時の牢獄の、かすかな殺意

ブラジル、サンパウロ郊外の豪邸。


かつて、ネクストタイプ、時の守護者であった、キャサリン・オゼの所有物であった【時の牢獄】は、いまや【小川改=カイ】の掌中にあった。


豪邸の地下にあるその、真っ白な部屋。


白い闇に包まれたようなその部屋には、カイともうひとり、黒髪のロングヘアーの女子高生がいた。


フルオッグシードを、その子宮に宿した【森山純】である。


純は、魔剣フルオッグソードを床に突き刺し、何やら遠い目をして、カイと視線を合わせるようなことはしなかった。


「お兄様のパトス・・・。闇のパトスを感じる・・・」


カイはタバコに火をつけ、紫煙を時の牢獄に漂わせた。


「吉崎巧は、しばらくここに幽閉されていましたからね・・・」


純はカイを睨み据える。


「カイさん・・・。あなたはどこまで知っているの? 私の心の中には、かつてビスコム化したときのような、魔獣の心が再び芽生え始めている・・・」


「あなたはレインこと小林雪の魂も受け継いでいる。あなたの子宮に潜むフルオッグシードも、そのせいであなたを完全には支配できないようです」


カイは語り続ける。


「あなたの持つフルオッグシードはまさしく純正。能力者同士の性交渉によって生まれたハイブリッド。あのアレックス・ハートロッカーの持っていたような、まがい物とは桁違いだ」


刮目する純。


「純さん、知りませんでしたか? ビスコムを殺したものはビスコムになるように、能力者同士が性交渉したら、誕生した生命はフルオッグのものになるのですよ?」


紫煙を吐き続けるカイ。


「我が組織”KARASUMA”は、あの落ちこぼれのアレックス・ハートロッカーを、あえて泳がせていたのですよ。ヤツのフルオッグシードの出処を探るために」


「アレックスが・・・、落ちこぼれ!?」


「ヤツはもともと、KARASUMAの一員だったのです。金に目がくらんで、少々オイタをしましたがね」


「能力者同士の子供・・・。じゃあ、ジェイジェイちゃんは!?」


「ネクストタイプ同士の子供ですからね、そこまでは分かりません」


純は、魔剣フルオッグソードに手を伸ばした。


「私に理性があるうちに、この状況を打破しないと・・・」


タバコの灰を床に落とすカイ。


「少々使い勝手が悪いが、純さん。あなたには我がKARASUMAの幹部の座を用意します」


「幹部!?」


突然カイは、タバコを床に落とし、頭を手で押さえた。


「脳波通信・・・。世界のどこかで、能力者同士が性交渉をしている・・・」


純も眼を閉じ、能力者のかすかな波動を感じ取ろうとしていた。


「この波動は・・・!?」


カイと純は目を合わせ、言葉をユニゾンさせた。


【藤村岬と海津丈!?】


その頃確かに、サンパウロの地球の裏側、日本のとあるところで、藤村岬と海津丈は【セックス】をしていたのである。


立ち上がろうとする純を眼で制するカイ。


「そろそろ、チームBURSTの、本格的な崩壊の足音が聞こえてきましたね・・・」


高らかな笑い声を上げるカイに、森山純はかすかな殺意を覚えた。

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