこに季語が入るわけだから、句の形は、
「季語」愛読せしは「名前」
「名前」愛読したる「季語」
「季語」愛読したる「名前」
「季語」「名前」『愛読』す
「名前」「季語」『愛読』す
くらいしかないのである。
さらに難しいのは、「愛読」ということになるとこれは、「習慣」「特徴」「ルーチン」ということになって、俳句における「今」にフォーカスすることができない。つまり「事件」につながらないワードなのである。
「読書」「読む」「読んでいる」のなら、今、この瞬間に読んでいるモノとの化学反応が期待できるのだが、「愛読」す。では、「この人はこの本を愛読している」という以上のことが言えないのだ。
ということで、意外な人が意外なものを愛読している。というミスマッチを狙うしかなくなってしまった。
ある本を愛読するにいたった経緯を、スパッと落とし込めたらかっこいいのだろうが、今の僕にはできなかった。
惨敗である。
では、惨敗の句をここに野晒しにしよう。
あだし野に一茶愛読せし仏(無季)
苗売りの織田作之助愛読す
親友の妻が夏書や愛読す
志賀直哉愛読すれば暮れ遅し
惜春や岡本かの子愛読す
マルコ伝愛読せしと渡り漁夫
鶯餅アンドレ・ジッド愛読す
啓蟄に見つけしブログ愛読す
アネモネの出てきし本を愛読す
この店の苗札なれば愛読す
愛読すメルロポンティー春の夢
啄木忌ひとの通帳愛読す(無季)
ふらこゝにフローベールを愛読す
冬の蠅挟まぬやうに愛読す
雑学集愛読したる木の葉髪
愛読すクロッカス匂ひ立つほどに
母一人子一人カフカ愛読す(無季)
団地妻カミュ愛読すこと五年(無季)
春昼の団地妻カミュ愛読す
そして、表題句
逃亡者オレンジページ愛読す(無季)
今回はこれで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます