第218話 ボランティア
「……それ、大丈夫だったんですか?」
帰り道、端井にこれまでの話をした俺は、不安そうな表情で俺にそう聞かれた。
「……いや、別に大丈夫だ。そもそも、殴られたわけじゃないし」
「それは、そうなんでしょうけど……」
……そう。殴られなかったことが問題ではない。
むしろ、その後、横山が中原を引っ叩いたことの方が問題だ。あの二人はどうなってしまうのだろう。
そもそも……横山は明日からも実行係の集まりに来てくれるのだろうか?
確かにクラスの出し物は決まったが、それを実現するために何をすれば良いのか、何が必要なのか……正直、俺にはまるでわかっていなかった。
「あの……後田さん。相談なんですけど……私にも手伝わせてくれませんか?」
「……は? 手伝うって、何を?」
いきなりそう言ってきた端井に、俺は思わず驚いてしまう。
「そりゃあ……実行係のお仕事ですよ」
「……いや、でも、お前は別に任せされていないし……」
「ぼ、ボランティアですよ! 今の話聞いていると、横山さんが明日から来るかどうかも怪しいし……それとも、前野さんと二人で大丈夫だってことですか?」
端井は責めるような目つきで俺のことを見る。前野と二人だけ……あの前野がこういう出し物について必要なことを把握しているとはちょっと考えられない。
「……じゃあ、頼んでも良いのか?」
俺がそう言うと端井は嬉しそうな顔で大きく頷く。
「えぇ! もちろんです! 大船に乗ったつもりで、私に頼って下さい!」
なぜか異様にやる気な端井を見ていると、横山と中原の一件で少し気が滅入っていた俺も、少し元気が出たのだった。
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