第323話 待っていた彼女
結局、外川に勝手にいなくなられてしまったので、俺は一人で虚しく帰ることにした。
校舎を出て、そのまま校門へ向かう。
ふと、外川の言っていたことを思い出す。俺は……真奈美のことが怖いのだろうか? 真奈美が自分を裏切るのを恐れているのだろうか?
「湊君」
と、声が聞こえてきた。俺は顔を上げる。
「……真奈美」
校門の直ぐ側に、真奈美が立っていた。
「……お前、なんで……」
「待ってたんだ。先に帰ってくれなんて、おかしいと思ったし」
真奈美は小さく微笑むを浮かべながら俺のことを見ている。俺はなんだか申し訳ない気分になってしまった。
「さっき、外川さんが通ったよ」
そう言われて俺は思わずハッとしてしまう。
「……そうか。何か……話しかけられたのか?」
「ううん。なんか、ニヤニヤしながら見られたけど、特には」
アイツ……本当に何をしたいのかわからないな。俺は益々混乱してしまうのだった。
俺はしばらく黙ったあとで、真奈美の方を見る。
「……聞かないのか? 今まで何してたのか」
俺がそう言うと、真奈美は目を丸くする。その後で苦笑いする。
「別に。気にしないよ」
「……それは、俺に興味がないってことか?」
思わず言ってしまってから、俺はしまった、と思う。外川の言うことに流されてこんなことを真奈美に聞いてしまった。
真奈美は今度は苦笑いも浮かべなかった。ただ、真剣に俺のことを見ている。
「そんなことないよ」
真奈美はそれだけ短くそう言った。俺はそれ以上は何も言えなかった。
「じゃあ、帰ろうよ。もう、一緒に帰れるんでしょう?」
真奈美にそう言われて俺は我に返る。
「……一緒に、帰っていいのか?」
俺がそう言うと真奈美はまた目を丸くする。と、今度はフフッと笑った。
「当たり前でしょ。どうしたの? 湊君、変なこと言うね」
「……あ、あはは……。そうだな、変だよな……」
その笑顔を見ていると、あの写真……中原と会っていた時の笑顔を思い出してしまう。
駄目だ……余計なことばかり思い浮かんでしまう。
「ほら。帰ろう」
真奈美にそう言われて俺は歩き出す。なるべく余計なことを考えないようにしながら。
そして、そんなことを考えている自分にもなんだか嫌悪感があるのであった。
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