第30話 29.早春の湾岸道路土こぼる

 ワード29『湾岸道路』には途方にくれた。

 いくつ作ってもまったくおもしろくない。

『湾岸道路』を中七に固定してやろうとしている。すると、「どんな湾岸道路」かを示す五文字と、季語の五文字、という構成になる。そこから、いくつ作っても、頭が固すぎて才能ナシの俳句ばかり。


 車列なき湾岸道路凍て返る

 寒明けの湾岸道路土零るゝ

(寒明けの崖のこぼせる土赤く 木下夕爾)

 初春へ湾岸道路合流す

 どこまでも湾岸道路余寒あり

 啓蟄や湾岸道路下りて事故

 永き日よ湾岸道路下りてなほ

 急峻な湾岸道路木の芽時

 夏近し湾岸道路復旧す

 夕凪の湾岸道路ブレーキ痕

 金鳳花湾岸道路マゾヒスト

 風光る湾岸道路慰霊の碑

 旧道の湾岸道路青嵐

 陽炎の湾岸道路分岐無し

 春の潮湾岸道路回り込む

 試験日の湾岸道路迂回せよ

 桜漬け湾岸道路爆走す

 春燈の湾岸道路浮き上がる

 冬銀河湾岸道路並走中

 冬霧や湾岸道路出口前

 雲の峰湾岸道路突き抜ける

 注連飾る湾岸道路料金所

 湯豆腐屋湾岸道路入口に

 涅槃西風湾岸道路マゾヒズム

 ありがたき湾岸道路鯨汁

 猟人ら湾岸道路大人しく

 砕氷船湾岸道路並走す

 JAF待ちの湾岸道路息白し

 冬紅葉湾岸道路吹かれゆく

 枯木立湾岸道路見届ける


ちなみに、検索するとでてくる『湾岸道路』の俳句


ぐいと反る湾岸道路夜涼の灯 高澤良一

梅雨どきの湾岸道路灯の連鎖 高澤良一

異国めく湾岸道路冬霞 塙きく

湾岸道路分岐繰り返して晩夏 山根真矢

鳥雲に湾岸道路運河越ゆ 上島顕司

冬凪の湾岸道路出来つゝあり 高濱年尾


 窮屈でなく自由にぐいとのびやかである。こういう風に景をとらえたいものだ。


表題句は


早春の湾岸道路土こぼる


今回はこれで。

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