Flower

七星奈星

第1話

柔らかくて鼻を通り抜けて心まで洗ってくれる花の香り


僕は今地元のお花屋さんに来ている。


僕は花に関して全くの門外漢であったから、

店員さんに詳細を話して相談した。


「………どうすればいいですかね?」


「まあ、花を贈られて喜ばない女性はいませんからね。お客様が心を込めて選んだお花であれば必ず喜んでくれると思いますよ。」


店員さんは泣いている子供をなだめるように腰を低くして僕の相談に答えてくれる。


「こんな花はどうですかね?」


「それは少し違うかなと思いますよ。お客様の場合その花はちょっとふさわしくないですね。」


僕の花に対する知識の不足にも優しく決して角を立てることなく接してくれる。


これはどう、これはどうと僕は気に入った花を見つけては店員さんに意見を求め

菊や蘭、百合のような葬儀に用いられるような花ばかりを選んでいたが、店員さんはそれでも優しくアドバイスをしてくれた。


そして僕は木製の棚の上に置いてあるオレンジの花に目を惹かれその花を見せて欲しいと店員さんに頼んだ。


今度も店員さんはその花を僕に持たせてみてくれて優しい笑顔を見せてくれた。


僕は一目惚れしたこの花を買おうとしたが店員さんはオレンジじゃなくて赤の方がいい、

と言って同じ形の赤い花を僕に持たせてくれた。


店員さんはその赤い花を優しく丁寧に包装してくれて代金も少しおまけしてくれた。


「気をつけて持って帰ってね。」


そう言って笑顔で手を振ってくれている店員さんを何度も振り返りながら僕はそのお花屋さんを後にした。


家には誰もいなかった。

僕はその赤い花を壁に立てかけて丁寧に保管した。


ガチャ…


玄関で扉が開く音がする。


その花を両手に持って玄関に走る。


「ママ!いつもありがとう。大好きだよ!」


ママは何度も何度もお礼を言ってくれた。


僕まで恥ずかしくなってきて僕はテレビに釘付けになっている振りをしながらママの様子を伺っていた。


だんだん僕がテレビに集中していった頃。

ママが涙を流しているのが見えた。


ママの手にはさっきママの帰りを待っている間に書いていた僕からの手紙を握っていた。


察するに僕の手紙がママを泣かせてしまったらしい。


「ママ、大丈夫?」


「うん…うん…うん…」


ママは大丈夫と言いながらも声を出せないでいた。


でもママの顔を見ると泣きながら笑っていた。7歳の僕でもこれだけはわかった。


心配する事じゃないな。

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Flower 七星奈星 @miyamotominesota

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