第157話 似た者同士

「真奈美様のこと……ですか?」


 端井は少し不安そうな表情で俺のことを見る。


「……あぁ。俺は……よく考えれば前野のこと、よく知らないからな」


 俺がそう言うと、端井はなぜかフッと嗤った。


「知らない? ……知らない人があんなに仲良くできないでしょう?」


「……仲良く、か。俺と前野って……仲良さそうに見えるか?」


 俺がそう言うと端井は目を丸くする。それから、呆れたように肩を落とす。


「見えない、って言ったら、否定するんですか?」


「……いや、まぁ……仲が悪いってわけではないと思うが」


「こう言いたくありませんけど……アナタと真奈美様は……似てますよ」


 端井は少し言いたくなさそうだったが、渋々といった感じでそう言った。


「……似てる? 俺と前野が?」


「えぇ。似た者同士、ってヤツですかね」


「……前野も、俺と同じように、クラスの端っこで一人でいたいって思うタイプ、ってことか?」


 俺がそう言うと、端井は首を横にふる。


「違います。クラスの端っこでいるけれど、誰かとつながりたいと思っているタイプです」


 そう言われて俺は何も言えなくなってしまった。反論はしたかったが……何か反論してもなんだか酷く滑稽なように感じてしまったのである。


「どうです? 真奈美様のこと、わかりました?」


「……あぁ。大体な」


 認めたくはなかったが……前野は俺と似ている存在だということを端井は証言してくれたのであった。

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