設定資料集Ⅷ 専門用語解説集

 ・銚子転移門の消失

 CTの大群が押し寄せる前に判明した事象のこと。これまで日本国内における転移門は釧路と銚子の二箇所だったが、そのうち銚子転移門が消失したことにより、本州においてこれ以上のCT増加は無くなった。一見喜ばしい出来事ではあるが、開戦以来CTは銚子転移門から流入し続けているため、北関東・東北にいると思われる推定残敵数のことを考えると素直に喜べない。なお転移門周辺たる銚子方面の残敵掃討はまだ終わっていない為、現地調査が可能になるのはしばらく先のことになると思われる。(2036/12/08現在)


 ・急造防衛ブロック

 CT大群との決戦時に置かれた防衛ブロックのこと。略称DB。綾瀬・小菅DB、新小岩DB、葛西DBの三つが置かれた。展開した兵力は増強一個連隊程度(陸軍・海兵隊で一個連隊、魔法軍が一個大隊から二個大隊程度)と敵の数を踏まえると非常に少ないが、陸軍は戦車大隊が各DBに一個ずつ配備されるなど、防衛区域に比して破格の戦力が配置された。また魔法軍も第一特務連隊と西方特殊大隊がそれぞれのDBに配置され、精鋭中の精鋭が配備された点を考えると決して少なすぎるという訳でもなかった。

 しかし、これらのDBは突出部もしくは最前線に設定された為にその分襲いかかるCTも多く、二三式マト弾の投下がなければDBは崩壊していたとされている。精鋭を持ってしても数の暴力を防ぎきるのは限界がある点を露呈させた作戦といえ、急場しのぎで仕方ないとはいえ、特殊部隊にかなりの無茶をさせた作戦ともいえる。

 なお、DBとはいうもののCTが襲来するまで一日も無かった為、急造の野戦陣地を構築するのが精一杯で、土属性魔法による防護癖構築と特殊部隊による超高火力などが無ければ早晩戦線は崩壊していた可能性が高かった。



 ・試製三六式三〇ミリ対物狙撃砲

 孝弘がCT大群との決戦時に使用した狙撃砲。元々は高魔力高火力の能力者向けに製造された銃砲で、フェアル使用者の携行兵装(魔力節約用兵装として)もしくは陸上において砲台役として使用することが想定されていたが、使用される機会があまりにも限定的な上、対人兵装としてはオーバーキルの口径である。また、フェアル使用者の携行兵装だったとしても取り回しが難しく重たい上に使える者が少ないことからお蔵入りになりかけていた。

 ところが、戦時となり情勢が変化したこと。大量の敵を一度に吹き飛ばすにはうってつけの武器であること。消費魔力が通常のフェアル使用者携行機関銃に比べれば多いもののAランク以上であれば誤差の範囲内であることから、孝弘が使用することになった。

 孝弘が使用したことで本兵器は真価を発揮。彼我の距離が四五〇〇〜五〇〇〇近くにも関わらず、次々と超大型CTを一撃キルしていった。

 装弾数は八発。CT大群との決戦時において急遽であるが中の弾薬を対CT弾に変更して使用した。

 なお、本作戦にて孝弘が使用し有効性を証明したことによりごく少数ではあるが生産が決定。Bプラスランクかつ銃器の扱いにある程度長けた者、という限られた対象にはなるが、戦車砲並の威力を期待されている。


 ・スタンピード

 本来の意味は『大挙して逃げ出したり押し寄せたりする、群衆などの突発的な行動』のこと。ファンタジー小説における意味としては『ダンジョンから魔物が大量に出現し、地上に溢れ出してくる』こと。本物語の作中においてはCTの大群の様子をスタンピードと比喩的な形で表現した。転移門から流入したウン十万のバケモノが迫ってくるのだから、決して間違っていない表現であるとは思う。


 ・クラスター爆弾

 容器となる大型の弾体の中に複数(数個から数百個)の子弾を搭載した爆弾のこと。クラスター弾や集束爆弾とも呼ばれている。作中世界においても現実世界と同様にクラスター爆弾の使用・製造・移動・備蓄の禁止条約が採択されたが、作中世界の日本はこれに参加していない。後年、不発率低下及び自爆機能を持ったクラスター爆弾を開発・配備、旧式のクラスター爆弾を廃棄したものの、やはり条約には加わっていない。

 これは作中世界における日本が現実世界の日本と違い普通の軍隊を持つ国であること。周辺が海に囲まれ守るべき範囲があまりにも広いことなどの安全保障の問題上、条約に加われば一部の防衛計画を見直しせざるを得なくなる。など、様々な理由がある。


 ・KIA

 軍人が戦争、戦闘、武力紛争などにより死亡することの略称。通常は戦争による民間人の死亡についてはこれに含まれない。


 ・WIA

 軍人が戦時に戦闘地域において戦闘中に負傷したが死亡はしていない状態を表す略称。戦傷。

 一時的あるいは永続的に武装して戦闘を続けることが不可能になったことも示しているとされている。


 ・空軍築城(ついき)基地

 現実世界における航空自衛隊築城基地のこと。作中世界における名称は『日本空軍築城基地』である。所在地は福岡県築上郡築上町。

 現実世界においての基地主力部隊の戦闘機はFー2A/Bだが、作中世界における基地主力部隊の戦闘機はF-3Aである。


 ・空軍小牧基地

 現実世界における航空自衛隊小牧基地のこと。所在地は愛知県小牧市。

 現実世界では県営名古屋空港が併設される軍民共用飛行場だが、作中世界では中部国際空港が史実より早期に開港し第二滑走路も運用開始されたことで軍用飛行場となった。

 現実世界の小牧基地は輸送航空隊や航空救難隊が配備されており、戦闘機部隊は配備されていない。作中世界においてもこれは共通であるが、戦時につき臨時で戦闘機部隊がやって来ることはある模様。



 ・二三式魔法科学型超高濃度魔力拡散反応弾(通称:二三式魔法特殊爆弾もしくは二三式マト弾)

 孝弘達や璃佳達が切り札と言っていた兵器のこと。平時においては抑止力でしかなく実戦で使用されることは無かったが、大量のCTを一撃で吹き飛ばす為にCT大群との決戦にて投入された。

 第二次世界大戦以後、抑止力といえば核爆弾であったが日本は核爆弾登場初期において技術的側面の困難さと、導入するとしても諸処の技術を米国に握られる為に国防の根幹を握られる事を嫌った軍と政府は威力が少々劣っていたとしても核爆弾に匹敵する兵器を開発しようとした。それが、魔法特殊爆弾。マト弾である。

 現在までに三代まで存在し、初代は七二式マト弾。二代目が九五式マト弾。三代目が、今回のCT大群との決戦で使用された二三式マト弾。

 本作戦にて投入された二三式マト弾はクラスター爆弾としても使用可能。その場合は一発ずつの威力が落ちるものの広範囲に超高威力を発揮することが出来る。

 単体(弾道ミサイル系として)威力としてのマト弾は戦術核程度。戦略核クラスの威力は今の技術では実現不可能とされている。


 ・フライエンザリアCT(FECT)

 二三式マト弾を投下して暫く経過し、もう勝てるだろうかと思われた時に出現した新種のCT。今回出現したのは計七体。

 従来のエンザリアCTは空を飛ぶことは無かったが、今回のエンザリアCTは元が天使であった名残を能力面においては強く残している。

 最大時速は約九五〇キロ前後とドラゴン並かそれ以上に速い。

 また他の能力も従来のエンザリアCTを凌駕している。攻撃力は五割高く、並の魔法能力者の魔法障壁は直撃すれば一発で貫通する。射程は約一〇〇〇〇とかなりの長さを持っている。リキャストタイムもかなり早い。

 防御力(魔法障壁硬度)はAランク並。

 と、今までのエンザリアCTと比較にならないほど厄介な相手である。

 第一特務や西特大の面々は普段なら余裕を持って戦えるレベルの相手なのだが、いかんせんCT大群との戦いで相当に消耗しておりかなりギリギリの戦いを強いられた。

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