第156話 教えてほしいこと

「……で、落ち着いたか?」


 しばらく泣いていた端井だが、一通り泣き終えると静かになった。


「……はい。すいませんでした」


「……別に泣くことないだろ」


「だ、だって……!」


 またしても泣きそうな顔で端井は俺を見る。俺は首を横にふる。


「……わかった。今度俺が聞いてやるよ。前野に」


「え? 聞くって……や、やめてください! 私のことをどう思っているか聞こうとしているんですよね!?」


 慌てて俺のことを静止しようとする端井。


「……聞かなくて良いのか?」


「いいです! 真奈美様にどう思われているかなんて……知ってしまったら、私は……」


 思いつめたように端井は俯いてしまった。


 なんだか、思ったよりも、前野と端井はなんというか……深い仲のように感じる。


 そもそも、俺と前野よりも、端井の方が前野と付き合い長いんだよな……。


 そう思った俺はふと、端井のことを見る。


「……なぁ、端井」


「え? なんですか?」


「……この前のこと、綺麗さっぱり水に流すから教えてほしいことがある」


「教えてほしいこと……ですか?」


 端井は怪訝そうな顔をするが、俺は先を続ける。


「……前野のこと、教えてほしいんだ」


 俺はずっと気になっていたことを、おそらく俺よりは把握しているであろう相手にようやく聞くことにしたのだった。

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