第27話 26.星の砂蹠に夏の土下座かな

ワード26は『土下座』。

 ということで、第26話の表題句について。

 「蘇鉄」は季語ではない。したがって、あれは無季であったが、意図した無季句ではないため、たんに失敗句である。ここに『土下座』して謝意を表したい。

 というのにふさわしいワードであった。

 ところで、「蘇鉄」は私が俳句によみたいワードベスト10に入っており、その思いが強すぎてつい、季語と勘違いしていたのである。

 では、飯田蛇笏さんの蘇鉄の句を並べる。

聖祭に春の雪ふる蘇鉄苑

江の宿や蘇鉄の窓の葉月汐

白靴に朝焼けのして蘇鉄園

とくゆるく雪虫まひて蘇鉄寺

煖炉もえ蘇鉄のあをき卓に倦む


 閑話休題。

 今回は『土下座』だ。『土下座』はイージーだ。それだけに駄句、凡句が量産される。本当にいくらでもできる。ただし、ほとんどが『土下座』を茶化すような句になる。おそらく、そのような句は駄目なのだろう。だが、駄目は承知でも、作ったものは記していく主義である。


 霜柱脛でへし折る土下座かな 

 ソーダ水の気の抜けるほど土下座せし

 ソーダ水人数分の土下座かな

 雷や土下座の臍は護られて

 夕立を背中に受けて土下座中

 炎天下土下座をし合う男たち

 数々の土下座のありし夏惜しむ

 夜の秋土下座の声をおとしけり

 土下座せし額に触るゝクロッカス

 土下座済み上げたる顔に夏来る

 土用次郎土下座の前のうなぎかな

 風鈴は土下座の頭上六尺に

 ことしまた五月を病みて土下座かな

(ことしまた五月を病みてすこし老ゆ 山口波津女)

 梅雨あがり傘を畳みて土下座かな

 梅雨寒や一枚羽織る土下座かな

 土下座終えひっくりかえるシャボン玉

 半夏生土下座の上を怒号過ぐ


 のように、いくらでもできる。駄作量産ワードである。土下座が形骸化したということなのかもしれない。双方共、本気の土下座を、僕はたぶん経験したことがないような気がしている。


表題句は


星の砂蹠に夏の土下座かな


今回はこれで。

 

 

 

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