第26話 3回目の邂逅

「んな、バカな!」


ドンキホーテは思わず声をあげる。グレン卿といえば、高名な騎士にしてソール国を支えてきた、大貴族の1人だ。まるで「太陽は西から上るんですよ」などという与太話を聞かされた気分に、ドンキホーテはなった。ありえない、実にありえないことなのだ。


「誰がそんなこと言ってるんだ?不敬で不快だぜ。」


「貴様もそう思うだろう。だが誰が流したかは分からん。」


しかし同時に納得もできた。グレン卿ほどの財力があれば、エイダを襲った刺客を用意するのは造作もないはずである。


「レーデンス悪いが一旦考えさせてくれ、後、俺たちは近くの街や村で降ろしてくれて大丈夫だ、また攻撃を受けたら今度こそ、ひとたまりもない。」


「何を言う、ここまでくれば、大した違いはない。確かその子の安全を確保するために黒い羊の本部に行くのだろう?ならば本来観光用の飛空挺が行くはずだった。パールの街まで送って行ってやる。」


「しかし…レーデンス!」


「ドンキホーテ、1人で解決しようとするな。確かに今回の件、相手が予想を上回る行動をしでかした。だがだからこそ、貴様は我々を巻き込むべきだ。心配するな。エイダも守るべき、民の1人に違いない。故にお前1人だけで守る必要はない。存分に頼れ。乗客の安全は私が守る。」


ドンキホーテは笑う。


「ありがとな。」


ただそう言った。ドンキホーテは少し張り詰めていた自分の心に余裕を持たせることができたのだ。

するとアレン先生がわざとらしく咳き込む。


「わしもいるんじゃがの?わしにも頼れよドンキホーテ。」


「そうだぞドンキホーテ、アレン様のご助力が得られる騎士など、幸せ者なのだからな。」


ドンキホーテは自分の頬を叩くと、再び決意を新たにした。


「そうだな、アレン先生もいるしな。少し気が楽になったぜ。レーデンス、存分に頼らせてもらうぜ。この借りはいつか。」


「バカを言うな、私が個人的にお前に恩返しをしているだけだ。」


ドンキホーテは悩む、恩返しされるようなことをしただろうか。


「なんのことだ?」


ドンキホーテはまるで見当がつかない、なので率直に聞くことにした。するとレーデンスは笑う。高らかにドンキホーテは笑われても思い出せない。笑い終わるとレーデンスはこう言った。


「そういうところがお前の好きなとこなのだ。」


と。



ここはどこだろう。そうだ思い出した。あのコウサテンというところだ。エイダは自分がどこにいるか自覚する。ここはあの夢の世界。地球だ。このコウサテンには誰もいない。あの少年とエイダを除いて。

どこからともなく少年が姿をあらわす。


「これで3回目だね。お姉ちゃん」


そこでエイダの意識は現実へと叩き出された。



柔らかいものにエイダは包まれている。それがベットだと気づくまでエイダはかなり時間がかかった。

すると誰かの、知らない女性の声が隣でした。


「先生、患者さんが目をさましました!」


どうやらどこかに連れてきてもらっているようだ。エイダは瞬時にそう理解する。どうやら服も冒険用の服から違うものに変わっているようだ。単純な構造のいかにも着易く、病人が着るような。そんな服だ。

そしてドタドタと声の主はどうやら誰かを連れてくる。


「ありがとう、リーカさん。」


連れてこられた誰かも、どうやら女性のようだ。連れてこられた。恐らく先生と呼ばれたその女性は優しくエイダに話しかける。


「こんにちはエイダさん、私はエリー・ローハム、パールの街で医者をやっています。私の声が聞こえるかしら。」


「はい……」


エイダは答えるが咳き込んでしまう。口の中に何か残っている。鉄の味がするものだ。


「あらまだ血が残っているのかしら。」


血、それを聞いてエイダは思い出す。そうだ、と


「私!刺されて!」


思わず飛び起きてしまった。それを見て、エリーはエイダをたしなめた。


「突然起き上がっちゃダメよ。さっきまであなた気を失っていたんだから。もっとも不死なのだから大丈夫でしょうけど。」


不死、聞きなれない単語だ、エイダはそう思った。誰に対して行っているのだろうか。エイダには見当がつかない。


「待っててくださいね。今あなたのお仲間をお呼びしますから。」


数分後ガタンと扉が開き、見知った人と猫がエイダのある病室へと入ってくる。


「エイダ!大丈夫か?!」


ドンキホーテがいう。


「うるさい!病室では静かにせい!」


アレン先生は突っ込んだ。


「あなたもよアレン先生。」


そしてエリーはため息をつきながらアレン先生をたしなめる。

申し訳ない、そう2人のの声が輪唱のように病室に響き渡った。

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