第84話 まさかの申し出

「あ、後田君!」


 端井との一件はあったわけだが、その後は、何事もなく登校することができた。


 そして、登校すると、すぐに話しかけてきたのは、横山だった。


「……どうした?」


「あ……えっと……前話してた、勉強を教えてもらう話なんだけど……」


「……あぁ。あれか」


「えっと……今日とか、どうかな?」


 ……まぁ、今日は特に用事もない。だとすれば、横山の勉強を見てやるのも問題ないだろう。


 だから、俺はそれに対して了承するつもりで返事しようとした……その時だった。


「ねぇ」


 と、そこに割って入ってきたのは……前野だった。


「あ、前野さん。どうしたの?」


「横山さん、後田君に勉強を教わるの?」


「え……う、うん。恥ずかしながら、あはは……」


「ふーん……それ、私も参加していい?」


 ……予想外の申し出だった。俺は驚いてしまい、言葉を失う。


「え……も、もちろん!」


 俺がどうこう返事をしようとする前に、横山は嬉しそうに返事した。前野もニッコリと微笑んでいる。


「じゃ、じゃあ! 今日教えてもらおうと思っていたんだけど……前野さんもウチに来る?」


「うん。それなら、行こうかな。よろしくね、後田君」


 ニッコリと微笑んでいる前野。それと同時に、チャイムが鳴り、授業が開始される。


「じゃあ、また後でね!」


 横山は席に戻っていく。俺はジッと前野のことを見る。


「……まさか、お前が参加するとは思わなかった」


「そう? 私も、後田君に勉強、教えてもらいたいから」


 涼し気な顔でそう言う前野。なんとなくだが、いずれにしても……どうにも、何事もなく勉強会が終わるとは思えないのであった。

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