第163話 缶詰
「嘘でしょ……携帯つながらないんだけど……」
翌日。俺と前野が予感した通りに、家の外は完全な暴風状態であった。
横山は何度も下村さんに携帯で電話しようとしているようだったが……そもそもつながらないようだった。
「ありえないでしょ……もぉ~……!」
何度目かの通話を試みたあとに、苛立たしげに横山はそう言った。どうやら、やはりつながらないようだった。
「……大人しく家の中にいるしかないな」
「ありえないって……せっかく、無人島に来ているのに!? 海にも行けないし……あ! そ、そうだ! 食事! どうしよう……」
横山はコロコロと表情が変わる。忙しいやつである。
「あ、それなら大丈夫そう」
と、すかさず前野がそう言ってくる。
「地下収納にインスタント食品とか、カップ面とか缶詰とか置いてあったから。こういう状況も想定されてたみたいね」
そう言われて横山は少し落ち着きを取り戻したようだったが、それでもやはり我慢ならないようだった。
「落ち着いてよ、愛留ちゃん。私も、こういうときのために面白い遊び、考えてきてるから」
「え? 面白い遊び?」
そう言うと、前野は意味深な笑みを浮かべて俺のことを見る。
……どうやら、その遊びで使われるのは、俺自身のようであった。
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