第68話 不明
そして、放課後。
結局、その日も前野とは一言も喋ることはなかった。前野はいつものように席を立つと、そのまま教室を出ていくようだった。
「あの子とは、喋るんだ」
と、俺の隣を前野が過ぎ去る時、間違いなく前野がそう言ったのが聞こえてきた。
俺はそのまま前野の方を見る。と、前野は教室の外から俺のことを睨んでいた。
……怒っている。間違いなく、前野は怒っているのだ。
つい数日前の、前野と交わした何気ない会話……それ以来、ずっと前野は怒っている。
怒っている相手には、謝ればいい。だが、俺は何をどう、謝れば良いのか。それがまだわからないのだ。
俺はふと、横山の方を見る。すでにいつもの陽キャグループと話していた。
まぁ、横山が心配しているのは、このグループの面々に自分の家のことがバレるのが嫌なのだろう。
……まぁ、だからといって、俺もそれをバラすつもりもない。というか、横山は俺がそのことをバラすヤツだと思われていたのだろうか。
「……ちょっと傷つくな」
俺はそんなことを思いながら、教室から出ていく。
そして、いつものように校舎を出て、校門までやってきたときだった。
「……あ」
思わず俺は声を出してしまった。
「どうも。お待ちしていました」
「……別に待っていてくれなんて、言ってないんだが」
「えぇ。私が勝手に待っていただけです。アナタとお話したかったので」
そう言って、端井霧子は相変わらずの敵意むき出しの視線で俺にそう言ったのだった。
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