第85話 驚愕

「えっと……ここが、ウチの家なんだよね」


 少し恥ずかしそうにしながら、横山は俺と前野にそう言う。


 俺は二回目だが……やはり、何度見ても大きな家である。初見の前野は明らかにその大きさに驚愕しているようだった。


「あ、あはは……とにかく、入ってよ」


 言われるままに俺と前野はそのまま豪邸の敷地内に入っていく。


 と、前来たときと同様に、居住スペースと思われる建物の方に向かっていく最中、人影が見えてきた。


「あ……もう、出てこなくていいって言ったのに……」


 苛立たしげにそう言う横山。近付くにつれて、それがスーツ姿の老人であることがわかった。


「ようこそ、おいでくださいました」


 恭しくお辞儀をする老人。


「ちょ、ちょっと……やめてよ。そういうのいいから」


「しかし、お嬢様……」


「い、いいから! どっか行ってて!」


 困惑する老人を半ば強引に強制退場させる横山。老人は寂しそうな表情で去っていった。


「あ、あはは……い、今の人は気にしないで。さぁ、こっち」


 そう言ってそのまま建物の方に進んでいく横山。


「え……今の人って、横山さんのお祖父さん?」


 前野が信じられないという顔でそう訊ねる。


「……たぶん、違うと思う」


 おそらく、前来た時にも思ったが、あれは、お祖父さんではなく、漫画やアニメでしか見られないような――


「二人とも! こっち!」


 横山の声で俺は我に返る。俺と前野も呼ばれるままに横山が呼びかける方向へ進んでいったのであった。

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