第9話:粛清叛乱・ライラ枢機卿視点

 聖女教皇代理猊下が、いえ、新たに全員一致で選出された聖女教皇猊下が、ご自身で天罰を下され、穢れた背神者を殺されたことは、瞬く間に大陸中に広まった。

 背神者が天罰を下された時の議題が、ウェールズ王国からの無礼な命令であったという、根本的な理由と共に。

 もう生き残った枢機卿で聖女教皇猊下に逆らう者は誰一人おらず、教会内にはまだ逆らう者がいたのだが、一人残らず背神者として教会から追放された。


 教会内の粛清を行うと同時に、ウェールズ王国内の全神官と修道女に、ウェールズ王国は背神国で滅亡するから出国しろと命令が下された。

 逆らう者は背神者として破門追放するという通告と共にだ。

 大半の者は聖女教皇猊下の命に従いウェールズ王国を捨てたが、中には残る者もいた、数は少なかった。


 当初ウェールズ王国は強気だった。

 それなりの経済力と軍事力があり、教会だけなら戦争にはならなと思っていたのだろうし、信仰に関しても聖女教皇猊下に追放された神官や修道女を誘い、真教会を設立して国民の動揺を抑えようとしていた。

 教会に詫びて王太子や王太子妃を処罰すれば、王家の威信が地に落ちるので、その方がいいと考えたのだろう。


 だが、それは愚か過ぎる考えだ。

 聖女教皇猊下は神の代理人として、天罰が下せる御方なのだ。

 まあ、流石に一国の天候まで天罰で悪化させられるとは考えもしていなかったが。

 王族を皆殺しにされる程度だと思っていた私は、まだまだ聖女教皇猊下の力を、いや、神の力を甘く見過ぎていた。


 同じように神の力を甘く見過ぎていたウェールズ王国は、いっこうに春が訪れず、本来なら夏の季節であろう頃にも、冷たい風が吹き雪が融けずに残っていた。

 そうなっては国が何を言っても信じる者などいない。

 王家王国が神を敬わずに蔑ろにしたから、天罰が下されたのだと民は怒り狂った。


 最初に民に襲われたのは、邪教を教えようとした背神者達だった。

 背神者達の惨たらしい殺され方は、とても記録に残せるものではない。

 いや、後に続く者が道を誤らないように、教訓として残さなければいけない。

 簡単な話だ、記録に残るすべての拷問が背神者には加えられた。

 殺された後も背神者に相応しい罰が与えられ、遺体は特殊な性癖の者に穢された。

 最後は最も飢えていた貧民の飢えが満たされたという事だ。


 事ここに至っては、貴族達も決断を迫られる。

 王家に忠誠を尽くして民と戦うか、民の先頭に立って王家と戦うか。

 大半の貴族は王家と戦う事を選んだ。

 あのような愚者が王位を継ぎ、強欲傲慢な者が王妃になるのがわかっているのだから、それも当然だろう。

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