これまでのプラトニックレイン(シーズン2)

その、細身の青年の手から繰り出された「風の手裏剣」は、漆黒の魔獣の首を跳ね飛ばした。


反動で前のめりになった青年は、草原に受け身を打って、次の魔獣を迎え撃つ。


広大な草原には、その青年を取り囲む、幾多もの漆黒の魔獣の姿が点在した。


全身から金色のオーラのようなものを放出させる、青年の息遣いは荒く、激しい。


青年は、漆黒の魔獣たちを睨み据えながらも、その心の内に逡巡を抱えていた。


自分と「あの乙女」が性交渉さえ経験すれば、月の裏側の「奴」が発動するという。


奴さえ発動すれば、「もともと人間だった」この漆黒の魔獣たちも、無駄に死ななくて済むはず。


だが、少なくとも自分は、初めての性交渉は「天国のあの娘」に捧げると決めたんだ、あの日に・・・。


飛びかかる漆黒の魔獣を避けるため、青年は下半身を「竜巻状の風」にして飛び上がる。


青年が放つ「風のエネルギー波」は、地上の漆黒の魔獣の身体に風穴を開ける。


地球の平和を護るために、童貞を捨てろというのか?


少なくとも、あの乙女と血液交換さえすれば、今の自分たちは「覚醒」しているはず。


行方不明となった「あのキザ男」さえ見つければ済む話ではないのか?


漆黒の魔獣たちは、変容して翼を生やし、草原の頭上にいる青年をめがけ羽ばたく。


青年は身体を高速回転させ「真空のかまいたち」状態となり、漆黒の魔獣たちへ滑空する。


かまいたちに触れた魔獣たちは、どす黒い血しぶきをあげ、瞬時に肉片と化してゆく。


そもそもあの「ネクストタイプ」って何なんだ?


奴らこそが地球の守護者だというのなら、自分たちは一体何なんだ?


そもそもなぜ自分たちが「能力者」として選ばれたんだ?


かまいたち状態を解除して草原に降り立った青年は、残った魔獣たちの数を目視する。


虎のような奴、ワニのような奴、蜘蛛のような奴・・・、残り数体。


額の汗をぬぐい、青年はより一層金色のオーラ、「パトス」を全身から放出させた。


【この苦しみや哀しみ、人ならざる者たち“同士”の闘いに終わりはあるのか!?】


青年はあえて目をつぶり、残り数体の「ビスコム」に対して、隙を作った。


漆黒の魔獣=ビスコムたちは、低いうなり声をあげながら、青年との間合いを詰める。

 

チームを抜け、あの乙女「森山純」と旅を始めてから、安息の時など訪れる事はなかった。


あのキザ男、純の兄である「吉崎巧」を捜す旅を続けて、もう2年以上になる。


3年前、一時的にせよ、自分たち「オールドタイプ6戦士」は覚醒したはずなんだ。


なぜ目覚めない、月の裏側に眠る「ジーザスエンド」よ?


なぜ弱まらないんだ、全ての諸悪の元凶「フルオッグ」の波動よ?


青年の内なる怒りに比例し、暴発したパトスは、周囲のビスコムたちを瞬時に蒸発させた。


眼を開いた青年は、荒い息遣いのまま、草原にばったりと倒れ込み、金色のパトスを消失させる。


その青年の名は「辻山憂歌」。


それ以上でもそれ以下でもない、ひとりの【戦士】に過ぎなかった。


その、ロングヘアーのセーラー服姿の乙女は、光のパトスの翼をはためかせながら、森林の上空を滑空していた。


森林では、巨大なゴリラのようなビスコム=漆黒の魔獣が、木々をなぎ倒しながら、乙女を追う。


乙女は、手にした「聖剣」から光のパトスを放ち、魔獣ビスコムの漆黒の肌を焼く。


お兄様・・・。


表向きは父親違いとしてはいるけど、あなたは正真正銘の私の実の兄・・・。


お金持ちに養子に迎えられた後も、孤児院に残された私を、片時も忘れず案じてくれていた・・・。


乙女は森林の上空から、聖剣を振りかざし、魔獣ビスコムの眼を焼くように、光のパトスを放つ。


ゴリラのようなビスコムは、眩しさに思わず、両手で顔を覆う。


17歳も年の離れたお兄様、あなたはまるで、父親のような「あしながおじさん」だった。


私が中流家庭に引き取られた後も、私を案じ、毎年クリスマスには気の利いた贈り物をしてくれたっけ。


私は知っている。


お兄様、あなたは単なるキザ男じゃない。


人一倍、愛を知っている、私だけのあしながおじさん・・・。


咆哮をとどろかせる漆黒の魔獣は、足元の木々を抜き取り、上空の乙女めがけて投げまくる。


時には避け、時には聖剣で切り裂き、乙女はその巨大な魔獣との距離を詰める。


「“シード”さえ貫けば・・・。シードさえ切り裂けば!!」


巨大魔獣に接近した乙女は、聖剣を振りかざし、一閃、巨大魔獣の右腕を光のパトスによって切り落とした。


どす黒い血しぶきをあげ、森林にのたうち回る巨大ビスコムは、眼から光線を発した。


光の翼をはためかせる乙女は、すばやく光線を避ける。


お兄様、あなたは今一体どこにいるの?


3年前、私はあなたを助けられなかった、ごめんなさい・・・。


今もこの世界のどこかにいるのなら、私は地の果てまでも貴方を捜します・・・。


森林にのたうち回る巨大ビスコムの胸部に「光る点」のようなものが見えた。


上空から、光の翼の乙女は「それ」を見逃さなかった。


「・・・!? シード!?」


乙女は、ビスコムの胸に光る「シード」めがけ、聖剣を構えて羽ばたき降りる。


が、それを阻まんと、残されたビスコムの左手が、乙女めがけて振り下ろされた。


光の翼をバリア状に展開した乙女は、最小限のダメージで、森林に叩き落された。


光のバリアの中で、乙女は、鼻から垂れた血を、左手で拭った。


その鼻血を永遠のような一瞬の中で、乙女は凝視した。


お兄様。


どうやら私は、憂歌さんと血液交換さえすれば、この光の属性に目覚めるようです。


この2年以上もの間、彼は私と共に、あなたを捜す旅に付き合ってくれました。


幾多のビスコムとの闘いの中でも、憂歌さんはいつも私に寄り添ってくれました。

 

【お兄様。あの人を愛してもいいですか・・・?】


やがて、七色の虹のパトスに包まれた乙女は、「光の速さ」でゴリラビスコムの胸部に突進した。


聖剣の切っ先は、ビスコムの胸部に光る「シード」を捉えており、シードはひび割れ、その胸部に溶解していった。


漆黒の魔獣、巨大ゴリラビスコムの断末魔、眼からのレーザービームが、森林の空に放たれ、ビスコムそのものも、漆黒のヘドロに溶解していった・・・。


乙女は、【性剣エクスカリバー】片手に光の翼をはためかせ。


ロングヘアーを風になびかせて。


セーラー服のスカートも風になびかせて。


漆黒の溶解物に覆われる森林を後にし、空を舞った。


乙女の視界には、彼方に草原が見え、その草原には金色のパトスの「暴発」が見えた。


「・・・!? 憂歌さん!?」


宮崎県高千穂の空を翔ける、七色の虹に包まれた乙女。


彼女の名は「森山純」。


オールドタイプ6戦士最強の戦士にして、うら若き「女神」であった。


宮崎県高千穂の空に、ビスコムの残留思念パトスが集まり始めていた。


草原にしゃがみ込む憂歌と純は、「BURST」のロゴが入っているタブレットを操作している。


吉崎巧が遺した遺産、ジーザスエンドのかすかな波動と、フルオッグのかすかな波動を検知するOSを、チームBURSTの島村美咲が形成し直した、GPSの役割を果たすアプリ、「PATHOS」。


このPATHOSを頼りに、憂歌と純は、恐山や京都など、日本のパワースポットを転々と移動し、巧の行方を捜していたのだ。


憂歌と純は立ち上がり、共に、地面に突き刺した性剣エクスカリバーを握った。


「今度こそ、吉崎さんが見つかりますように・・・」


「・・・。憂歌さん、お願いします」


性剣エクスカリバーに沁み込んだ、互いの血によって、憂歌は風の属性の能力者に、純は光の属性の能力者に覚醒する。


金色のパトスに輝く憂歌は、下半身を竜巻状の風にして飛翔する。


七色の虹のパトスに身を包んだ純は、性剣エクスカリバーを構え上げ、ビスコムの残留思念パトスめがけて振り下ろした。


性剣エクスカリバーの光のパトスは、ビスコム残留思念パトスを真っ二つに切り裂き、そこに「時空の裂け目」を生み出した。


時空の裂け目を目指して飛翔する憂歌。


【あの時空の裂け目の向こうに、もし、レインがいてくれたなら・・・】


憂歌の心に、決して口には出せない想いが、そこはかとなくあふれた。


光の翼をはためかせ、純もまた、憂歌に続き、時空の裂け目へ向かう。


宮崎県高千穂の空で、憂歌と純は「この世の果て」を見た・・・。


時空の裂け目の向こうには、無限の宇宙が広がっている。


幾多の星々と、それらが凝縮されて作られる、幾多の銀河。


こんなところに飛ばされた人間は、決して生きてはいないだろう。


「・・・。お兄様・・・」


「純ちゃん・・・。おそらく吉崎さんは、ここを“通過”したんだ・・・。だからPATHOSは、ここの座標を表示したのかも知れない・・・」


時空の裂け目は、激しく高千穂の空気を吸い込む。


危険を感じた憂歌は、純の両肩を支え、時空の裂け目を離れた。


ビスコムの残留思念が、まるで接着剤のような役割を果たし、時空の裂け目はぴったりと、傷口が閉じるように消えた。


憂歌と純は、草原に力なく着地する。


「でも、PATHOSは吉崎さんの波動を検知している、純ちゃん、君のお兄さんは生きているはずだ、この宇宙のどこかで・・・」


そんな憂歌の慰めも、落涙する純に対しては気休めにもならなかった。


「甲冑の残骸が宇宙を漂っているだけかも知れないわ・・・」


憂歌に背を向け、肩を震わせる純に、憂歌はかける言葉すら失っていた。


【俺は偽善者だ・・・。時空の裂け目の彼方に“レイン”の存在を求めてしまった・・・】


憂歌もまた、純に背を向けざるを得なかった、その時・・・。


ビスコムの死骸の山の中から、片腕を失くした男が姿を現した。


「な、何だ・・・。俺は一体どうしちまったんだ・・・!?」


男のいる方向に向き直った憂歌と純は、言葉をユニゾンさせた。


「・・・!? ハーフビスコム!?」


憂歌は男に駆け寄り、膝をついた。


「いいか? 君の片腕は復元される。君がシードを持っている限り。ただ、腕が修復されても、もう二度とビスコムにならないと約束して欲しい。君には人間として生きて欲しいんだ」


男は立ち上がり、うんうんと頷きながら、よたよたと歩き始めた。


立ち上がる憂歌のそばに、そっと純が寄り添った。


「またハーフビスコム・・・。意外と割合が多いですね・・・」


「人間の心を残したビスコムだ、出来れば人間として生きて欲しい・・・」


ハンカチで涙をぬぐう純の横顔に、憂歌はレインの面影を見ていた。


(似ている・・・。レインに・・・。面影からその精神性まで・・・)


自殺したかつての恋人の面影を、年端も行かない女子高生に見るなんて・・・。


憂歌は自分を嫌悪したが、その想いはこの2年以上の二人旅の中で、日に日に強くなる想いだった。


憂歌と純が見送る、片腕を失くした男は、しばらく歩いた後、首と胴が離れて死んだ。


あまりのとっさの出来事に、憂歌と純は叫び声さえ失っていた。


手刀でハーフビスコムの男の首を狩ったのは、眩いブルーのBURSTスーツの存在だった。


そのブルーのBURSTスーツはナノ粒子拡散され、装着者の左腕の腕時計に収納された。


「よう! 淫行未遂カップル! またてめーらか!?」


くちゃくちゃとガムを噛む、金髪リーゼントのアラフォー男がそこにはいた。


その武骨な男の名前は「緒島剛」。


チームBURSTの実質的統括者にして、N.A.B.R.S(ナーバス)に所属するアジアの守護者、ネクストタイプのひとりだった。


緒島剛は、ガムをくちゃくちゃさせながら、ビスコムの死体を踏みつけにして、憂歌と純に歩み寄ってきた。


「雷(いかづち)の属性、瞬間移動を武器にするこの俺には、アジアの守護なんて庭いじり程度だがな・・・。てめぇらガキのお遊びのせいで、ハーフビスコムを取り逃がしちまうのは困ったもんだ・・・」


緒島に気圧される憂歌と純は、思わず身構えた。


「吉崎なんて野郎、どうせ見つからねぇよ。今頃どこかでくたばってるんじゃねぇか?」


純の表情が一変する直前に、憂歌は思わず緒島の胸ぐらを掴もうとした、が、憂歌の手は空ぶった。


緒島は瞬間移動し、純の背後に立ち、純の胸を背後から揉みしだいた。


「何だ? 着やせするんだな。そこそこあるじゃねぇか?」


「・・・!? やめて! 痴漢! 変態!!」


緒島から逃げた純は、憂歌の腕を掴み、緒島を睨んだ。

 

「そもそもてめーらがカマトトぶるから、月のジーザスエンドも発動しねぇんじゃねぇかよ? 違うか?」


憂歌の背後に瞬間移動した緒島は、憂歌を思いっきり突き飛ばした。


草原に突っ伏す憂歌は、これ以上怒りを抑えきれないと感じていた。


純に支えられながら、憂歌は立ち上がり、緒島を睨みつけた。


「ならあなたたちは何なんです? ネクストタイプがそろって覚醒していても、月のジーザスエンドに影響はないじゃないですか?」


腹部に緒島の蹴りが入り、再び憂歌は草原にうずくまった。


「俺たちは各大陸の守護者として、人類の役に立ってるよ! 役立たずはジーザスエンドすらまともに発動させられねぇ、てめーらと吉崎じゃねぇか!?」


立ち上がろうとした憂歌は、顔面に緒島のパンチを受け、草原に跳ね飛ばされた。


「やめて下さい・・・。本気ですよ・・・」


憂歌の横へ回った純は、性剣エクスカリバーの切っ先を緒島に向けていた。


そんな純の必死な表情に、緒島は腹を抱えて笑い出した。


「カマトト嬢ちゃん。確かにあんたはオールドタイプ最強だ。だがなぁ、それならそれで、俺にも考えがあるぜ・・・」


左手の腕時計を構える緒島は、「バースト!!」と力強く叫んだ。


腕時計からナノ粒子が瞬時に拡散され、緒島は一瞬にして、ブルーのBURSTスーツを装着した。


「かかって来いよ役立たずどもが? 風の属性も、光の属性も、戦闘データは全部、この緒島剛専用BURSTスーツが記憶しているぜ?」


憂歌が金色のパトスに包まれ、また、純も七色の虹のパトスに包まれた。


その時、緒島の強面に似ても似つかない、夢の国のテーマソングが流れた。


緒島のBURSTスーツが、本部からの通信を着信したのだ。


「はい緒島・・・。おう、島村か? 今度は香港!? よし、今すぐ瞬間移動で飛ぶ! あぁ後、たまには龍樹のナニでもしゃぶってやれよ? 俺のナニをしゃぶるついでにな!!」


頭部のみナノBURSTスーツを解除した緒島は、自分を睨む憂歌と純に微笑んだ。


「命拾いしたな、お前ら。俺は仕事だ。香港でビスコムが増殖中だとよ?」


憂歌と純は、パトスを収束させた。


「プロジェクトナーバスが早く軌道に乗ってもらわないと、俺も遊ぶ暇がねーわ。わはははは!!」


緒島は音ひとつ立てずに「消えた」。


緒島が視界から消えた安堵で、憂歌と純は力なくその場にしゃがみ込んだ。


「・・・嫌な人。岬さんや丈さんがチームを離脱するのも分かるわ。最低の上司・・・」


「純ちゃん。近くで宿を取ろう。岬さんからの情報が欲しい・・・」


「何の情報ですか?」


「プロジェクトナーバスって奴さ。岬さんなら龍樹や島村さんと内通しているはずだ」


憂歌の口からは血が流れ、それを純はそっとハンカチで拭いた。


高千穂の空に夕焼けが映えた。


その黄金色の空は美しすぎて、憂歌と純をより一層複雑な気持ちにさせた。


【ビデオ通話開始】


「ちょ、ちょっと岬さん!? 服ぐらい着て下さいよ! 目のやり場に困るじゃないですか!?」


「細かい事言いなさんな・・・。私は家の中では裸族なんだよ・・・」


「憂歌さん、鼻の下が伸びてますよ・・・」


「(咳払い)。岬さん、プロジェクトナーバスって何か、龍樹や島村さんから情報を得ていませんか?」


「(缶ビールのプルタブを開ける音)。島村さんには聞けないよ。私はね、PATHOSっていうアプリにわざと不具合を起こしているのはあの人じゃないかって睨んでいるんだ・・・」


「島村さんを疑うんですか? じゃあ龍樹は?」


「(ゴクゴク・・・)。龍樹は島村さんの言いなりだからね。だんまりを決め込んでいるよ」


「憂歌さん! タブレットの画面を見つめるの、やめて下さい! そんなに岬さんのおっぱいがいいんですか!?」


「そんなんじゃないよ!? じゃあ、プロジェクトナーバスについては、岬さんは何も知らないんですか?」


「(ゲップ)。下請けのホワイトハッカーにいろいろ調べてもらってるんだけどね」


【息を飲む憂歌と純】


「AIを搭載した対ビスコム用アンドロイド、“バーガリー”っていう人型兵器が、もうヨーロッパや北アメリカ、南アメリカ、アフリカに順次配備されているらしいんだ。アンドロイドなら、ビスコムを駆逐してもビスコムが増殖する事はないからね」


「オーストラリアやアジアは?」


「(タバコに火をつける音)。まぁこれからだろうね・・・。ただ、肝心な事が分かったんだよ・・・」


「何ですか?」


「この対ビスコム用アンドロイドを量産している、アメリカの軍需産業、バーガリーインダストリアルの筆頭株主が、あのアレックス・ハートロッカー博士なんだ。それだけじゃない。バーガリーインダストリアルの経営陣には、N.A.B.R.S首魁、ジーン・ハートロッカー教授が名前を連ねている・・・」


「そ、それじゃぁ、N.A.B.R.Sは、ビスコムが増えれば増えるほど儲かるじゃないですか!?」


「(紫煙を吐く音)。パパや緒島がどこまで知っているか分からないけどね。N.A.B.R.Sの上層部にとっては、吉崎巧が見つからない事や、ジーザスエンドが発動しない事が、金儲けのための必須条件なのさ・・・」


「お兄様が見つからない事が・・・!?」


「そのからくりに島村さんが一枚噛んでいるっていうんですか、岬さん!?」


「憂歌、純ちゃん。一旦東京に戻りな。私の嫌な予感なんだけど、ひょっとしたら吉崎は、ネクストタイプ6戦士のいずれかに“幽閉”されている可能性だってあるよ。ハーフビスコムの人権さえ踏みにじる、緒島と対峙する必要はあるけどね。私もパパが気になる・・・」


「純ちゃん、吉崎さんのクレジットカードを使って、東京に戻ろう!」


「それは私の眼を見て言って下さい、岬さんのおっぱいじゃなく・・・」


「(ガラスの割れる音)。何だ!?」


「岬さん! その床に飛び込んだ奴、映画やテレビでよく見る・・・」


「・・・。手榴弾!?」


「しまった! 盗聴されたんだ!?」


【爆発音】


【ビデオ通話終了】


宮崎県高千穂のとある民宿の部屋で、憂歌と純は慌てて旅支度をしていた。


岬さんが何者かに襲われた。


N.A.B.R.Sの実情を調査し過ぎたんだ。


犯人は一体誰なんだ?


性剣エクスカリバーで風と光の属性を覚醒させて、能力で東京を目指すしかない。


悠長に宮崎空港から飛行機になど乗っていられない。


性剣エクスカリバーを納めたギターケースを背負いながら、純は言った。


「海津さんの連絡先は分からないんですか?」


黒のMA-1を着込みながら憂歌は語る。


「あの人はスマホを持っていないんだ、何しろ自由人だからね・・・」


民宿の女将さんが階段を昇ってきて、憂歌と純の部屋を覗いた。


「こんな夜遅くにどうするんです? 市内からタクシーを呼んでも、飛行機なんか飛んでやしませんよ?」


まさか“能力”で飛行するなんて言えやしない。


憂歌と純は言葉に詰まった。


その時、女将さんの足元から、小学校中学年くらいの、ハーフの女の子が顔を出した。


金髪のブロンド、青い瞳は憂歌と純を凝視していた。


「ジェイちゃん! お家に帰りなさいって言ったでしょう!?」


ジェイと呼ばれたその女の子は、憂歌と純の部屋に入って、ちょこんと正座した。


「お兄さん、お姉さん、すみません、お願いがあるんです・・・」


 憂歌はジェイと呼ばれた子の瞳を見つめた。


(この子は何か、切羽詰まった想いを抱いている・・・)


 憂歌が純に向き直ると、純はゆっくりと頷いた。


「女将さん、すみませんが、この子と3人だけにしてもらえませんか?」


旅支度の整った憂歌と純は、ジェイと呼ばれた子の前に座っていた。


「すまないが僕たちは急ごうとしている。でも、こうして君の話を聴こうとしているのは、君の瞳から、ただならぬ何かを感じているからなんだ」


「私の名前は的場ジェイジェイ。小学4年生です。あなたたちの戦いは見ていました」


憂歌と純は互いの顔を見合わせた。


「私には、育ての親というべき、血の繋がらない兄がいました。お兄さん、あなたが命を助けてくれた、片腕を失った男です・・・」


「あの・・・! 緒島に殺された・・・!?」


ジェイジェイは、憂歌と純に向かって土下座した。


「たったひとりの、親代わりの兄を殺した、あの髪を染めたおじさんが憎い・・・。どうか私に、兄の仇を討たせて下さい!!」


憂歌と純は、ジェイジェイにかける言葉さえ失っていた。


(緒島に殺された、あのハーフビスコムの妹!? 歳の割にはしっかりしている・・・)


純はそっと、憂歌の膝に手を添えた。


「憂歌さん。兄を想うこの子の気持ちは、私には分かるような気がします・・・」


「いやしかし、仇討ちだなんて!? あの雷の守護者に、こんな小学生が敵う訳ないじゃないか?」


頭をあげたジェイジェイは、深く息をついた。


「・・・。実は私も兄のように、化物になれるんです・・・」


「何だって!? それじゃ君も、ハーフビスコムだというのか!?」


「・・・。私たちは、ハーフビスコムを差別しません。ただ、ハーフビスコムの能力の発現は推奨していないのよ・・・」


ジェイジェイは、真剣なまなざしで、憂歌と純を交互に見た。


その青い瞳は、青い空や青い海さえも内包しているかのように、深く潤んでいた。


「私なら、朝までにお兄さんとお姉さんを東京まで運べます・・・」


初冬の高千穂の草原は、満天の星空に包まれ、肌寒い風が吹いていた。


あの民宿を抜け出して、憂歌と純、そしてジェイジェイは草原に立ちつくしていた。


ジェイジェイは、深く瞑った眼を見開き、その眼を真っ赤に染めた。


「お兄さん、お姉さん、タイミングを見計らって、私に飛び乗って下さい・・・」


ジェイジェイの胸に“シード”が赤く光り、その身体は徐々に巨大化、漆黒の超巨大ドラゴンに変化していった。


カバンを持った憂歌と、ギターケースを背負った純は、ビスコム化するジェイジェイに飛び乗った。


憂歌と純を背に乗せた、ハーフビスコム=ジェイジェイドラゴンは、翼をはためかせ、高千穂の空に舞い上がった。


「岬さん、無事でいてくれ。丈さんも龍樹も。今こそ俺たちが立ち上がる時だ・・・!!」


月明かりに照らされる憂歌の横顔を見つめながら、純はそっと、巨大ドラゴンジェイジェイの背を撫でた。


(兄と妹・・・、か・・・)


超巨大ドラゴンビスコム=ジェイジェイは、憂歌と純を背に乗せ、一路、東へ向かった・・・。


夜の錦糸町の路地裏を歩く、青いライダーススーツに身を包んだ緒島剛は、通りかかった野良猫を思いきり蹴飛ばした。


その行方にさえ興味のない緒島は、味を失ったニコチンガムを吐き捨て、外国産の缶ビールをあおる。


俺はチームBURSTのトップだぞ、東京、日本はおろか、アジア全圏の守護者だぞ。


その俺を差し置いて「組織の下部の奴らが好き勝手に動いてやがる」。


藤村岬や海津丈だって、いつかは説き伏せて、チームに再招集する予定だったんだ。


行方不明の吉崎巧はともかく、あの「処女&童貞」の淫行未遂カップルだって、オールドタイプ6戦士の中のキーパーソンだ。


全てのオールドタイプを支配して、月のジーザスエンドだって意のままにする。


そのために今は「ネクストタイプ四天王”最弱の男”」の座にも甘んじているんだ。


緒島は残ったビールごと、缶を道に叩きつけた。


カランカラン、と缶がマヌケな音を立て、すれ違った風俗嬢らしきケバい女が緒島を睨んだ。


藤村省吾が動いているとは考えにくい。


島村美咲か?


誰が藤村岬を「殺らせたんだ!?」


誰が海津丈や名護龍樹を「殺ろうとしているんだ!?」


「ジーン・ハートロッカーのクソ野郎!!!!!」


飢えた野獣、緒島は道に停まっている白いプリウスに蹴りを入れまくった。


N.A.B.R.S上層部も、あの「四天王の他の3戦士」も俺をコケにしやがって!!


”バーガリー”がすでにオーストラリア大陸にも、ユーラシア大陸にも配備済み?


「ビスコムを狩る」喜びから「卒業」しろというのか?


汚いスナックから現れた、プリウスの持ち主らしきハゲ親父が緒島に怒鳴るが、緒島はそんな言葉には興味はない。

 

「テレポーテーション」で緒島は、電柱ふたつ分離れた場所に移動した。


プリウスのハゲ親父は、辺りを見回し、キョトンとしている。


てめーがハーフビスコムだったら、楽に死なせてやるのによ!?


緒島は踵を返し、再び路地裏に入る。


酔いが周らない、激しい怒りのせいで、酔いが周らない。


島村がチームBURST諜報部に手をまわし、オールドタイプ狩りを始めたのか?


今夜のうちには、海津も名護も「狩られる」だろう・・・。


今すぐ藤村省吾の居場所に瞬間移動して、全てを聞き出すか・・・?


北アメリカ大陸の守護者、魂の属性を持つ「謎の女”1号”」。


オーストラリア大陸の守護者、心の属性を持つ「謎の女”2号”」。


ネクストタイプ6戦士は、それ以外の4名にて「四天王」と呼ばれる。


ヨーロッパ大陸を守護する、無の属性のジーン・ハートロッカー。


アフリカ大陸を守護する、力の属性の黒人男性、ブルース・マウンテン。


南アメリカ大陸を守護する、時の属性の日系ブラジル人女性、キャサリン・オゼ。


ビスコム退治はバーガリーに任せて、好き勝手暮らしてやがる。


この3年間、眠りについている間、俺がヨーロッパまで守護してやっていたというのによ、ジーンの野郎!?


もうビスコムでも、ハーフビスコムでもいい、普通の人間でも「狩らせろ」。


【狩るのは俺ひとりでいい! ただし”使える手駒”まで狩るんじゃねぇ!!!】


オールドタイプやジーザスエンドを手中にし、邪魔なN.A.B.R.S上層部や「ネクストタイプ3巨頭」を排除し、「俺だけの”狩る”世界」を手に入れたい。


「吉崎巧ぃぃぃぃぃ!! 俺の手はお前より”汚れたパトス”に染まっているんだぁぁぁぁぁ!! 闇から姿を現し、俺に手を貸せぇぇぇぇぇ!!」


汚い居酒屋の扉が開き、バケツを持ったババァが緒島を睨んだ。


「うるさいよ! 酔っ払い!!」


緒島はまたもや「瞬間移動」で、バケツから放たれた水を避けた。


緒島剛は、関東平野「上空」にテレポーテーションしていた。


「・・・! バースト!!」


眩い「夜空」のような関東平野に落下しながら、緒島はナノ粒子化したBURSTスーツを装着した。

 

緒島は関東平野のはるか上空に留まった。


「島村美咲に通信しろ・・・」


緒島はBURSTスーツの通話機能を作動させた。


【ただ今電話に出る事ができません・・・】


BURSTスーツのメット部内部モニターが起動し、関東平野の”あるところ”がロックオンされた。


緒島は「青き流星」となって、関東平野上空をトップスピードで飛行した。


「どいつもこいつも”ぶっ殺してやる”!!!!!!!!!!」


金色に光る眼をした藤村省吾と島村美咲の乗る黒いハイエースは、海津丈の自宅近くに待機していた。


チームBURST特殊部隊が、武装して海津の自宅を包囲している。


海津の自宅マンションでは、海津、名護龍樹、ソープ嬢みゆきの3人が、鍋を囲んで談笑していた。


「こいつ、片想いしてる相手に冷たくされてなぁ、可哀想やからお前に相手してもらったんや。ありがとうな、みゆき」


「うん。結構気持ちよかったよ」


「それにしても、お前のイチモツがあんなにデカかったとはなぁ? 負けたわ」


名護龍樹は、缶チューハイを一気飲みした。


「海津さん、みゆきさん、ありがとうございます・・・」


一瞬、ソープ嬢みゆきの瞳も、金色に光った。


誰もいない公園の砂場に、全裸の藤村岬は突っ伏していた。


消防車のサイレンがけたたましく響いている。


「誰かが・・・、チームBURSTを・・・、内部から壊そうとしている・・・」


藤村岬は、火の属性の能力を発現させ、ゆっくりと立ち上がった。


BURSTスーツを身にまとった緒島剛は、埠頭の空き倉庫に転がっている、島村美咲のスマホを、足でたたき割った。


「奴ら、海津の自宅か・・・。チームBURSTを崩壊させようとしている黒幕は、一体誰なんだ!?」


ハーフビスコムにして、超巨大ドラゴンビスコムでもある、小学4年生の女の子、的場ジェイジェイの背に乗る辻山憂歌と森山純は、視界に大阪の夜景の輝きを捉えていた。


「憂歌さん・・・。何か胸騒ぎがしませんか?」


「確かに・・・。ジェイジェイ、すまないが急いでくれないか?」


ジェイジェイは翼を大きくはためかせた。


【のちに語られる”東京事変”が起こる、この時間、地球の裏側では・・・】


ブラジル、サンパウロ郊外の豪邸で、ジーン・ハートロッカーはスーツの上着を脱いでいた。


「蒸し暑いかい、ジーン?」


ホットパンツにTシャツ姿のキャサリン・オゼが、ジーンの元へワインを運んできた。


「”奴”を拘束して、もう2年以上になるかな?」


「時の牢獄に拘束してあるから、奴の体感じゃ2時間程度にしか感じていないだろうけどね?」


「ブルースはまた、奴で遊んでいるのか?」


「遊びがいのある相手なのさ・・・」


ワインを舌の上で転がしたジーンは、豪邸から見える、サンパウロの街並みを眺めた。


(奴は一体、時空の彼方で一体”何”を見たのか・・・)


だだっ広い白い部屋、「時の牢獄」に入った、ジーンとキャサリンは、サイコキネシスを操るブルースに「おもちゃ」にされている”奴”を見た。


ボロボロの黒いスーツをまとった【吉崎巧】を。


「ブルース、もうよせ」


「そいつにはまだ利用価値があるよ、殺しちまったらどうするんだい?」


屈強な肉体をした黒人男性、ブルース・マウンテンは、ジーンとキャサリンに振り返らずに言った。


「確かに”俺”には存在意義があるかも知れないなぁ・・・」


時の牢獄に響くサイコキネシスの波動が止むと、おもちゃにされていた【ブルース・マウンテン】が、床に叩きつけられた。


ジーンとキャサリンに振り返ったのは【吉崎巧】だった。


「この程度でアフリカの守護者か? 笑わせる・・・」


顔面蒼白になったジーンは叫んだ。


「キャサリン! 時を止めろ!」


吉崎巧は、一瞬フリーズしたが、すぐにまばたきし、キャサリンに微笑んだ。


「時空の彼方で、フルオッグの正体や、ジーザスエンドの真意に触れた俺に、そんな小手先の技は通用しない・・・」


吉崎巧は、拳をキャサリンの鳩尾に叩き込んだ。


床に崩れ落ちるキャサリン。


ジーンは右手の指を鳴らした。


吉崎巧は【消えた】。


「私に無の属性の力を使わせるとは・・・。吉崎の存在そのものを消してしまった・・・」


ジーンの背後に”闇のパトス”が生まれ、そこから現れた吉崎は、ジーンの首筋に手刀を見舞った。


崩れ落ちるジーン。


「私はもともと”無の存在”だ。消そうとして消せるものではない!!」


吉崎は、ボロボロのスーツを脱ぎ捨て、代わりにブルースの高級なブランドものの上着を羽織った。


時の牢獄にうずくまる、ブルースとキャサリンとジーンを見下して、吉崎は不敵な笑みを浮かべた。


「ネクストタイプ3巨頭・・・。アレックス・ハートロッカーが生み出した、出来損ないの強化人間どもが・・・。私は時空の彼方で、貴様らが逢ったこともない、魂の守護者とも対面済みだ! 後は、東京で何やらやらかそうとしている、心の守護者を叩き潰すのみ!!」


ブルースとキャサリンとジーンを一瞥して、吉崎は闇のパトスに包まれ、時の牢獄を後にした。


憂歌と純を乗せ、超巨大ドラゴンとなって空を飛ぶジェイジェイの前に、吉崎巧が空に浮かび、立ちはだかった。


「辻山! 純! 今すぐ性剣エクスカリバーで覚醒しろ! ジーザスエンドを発動させるんだ!」


吉崎を邪悪なものと判断したジェイジェイは、吉崎を攻撃する。


その背から振り落とされた憂歌と純は、名古屋へ向けて落下する。


それを助けたのは、瞬間移動してきた緒島剛だった。


脳波通信で、時の牢獄の惨劇を聴いた緒島は、ネクストタイプとして生きるより、吉崎らオールドタイプに属する方が生き残りやすいと判断したのだ。


憂歌と純を名古屋市街に着地させる緒島。


吉崎と戦うジェイジェイは、自分の育ての兄の仇、緒島を見つけ激高、緒島に襲いかかる。


炎を吐くジェイジェイと、ナノBURSTスーツで応戦する緒島とで、名古屋市街は火の海となる。


吉崎と合流し、性剣エクスカリバーで覚醒しようとした憂歌と純だったが、時空の狭間から現れた「魂の守護者」がそれを阻む。


「レイン・・・!? レインじゃないか!?」


魂の守護者の正体は、憂歌のプラトニックな恋人、すでに死んだはずのレイン=小林雪だった。


純の、憂歌への淡い想いに嫉妬したレインは、性剣エクスカリバーを時空の彼方へ持っていこうとする。


それを阻止しようとする吉崎は、レインを追って、時空の彼方に消えた。


ジェイジェイと緒島によって、名古屋は惨劇の街となる。


性剣エクスカリバーを失った、そして、プラトニックな恋人レインが生きていて、魂の守護者となっていたことに、憂歌は絶望していた。


ジーンとキャサリン、ブルースら「ネクストタイプ3巨頭」は、サンパウロとジーザスエンドのキールームの距離を「無」にし、ジーザスエンドにたどり着いていた。


そこに現れたのは、性剣エクスカリバーを持ったレインと、吉崎巧だった。


レインは驚愕した。


ジーンこそ、中学3年生の時に自分をレイプし、子供を産ませ、のちに社会人時代にも自分に関係を迫った「仇敵」だったのだ。


と、同時にレインは、あの名古屋で暴れていた巨大ドラコンビスコムこそが、自分とジーンの間に生まれた子だと気づいた。


レインは、性剣エクスカリバーを吉崎巧に託し、踵を返して名古屋に向かった。


甲冑の騎士、ダークナイトとなった吉崎は、3巨頭に立ちはだかる。


しかし、ジーンには勝利の確信があった。


自身の合図ひとつで、地球上に配備されている全てのバーガリーが「無差別殺人兵器に」シフトすること、プロジェクトナーバスの真実の姿を吉崎に突きつける。


ブルースは、サイコキネシス念動波で、ジーザスエンドそのものを破壊すると、吉崎に告げる。


全人類とジーザスエンド、二重に人質を取られた吉崎は、ジーンの軍門に下る。


「裏切者、緒島剛の首を差し出せ・・・」


甲冑の騎士、ダークナイト吉崎はジーンに逆らえず、闇のパトスに消えた。


ネクストタイプ3巨頭の高笑いが、月の裏側に響いた・・・。


名古屋に降り立ったレインは、超巨大ドラゴンビスコム、自身の娘であるジェイジェイと「同化」する。


ジェイジェイのシードは破壊され、レインとジェイジェイはひとつの生命体となった。


炎上する名古屋市街に横たわる、小学4年生の「母と娘がひとつになった」女。


安堵する緒島だったが、その緒島をダークナイト吉崎が襲った。


全人類とジーザスエンドを人質に取られた吉崎は、ナノBURSTスーツに身を包んだ緒島を追う。


緒島はテレポーテーションで逃げるが、もちろんそれを吉崎も追う。


地球規模の「鬼ごっこ」が始まった。


小学4年生の生命体を、愛おしく愛でる憂歌。


「レイン・・・。娘を救うために、魂をジェイジェイに捧げるなんて・・・」


突如、純の胸にシードが輝いた。


憂歌とレインの関係性に嫉妬した純は【闇落ち】したのだ。


漆黒の「狼ビスコム」へと変貌してしまう純。


吉崎の残した性剣エクスカリバーで、風の属性に覚醒した憂歌は、小学生レインを抱いて、東へ「風となって」逃げる。


「やめるんだ純ちゃん!! 一体どうすればいいんだ・・・!?」


月の裏側でほくそ笑む、ネクストタイプ3巨頭。


吉崎と緒島の鬼ごっこ。


ビスコム化した純から逃げる、憂歌と小学生レイン。


そして東京でも、最悪の事態が風雲急を告げようとしていた・・・。


ソープ嬢みゆきの正体は、島村美咲の双子の妹にして、心の守護者「島村美幸」だった。


すでに藤村省吾や島村美咲は彼女に洗脳されていた。


ナノBURSTスーツを装着する、藤村省吾と島村美咲。


ふたりはオレンジとグリーンのBURST戦士となった。


美幸に洗脳された海津丈と名護龍樹は、地の属性と水の属性を発現させ、BURST特殊部隊を一蹴。


省吾&美咲vs丈&龍樹のバトルは、東京郊外を席巻する。


美幸は双子の姉である美咲に長年コンプレックスを抱いていた。


そして今、姉美咲が所属するチームBURSTを崩壊させようとしているのである。


そこへ、真紅のナノBURSTスーツを身にまとった藤村岬が現れた。


彼女はBURST本部に残された、最後のナノBURSTスーツを手に入れたのである。


月の裏側から、東京までの距離を「無」にすることによって、キャサリン・オゼも東京に現れた。


「心の守護者よ! 私怨のために能力を使うな! N.A.B.R.Sの目的は金儲けだよ!」


「うるさい! 3巨頭に私の気持ちが分かってたまるか!」


美幸、キャサリン、岬の三つ巴の戦いが始まった。


「ネクストタイプ・・・。私の大事な仲間たちをおもちゃにするなんて許さないよ!!」


美幸はキャサリンの心の中に入り込んだ。


キャサリンは自分自身の身体の「時」を止めた。


心の守護者と時の守護者は「相打ち」となった。


元に戻る、丈と龍樹と省吾と美咲。


そこに、岬も合流した。


岬と省吾の和解、龍樹と美咲の和解はあったが、丈はひとり涙を流していた。


「わしのみゆきが、わしのみゆきが、こないなことになるやなんて・・・」


キャサリンの危機に、ジーンとブルースが、月の裏側から「やってきた」。


「ふたりのネクストタイプが同化し石化したか・・・。こうなっては仕方がない。ブルース! 始末しろ!」


ブルースは石化した、美幸を体内に取り込んだキャサリンを「破壊」した。


怒りに燃える岬、丈、龍樹、省吾、美咲。


「私はプロジェクトナーバスによって、全人類を人質に取っているんだぞ! 私を殺せば、すなわちそれは全人類の死! とりあえずブルース、こいつらを片付けろ」


ジーンはジーザスエンドのキールームに戻り、ブルースはチームBURST5人衆を相手に闘いを始めた。


狼ビスコムとなった純から逃げる、憂歌とレインは、富士の樹海の吉崎の豪邸にたどり着いていた。


ふたりを追う狼ビスコム、純。


「私は、レイプと自殺によって、魂をふたつ失っている・・・。そのひとつの魂をこの娘に与えます・・・」


ジェイジェイから離脱したレインは、狼ビスコムとなった純と同化、純のシードを破壊した。


「失うことによって得られたふたつの魂を使い切るなんて・・・。レイン、お前は大丈夫なのか!?」


レインは純の魂となって生きる道を選んだ。


「憂歌・・・。今こそ、ジーザスエンド覚醒の時なのかも知れない・・・」


憂歌と純は、吉崎の豪邸のベッドルームに消えた。


ジェイジェイはひそかな寝息を立てている。


ついに憂歌は、レインと純の同化した「女性」とのセックスの時を迎えた。


それによって、月の裏側に眠るジーザスエンドが本格的に発動した。


南極で戦う、吉崎と緒島は、大地の震撼を感じていた。


東京で戦う、ブルースとチームBURSTも。


ジーザスエンドのキールームにいるジーンも。


月の裏側に眠る超巨大兵器、ジーザスエンドは、その波動によって、宇宙の彼方との間に時空の歪みを発生させ、フルオッグの波動を遮断した。


ネクストタイプは、フルオッグの波動をエネルギー源としている。


ジーザスエンドのキールームで、ジーンは肉塊と化した。


東京では、圧倒的な力でチームBURSTを追い込むブルースが爆発した。


南極では、吉崎が緒島の胸を貫き、「ネクストシード」を奪い取った。


「な、何故、俺を助けた・・・」


「ネクストタイプ全員に死なれては困る。貴様は一度とはいえ、俺たちオールドタイプを助けたからな・・・」


樹海の吉崎の豪邸では、憂歌がレインとの「永遠の別れ」の中にいた。


「逝ってしまうのか、レイン・・・」


「純ちゃんと幸せにね、憂歌・・・。ジェイジェイをよろしく・・・。最後にあなたと結ばれてよかった・・・」


「レイーーーーーン!!!」


憂歌の目の前で、レインは時空の彼方へと還って逝った・・・。


アラブ首長国連邦、ドバイにそびえ立つ「N.A.B.R.S」ビルディング。


その最上階に、アレックス・ハートロッカーはいた。


そこへテレポーテーションしてきたのは、手負いの緒島剛と「ブルーのナノBURSTスーツ」の男。


緒島からブルーのナノBURSTスーツを受け継いだ、辻山憂歌だった。


「博士・・・。あなたこそ全ての黒幕。あなたの身柄を拘束します」


「できるものならやってみたまえ・・・」


アレックスの胸の「フルオッグシード」が輝き、アレックスは「魔獣」と化した。


同時にN.A.B.R.Sビルは巨大なロケットへと変形して、ドバイから飛び立った。


「このロケットには核が搭載されている。これでジーザスエンドを撃破する!」


「辻山! どうしてもひとりでやるっていうのか!?」


「緒島さんはみんなをジーザスエンドに運んで下さい! アレックスだけは、この俺が殺ります!!」


瞬間移動で消える緒島。


ジーザスエンドへ向かう核ミサイルロケットの中で、ブルーのナノBURSTスーツに身を包んだ憂歌と、フルオッグ最後の使徒「魔獣アレックス」との最終決戦が始まった・・・。


緒島の力によって、ジーザスエンドのキールームには、赤いナノBURSTスーツの岬、オレンジのナノBURSTスーツの丈、グリーンのナノBURSTスーツの龍樹、そして、吉崎、純、藤村省吾、島村美咲、ジェイジェイが集結していた。


「この性剣エクスカリバーに全パトスを集結させろ!!」


吉崎の呼びかけにより、岬、丈、龍樹、純たちのパトスが集結し「超聖剣ジーザスソード」が完成しようとしていた。


「どうやら残留パトスを使い果たしてしまったようだ・・・。少し眠らせてくれ」


緒島はひとりキールームを出た。


それをひとりジェイジェイが追った。


キールームの外で、緒島は朽ち果て、二度と目を開くことはなかった。


ジェイジェイだけが、緒島の最期を見届けた。


核ミサイルロケットの中では、憂歌は魔獣アレックスに苦戦を強いられていた。


「このまま・・・、このまま負けてたまるか・・・。みんなが待ってるんだ!!」


月の表面から、超巨大ロボット【ジーザスエンド】は浮上した。

 

そのキールームでは、レインの魂を受け継いだふたり、森山純とジェイジェイが、魂をひとつにしようとしていた。


その「レインの魂」は、ジーザスエンドから地球へ波動として放出され、全てのビスコムやハーフビスコムを鎮静化、全てのバーガリーを起動不能とする。


ジーザスエンドから出動した、ナノBURSTスーツ戦士、岬と丈と龍樹は、核ミサイルロケットに突入、魔獣アレックスを鎮圧しようとする。


敗北寸前のナノBURST スーツの憂歌に、吉崎から与えられたのは「超聖剣ジーザスソード」だった。


憂歌の放つ、超聖剣ジーザスソードは、魔獣アレックスのフルオッグシードを撃ち砕いた。


核ミサイルロケットから離脱する4戦士。


核ミサイルロケットは、ダークナイト吉崎によって、時空の彼方へ導かれた。


月の表面に立つジーザスエンドのキールームで、森山純、ジェイジェイ、藤村省吾、島村美咲はハイタッチをした。

 

辻山憂歌、藤村岬、海津丈、名護龍樹、吉崎巧の5戦士は、月の地平線から昇る地球を見つめていた。


【プラトニックレイン セカンドシーズン 完】

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