第247話 ぶつかり合い
「う~ん……あっという間だったね~」
そして、学園祭は……終わってしまった。
夕暮れのオレンジ色が差し込む教室には実行係の俺と前野、そして、横山……さらに、なぜか端井が自分からボランティアで掃除を片付けを手伝うと言って残っていた。
「真奈美は、後田君と回れたんだよね?」
俺のことをちらりと見たあとで、横山は前野に訊ねる。
「うん。楽しかったよね?」
嬉しそうにそう言う前野。
こんなに楽しそうな顔の前野は初めて見る。
前野は……本当に楽しかったのだ。俺と……俺なんかと学園祭を回った時間が。
「そっかー。いやぁ~、ウチも受付を交代した甲斐があったよ」
横山も笑顔でそう言う。しかし、チラチラと先ほどから俺のことを見ている。
明らかに俺に「告白」を促している。いや、俺としてもここは覚悟を決めないといけない時がやってきたのだ。
「……あ、あのさ、前野、実は話が――」
「前野さん」
と、俺がそう言おうとした矢先、無言で片付けをしていた端井が急に前野に話しかける。
「何? 端井さん」
前野は穏やかな表情で端井に訊ねる。横山も少し面食らっているようだった。
端井はしばらく黙っていたが、鋭い顔つきになって前野を見る。
「はっきり、させたらどうですか?」
「……はっきり?」
端井と前野は真正面から向かい合ったまま対峙している。俺も横山も何も言えなかった。
「……あくまで、自分から動かずに待っているつもりですか?」
「ふふっ。端井さん、言いたいこと、よくわからないよ?」
笑顔でそう返す前野に対して、端井は少し怒ったような表情だった。
何が起っているかはわからなかったが、とにかく、何かがぶつかりあっていることだけはわかった。
「……じゃあ、私ははっきり言います」
「うん。何を?」
端井はそう言ってからまた少し間を置く。それから、一度だけ俺のことをちらりと見た。
「……後田さんを、取らないで下さい」
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