第2章 花倉
駿府内の荒れ寺の出来事より、およそ一月後。
「……堀越が加わったか。で、井伊は?」
「はっ、井伊谷へも使者を遣わしております。吉報はじきに」
「よかろう。で、
「それは……」
「………」
今川の主は俺だ。
その憤怒が、
今川の跡目とは関係ないとばかりに。
そのうち、やはり側室の子である弟がいることが分かった。
その弟も寺に入れられた。不憫に思った
しかし弟は、俊秀であることを買われ、駿河きっての禅師である
「どいつもこいつも……」
「何かおっしゃいましたかな、
何が
無下にはできない。
少なくとも、表面上は。
「いや、承芳の奴は、駿河を出て、何処へ去ったのかと思うてな」
「左様ですか」
「何じゃ、その目は」
「……いえ、他意はございませぬ。
「そう思うのなら、
「お甘い」
さすがに大国駿河の重臣だけあっての迫力で、
「よいですか、
「……しかし、
「…………」
「分かりませぬか」
分かろうはずがない。
「分からぬようなら申し上げる。北条でござるよ。北条がかつて、今川のお家騒動を鎮めたこと、まさかそこまで知らぬとは……」
「知っておる!」
――伊豆・相模・武蔵の三国にわたる領国を持つ大名、北条家。その成り立ちは、始祖・
ちなみにそのお家騒動とは、
現当主・
「知っておられるのなら、それでよろしゅうございます。なればこそ、この
敬語が外れかかっているぞ、と
「これは遠江を後ろ盾に北条の口出しを阻止するという筋書き。結局、
「ふん」
結局のところ、北条の口出しを阻止したいのは越前守ではないか。
「ご注進! ご注進!」
「何事か! 御前であるぞ!」
誰の御前だ、お前かと皮肉を言おうとした
「せ、
「何!」
「
「し、信じられん……
「だが奴らは駿府に現れた。こはいかなることぞ?」
「……ぐっ」
今川家の重臣であり、軍事・外交を司ってきた福島
「馬引けい!」
「
「知れたこと、駿府じゃ! かくなる上は是非もなし。
「そうじゃ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます