第37話 給食当番

ウチの中学は普通に給食がある。なので、給食当番なんてものも当然あるのだが……クラスメイトの男子が残った牛乳のためにジャンケンで争ってる中、早々に食べ終えて離脱しようとする俺はかなり異質だろう。


「今泉くんはあれに参加しないの?」


大半の男子が参加してるのに俺だけ全くのスルーなのを聞いてくるクラスメイトの糸川さん。その糸川さんに俺は肩を竦めて言った。


「残念ながら興味なくてね。それに今週は彼女が給食当番だから手伝わないと」

「本当に変わってるねぇ」


頷く他のクラスメイトの女子達。まあ、別にそれだけが理由じゃないけどね。時間的には少し早めだけど、自分のクラスを抜け出して、琥珀のクラスに向かうと、こっちでも男子が残った給食目当てに争う、似たような光景が繰り広げられていた。


やはりこの年頃の男子は食欲旺盛なようだ。


そんな中で、我が愛しの女神様琥珀たんは、ゆっくり可愛らしくお昼を食べていた。小動物のようで可愛いものだ。琥珀は俺の姿を見つけると嬉しそうにしてから、なんとか必死に飲み込もうとしていた。


……やべぇ、何この可愛い生き物。


俺は琥珀に近づくとポンポンと頭を撫でて言った。


「ゆっくりでいいよ。食べ終わるまで待ってるから」

「……うん、ありがとう、あっくん」


とはいえ、少なめの量でもやっぱり琥珀には多いみたいだ。元々食べるのゆっくりだし少食だから仕方ないけど……そこがまた可愛いのだから困りものだ。え?だって、こういう琥珀も可愛いでしょ?もちろん異論は認めないけどね。


皆が食器を戻す中で、ゆっくりな彼女を眺めながらのんびり待つ。と、1人の男子が早く片付けたいのか琥珀を急かそうとする気配を感じたので俺はその男子に先んじて言った。


「琥珀は食べ残しはないから、食器は俺が片付けるよ。だから、他のを先に戻してくれるかな?」


その男子はその言葉に驚いてから、とりあえず早く昼休みになるならいいと思ったようで頷いて他のを戻しに行った。全く、男子はデリカシーがなくていかんね。同じ男として優しさの欠如はいかんですよ。まあ、そういう俺もまだまだだけどね。


「あっくん、ごめんね……」

「琥珀は何も悪くないよ。あと……」


俺は急いで食べた時に頬っぺに付いたご飯粒を取るとそのまま食べてから微笑んで言った。


「こういう、役得があるから、俺はむしろ嬉しいかな」


その言葉に顔を赤くする琥珀と、盛り上がる琥珀のクラスメイトの女子達。その後は一番重い食器の籠を俺が持って戻しに行く。琥珀は申し訳なさそうになってたけど、この重さを女子に任せるのはただの鬼畜でしかないからね。


それに……無理して琥珀が怪我したら俺は急かした男子を最低でも半殺しにしたくなるからね。


だけど、もちろんこの琥珀の申し訳ないという気持ちを和らげるケアも忘れないでおく。まあ、イケメン的な行動には遠く及ばいが、琥珀だけの完璧な彼氏or夫に近づきたいのだ。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る